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大罪の姫  作者:
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07


ポチ・ハウステットに案内されて入った学園の大きな扉を開けると、最初に私たちを出迎えたのは天井から吊るされた大きな大きなシャンデリア。光の魔石が1つ1つ輝かしい光を放ち室内を照らす。

そのシャンデリアの下を通った奥には左右に分かれる階段と、真っ直ぐ進む階段がありその階段は登りきる手前で何処かに繋がる異空間への術式が施されていた。

シュベラッツェ魔術学園は全生徒が寮生活となるためこの階段の右側に繋がる異空間は学園の寮がある東棟へ繋がっている。逆に左側の階段を登ると武術場や、授業の時に使用する調合室など様々な部屋がある西棟へ繋がる。


「こっちだ」



ポチに案内され階段を真っ直ぐ進み異空間へ入ると目の前に広がるは大講堂。異空間は大講堂や教務室、礼拝堂などが存在する北棟に繋がっていた。


大講堂は4学年の全員が座ることのできる無数の椅子と大きな机が4つ、学年ごとに分かれている机たちの前には教員用の席が左右に雛壇のようになっており、その中央に一際立派な学園長の席があった。


「変わってないなあ…」


私の記憶の中にあるシュベラッツェ魔術学園と目の前に広がる学園は外見も中身も何一つ変わってない。



「あ、あれ?な、なんかこの机の、ここだけこ、焦げて、る…?」


後ろの方にいたアティモが机の一部分をキフェルと凝視して、私達の方を見てきた。

なんでお前は私を見る。まず最初にそう思ったが"机の焦げ"と聞いて

あぁ、そういえば。と思い当たる節があった。



「それはティアが1学年の時に着けたものですよ。ねぇ、ティア?」


「…っち」



コツ、コツと私たちがさっきでてきた異空間術式から1人の男が出てきた。以前私と最後に会ったときの声より低く、年を重ねたことがわかる。はっきり言って聞きたくなかった。…っけ


「やぁ、ティア。久しぶりだね皆元気にしてたかい?ああ、呼び出しちゃってごめんね。どうしても君達の力が必要になっちゃって」


「…いーよもう。どうせ謝る気ないんだから」



へらへらした顔が近づいてくる。あの顔は昔からムカついた、何を考えてるのは分からない。がいざとなった時はいつも頼ってしまった。それは私の人生の汚点といっても間違いじゃないから"頼ってた"なんて口が裂けても言わないけど!


「クラウド老けたね。なんか喋り方きもい、…おえ」


ピキッと音が聞こえた。

若干クラウドの笑顔がひきつっているが別に気にしない。寧ろ今のクラウドの喋り方が気持ち悪すぎて鳥肌を抑えるのに必死になる。


「おい!ティア・サーレット!!なんて失礼な事を言うんだ!!」


がうがうとポチが吠える。その姿は主人を馬鹿にされ怒る犬の姿そのもの。実際、人狼だから本当にそうとしか見えない。あのへらへらはいつのまにか忠犬を育てていたのか。きっとその忠犬は主人の本当の姿を見たことがないのだろう、可哀想だ。



「いいですよポチ。私は何も気にしてないですから。すいませんが少し席を外してて貰えますか?終わったらまた呼びますので」


「…分かりました。」



ポチは耳としっぽを垂れさせ、くぅんと鳴きそうな声を出しとぼとぼ異空間術式へ入っていった。きっと耳としっぽは無意識なんだろうな、ちょっと可愛いかったことに気づいてないし。



「…ったく、あぶねぇな。ティアお前俺の苦労を水の泡にする気か?」



ポチが異空間に入って数秒後、先程までの丁寧な喋り口調はどこにいったのか、がしがしと頭を掻くクラウドの口からは乱暴な言葉がでてきた。

だけど、驚きは全く感じない寧ろさっきまで出ていた鳥肌が治まったくらい。私にとってクラウドはこれが当たり前だから。


「なんか、もう、とりあえず気持ち悪かった。なにあれ笑いでもとりたかったの?全然面白くなかった。まだ、ミルクを鼻から垂らすキフェルの方が笑える」


「ちょ、えぇ?!ティアさん?!?!」


「おま、辛辣だな。…ったく、しょうがないだろ今の俺にはさっきの方が合ってるらしいし、信頼もされやすいからな」



あーつっても疲れた。さっきも、会議があってよー。と続けるクラウドは外見から見ると今の口調は初めて会う人にとってはまったくイメージしていなかったものと感じられる事が多い。昔から変わらない人の良さそうな顔、私にはいつもへらへらしてるとしか思わせない笑顔。この顔からクラウド本来の口調が出ると、初めてあった人は戸惑いを隠せない。


