08
"引っ越し"
それは生きている中で経験する回数は人によって様々。人生で何度も引っ越しをする人もいれば、一度もせずに生まれ育った家で生涯を終える人もいる。まぁ、私は前者なのだが…
もう何度目になるかわからない引っ越し。ある時は人の多い町中、またある時は自然豊かな森の中。これまでにたくさんの場所で生活してきたがまさかこんなことになるとは。
「城…いや、学園って初めてだね」
目の前に広がるは、ごく普通の部屋。ごく普通の…
「待って、ちょっと待って、この部屋明らかに狭すぎるでしょうが」
8人が一緒に暮らすには狭い普通の部屋だった。
◇
はいはーい!!
どうも、皆の人気者キフェルっす!
え?自分で言うなって?いいじゃないっすか~小さいことは気にしない事が一番っすよ!!
さてさて俺たちは今回で184回目の引っ越しっす!今までは森の中やら町やらその他もろもろ…色んな所を回ってきたっすけど学園は初めてっすねぇ…
でもまぁ、今回はいつもと変わらない引っ越し先での風景を俺が紹介したいと思うっす!!
まず扉を開け…お、なんか皆入り口で止まらないでほしいっす。もう、邪魔じゃないっすか。これじゃあ新しい部屋が見えないっすよ!!ティアさんが進まないと俺が部屋に入れないっす!何やってるんすか~…
「な、なんか部屋がち、小さいみたい…だよ?」
むむ、その話しは本当っすかアティモ!どれどれ俺も見てみるっすか。ちょいと失礼するっ…あ、痛い!ちょっとアマイさんどつかないでほしいっす!地味に痛いっすから!え、スカート踏んでるっすか?…あ、申し訳ないっす。
そんな事をしてる間にもルフェさんが部屋の中を見せてくれたっす。…うわぁ、え、なんすかこれ。え、せまっ…せ狭すぎるっすよ。だって8人が住むんすよ??家の一軒くれてもいいくらいなのに、こんな狭い部屋っすか?!これ、4人部屋じゃないんすかぁ…
ん?なんかティアさんがルフェさんとアマイさんに言ってるっす…。何を言ってるんすかね?お、おお??なんか2人が左右の壁側に立ったっす。え、なんすか。壁に話しかけてるんすか?そんなに御二人の心にはダメージが?!
こんな時こそ俺のでばn「「せーの」」
ドゴォオオォオオオォォオオ!!!!!!!!
んじゃないっすね、はい。
御二人の十八番、力業じゃないっすか。なにやっちゃってるんすかこれ。ティアさん笑ってる場合じゃないっすよ!!ルゼさん!これどうするんすか?!こんなこと知られたらクラウドさんに何言われるか分かったもんじゃないっすよ?!
「まぁ、隣は誰も暮らしていない様子ですし大丈夫だと思いますよ。」
なんで、そんなことわかったんすか…もし居たらこれ即死レベルっすよ。あ、わかってたんすか。なら問題ないっすね
「まぁ、クラウドさんだって私たちを他の人間達の近くで住まわせるような事はしないと思うわよ?」
やっぱそんなもんなんすかねー。まぁでも俺たちだけのほうが気楽だからいいっすけどね!!
「はい、じゃあ皆注目~。これから模様替えと荷物の片付けを分担するよー」
「じゃあ、私とルフェとアティモとティアは模様替え担当ね。ルゼとアマイとサティとキフェルは荷物の片付けよろしくね」
あ、俺は荷物の片付けっすか…。まぁ楽だからいいっすかぁ~。あ!でもルフェさん模様替え班にいっちゃったんすかぁあー…。俺たちの中で一番の怪力っすから荷物持ってもらおうと思ってたんすけど…アマイさんはきっと持ってくれないっすね。逆に持たされ…あ、はい。これっすか?え、あ、あっちっすか?分かったっす。
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よ、ようやく終わりが見えてきたっす…。おお、なんか部屋がきれいっす!!最初の殺風景だった部屋は何処へいったんすか?!いつものモダンな部屋になったっすねぇ。あれ?ルフェさん?その瓦礫ってさっきぶち壊したやつっすか??
