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神様(ほごしゃ)追加されました

 


 叔父貴は学校を卒業してから各地を渡り歩いてる。

 オレは常々叔父貴のように自由気ままに生きたいもんだと思ってる。


 実際は件の予言もあるし、強力な魔術師はその国の隠し兵器(核兵器みたいに他国への牽制や切り札)扱いだ。だから難しいんだろうが、夢は夢だ。

 いつか叶えてやるがな。



 …そう、思ってたのになぁ…




 こんなことを考えるとは思わない数時間前のオレは、叔父貴に連れられてやって来たハーロルト王国のとあるホテルの客室で目を覚ました。


 いや~。やっぱりいいね。旅行先特有のこの空気とだらけ具合。


 そう思い伸びをして隣のベッドを見やると、兄貴が縮こまって寝てた。


 …おいおい…


 ウチの兄貴は枕が代わると寝付けない性質のようでした。



 旅の疲れもあり本調子でなかった兄貴だが、それでも朝食を終え、叔父貴から神殿に行こうと言われるといくらか回復した。


 意外と単純だな。





 神殿を見て固まったオレ達を見下ろしながら叔父貴はニヤニヤした顔で聞いて来る。

「どうだ?」

「……何と言うか…荘厳ですね」


 兄貴がいい感じに上手く誤魔化したが、オレがはっきり言った。


「えっらい金かけてんなぁ」


 国内最大にして、最も敬意を払われる。

 そんな神殿は王宮よりも余程絢爛豪華だった。


 ぶっとい石柱も階段も全部薄桃色がかった大理石で、敷地のあちこちには四季折々や古の故事の趣向を凝らしたモニュメントや噴水がある。


 参拝客の目を楽しませる、というよりは何か尊いものに媚びを売っているようで嫌気が差す。


 …気に入らねぇな…


 オレが顔をしかめ鼻白んでいると、叔父貴はハッハッハと笑う。

「そう言うな。実はここに祀られてるナターリエというのが気紛れで移り気な姉さんでな」

「…そういうのどこにでもいんだな…」


 日本の神様は大抵困ったちゃんだった。

 基本人間は相手にしないけど、気に食わない人間には親戚縁者やご近所さんも巻き込んで制裁するし、気に入った人間には惜しみない恩恵を(もたら)す。

 そもそも、日本人は脅威となった悪霊を鎮める為に祀り上げるからな。


 その点ウチの神様は崇りもしない無理難題言ってきたりしない、と大人しいもんだった。

 その興味関心の全てはウチの一族に向けられてたせいなんだけど。


 「南無南無」と意味も無く胸中で呟きながら視界を転ずると、耳に騒ぎが聞こえてきた。


 まさか聖域となるここで無粋な襲撃もあるまいと思ったが、念の為構えは取る。叔父貴も臨戦体勢を取りながらオレ達を守る為に庇う体勢を取る。


 そうして待ち構えていると、神殿の奥から女が飛び出してきた。


 その女はどう考えても人間の女じゃなかった。

 宙を滑るように飛んで来たし。


 格好はインドの踊り子が着てそうな、薄い生地で出来た薄桃色のレースの衣装で、あちこちに金の装飾品を飾り付けている。

 髪は長い黒髪で、肌はやや日焼けしたような血色のいい色だった。

 ぱっちりとした瞳は潤い、光の映り込んだ煌く夜空のような黒だった。


 間違いありません。この人神様です。


 …前世は結構見える性質だったけど、他の神様は見えなかったんだよね。


 ウチの神様のおかげで。


 何でも「儂以外見ちゃ嫌じゃ」とか。キャラブレてんぞオイ。



 女神様はオレの頭を撫でるとわずかに不服そうに唇を尖らせた。


「あら。もう加護持ち?でも、この世界(こっち)なら私の方が力が上よ」


 でしょうね。次元を渡ってるし、土地も離れてるし。何より、他の国となると色々勝手が違う。


 ここでやっと、いくらか冷静になったんで、額に手をやって考える。


 いや。考えるまでも無く不可解な状況(エマージェンシー)だ。


 ……うん。神様に相談だ


 そうと決めたオレは兄貴を振り返る。


「兄貴。オレの身体頼む」


 あ。つい心の中の呼び方が出た。いつもオレから〝にーちゃ〟と舌っ足らずな呼び方されてる兄貴は目を大きく見張る。

 だが理解力は保ったままらしく、己の中の予感を告げる。

「…え…まさか…」


 うん。正解


 オレは意識を手離した。

 後の事はとりあえず放っとく。




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