若かった時のクラウドはとてもモテた。―――しかし初対面の人限定で。


クラウドは見た目は優男だが一言言葉を発すると誰もがギャップ萌え―――ならぬ、ギャップ引きする。とにかくこの男、口が悪い。悪すぎる。口を開けばめんどくさいか、暴言。最低だ。

はっきり言って元はこんなクラウドだ。今もアマイの胸を掴み怒ったアマイに平手打ちを食らっている。馬鹿だろ。しかし何故、あんなクラウドがこんなめんどくさい学園長なんかになって終いにはかけ離れている敬語なんてものを使っているのか疑問だ。


「どうかしたのティア。気になることでもあるの?」


じっと、クラウドを見ながら考えてるとレヴィアが隣にきた。


「んーん、何でもない」


「そう。それならいいけど…」


「ティア何かあるならオレ達にちゃんと言いナヨ。人なんて信用できナイ…」



レヴィアとは反対側にひょっこりときたルフェはぷくーっと頬を膨らませクラウドを睨みつける。


「ルフェそれはクラウドさんに失礼よ」


「オレあいつ、好きじゃないモン。いっつもべたべたティアに触ってルシ」



おええぇぇ と舌をだしているルフェの表情から彼がクラウドを嫌っているのは明らかだ。


「まぁまぁ、クラウドはいつもあんな感じじゃん。」


「それにあなたが嫌いなのはクラウドさんだけじゃないでしょう。貴方この間も果物屋のおじさんに対しての同じこと言ってたわよ」


「あのおじさんもべたべたティアに触るジャン。けどあいつはもーっと気に食わないネ!!」


「…おじさん頭撫でてただけじゃん」



果物屋のおじさんはいい人なのに…。





「イテテテ、アマイのやつ狂暴すぎるだろー」


左頬を擦りながら近づいてくるクラウドの後方にはルゼとアティモ、キフェル、サティに押さえつられながら鼻息を荒くし怒り狂ってるアマイが暴言を吐き散らしていた。…アマイに何をしたんだ。


「クラウドって、人に嫌われる天才だよね」


「あはは!そんなこと言われんの久しぶりだなー。ほら、今の俺優しい優しい学園長サマだからさ」


誉めてもいないのに豪快に笑うクラウドをみて隣にいるルフェの顔がより歪んだ。きっとルフェのなかでクラウドの評価はどん底を突き抜けただろう。


「まぁ、んなこたぁいいんだよ。それより、お前をこの学園の、…まぁ仮だが教師として呼んだのはさっきも言ったが、ちぃと力を貸してほしくてな」


先程からのへらへらした顔とは一転、急にクラウドは真面目な顔になった。


「ほれ、これ見ろ。来期から入学してくる新入生なんだが、…問題があるのはこの4人だ」



何処からか出した巻物には来期から入学してくる新入生の名前がずらりと書き並べてある。その名前の中のある一部を指した。


「これは…?」


いきなり名前を指されても私にはなんのこっちゃ。だからなんだとしか言えない。


「だからなにさ…おっと」


おお、つい言葉にでてしまった。こんな素直なお口様は憎めない。しょうがないもん。


「だからなにってあのなあ…まあいい、今さらお前に何言ってもしょうがねえからな。まぁ、とりあえずこの4人は覚えとけ」


「え、なんで?」


教師になるのだから全生徒の名前を覚えろと言われるのはわかる。まぁ、無理だけども…なのにこの4人だけ?



「まあ、なんだ、あれだ、…今年の問題児ってやつだな」






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