「んー?違う違ウ。ほらあそこ見てみナヨ」
ん?どこっ…なんか部屋広くなってるっすね。あー、寝室っすか。確かにそれは必要っすよねぇ、あ、二つも。二つもいったんすか。男女別の寝室って必要っすから仕方ないっね。あ、ちょっと俺呼ばれたんで行ってくるっす。ルフェさんそこの窓から瓦礫投げるなんてやっちゃだめっすからね。だめっすよ絶対。そんな顔してもだめっすからね!
「おい、キフェル。妾の荷物が1つ足りんのじゃが…何処にあるか知っとるか??」
え~サティさんの荷物っすかぁ??俺知らないっすけど…まぁしいて言うならさっきルフェさんの持ってた瓦礫の中に見慣れた熊のぬいぐるみがあった気がするような…痛っ!!そんな暴力振らなくてもいいじゃないっすか!!し、死ね?!そんな簡単に言ったらいけないって何回言ったらわかるんすか!!あー…行っちゃったっす。まったくサティさんは子供だからだめなんす!
「んー…でもこの金額ならこっちのほうがいいんじゃないかしら」
お?なんか大人組が話し合ってるっすね…何の話っすかね?
「そうですね。それならレヴィアの言った通りにしておいたほうがいいですね」
「オレはこっちのほうがいいと思うケドネ…」
んー何の話なんすかねぇ…気になるっす。けど安易に近づけないオーラがでてるっす!!あれ?でも1人…アマイさんが足りないっすね。どこにいっ、あ、いたっす。アマイさんーなんで1人でここにいるんすかー??1人だけハブっすかー??
「うるさいさね。ハブじゃないよ。ただ、」
ただどうしたんすか?何か悪いことしたんすか??
「あの3人なんか金の話してるんだよ。数字なんて数字なんて怖いものを!なにさねあれ!0がたくさん!恐ろしい!!」
あぁ、アマイさん数字苦手だったっすね。だからここに1人でいたんすか。てかあの3人引っ越し早々になに話してるんすか…
「あ、そうだ。キフェルそこにある荷物片付けな。あたしはこっちやっとくさね。」
アマイさん…これたった1つじゃないっすか。それくらい自分でやってくださいっすよ。ん、んん?なんすかこの箱、めっちゃくちゃ頑丈にテープ貼ってあるっすけど、まぁ中身確認しないと始まらないっすよね。どれどれ、ん?これは…パン、ツ…っは!!
「ねぇ、キフェル。それ、なに??」
…なんすかねそれ?
「ねぇ、その手に持ってるものなに??」
……パンツっすね。
「誰の?」
いやぁ、もしかしてもしかすると、もしかしなくても…ティアさんっすね。
「だよねぇ?」
名前書いてあるっすもんねぇ。
………すいませんっす。
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◇
「で?…さっきっから気になってたんだけど、そのカメラ…なに?」
「あ、これっふかぁ??いやぁほれたひのにひほうほ、ひんはにほうはいひはふ…」
「あぁ…ごめん。殴りすぎた」
ほんとっすよ!!もうぷんぷんっすからね!!あと3分待ってくれれば元に戻るっすけど!!
「いやぁ痛かったっすー。ティアさんもう少し加減と言うものを知ったほうがいいっすよー」
「いやぁ、つい…」
ついでこんな顔をぼこぼこにされるこっちはたまったもんじゃないっすよ。
危うく顔面変型するところだったっす。
「それで、そのカメラなんなの??」
「あーこれっすか?これはカメラっす!!」
「なんだ、ばかにしてんのか」
「いやいや!そうじゃないっす!!拳下ろしてくださいっす!!まぁ、このカメラで俺たちの日常を撮って生徒の皆に見せようと思ってたんすけど…」
ちらっと真横を見ると原型をとどめていないカメラ…。うぅ…これ結構高かったんすよ??ティアさんこんなぐちゃぐちゃに…
「無理だね…」
「そうっすね。」
この映像を見てもらって親近感を持ってもらおうと思ってたんすけど、…はぁ、これじゃ無理っすか。
「…大丈夫だよたぶん。映像なんて見なくてもわかってくれる人は必ずいるよ。」
「ティアさん…」
「キフェル…、その……ありがと」
「!!!……っはいっす!」
照れながらもティアさんにお礼を言われるなんて珍しくて驚いたっすけど、なんかこっちまで照れくさくなったっす。
まぁそんなわけで映像は残らなかったっすけど、こう、心がほわほわしたからいいっす!!未知の世界である学園生活が楽しみになってきたっす!!