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大罪の姫  作者:
2/9

01



騒がしい。





「ちょっとルゼ!あんた、あたしの荷物どこにやったのさ!!」


「おや?私は知りませんが…あぁ、アティモの持っているものでは?」


「あぁ!アティモあんたそれあたしのだよ!!」


「ひっ、ご、ごめ!ティアの物かと思って…」


「ティアの物はこっち!…って、なにティアの物に触ろうとしてんのさ!」


「あっ…それ、投げな…うわぁ!」




実に騒がしい。

朝からどたばた騒いでるなって思って、起きてみたら家の中が戦場になってた。どえろい格好をした美女、知的で胡散臭そうな青年、床でへばってる子供。

…なんだこれ、シュールすぎる。



…ちょっ、今私のマグカップ飛んだぞ。あ、割れた…。おい、誰だ私の可愛いマグカップを割ったのは。

家の隅で空気となっていた私の怒気に気づいたのか、騒ぎがぴたっと止んだ。



「ねぇ、ちょっ「あぁあ!おはようあたしの愛しいティア。今日の寝癖も最高に愛しいよ。んん?なんだいなんだい?あいつらがうるさいって?そうなんだよ!あたしも思っていたところさ、よしティアに煩わしさを与えるやつらなんてあたしが殺ってあげるよ。なぁにちょっとうるさくなるけど我慢するんだよ」



…なにも喋ってないんだけど。



私に抱きついて、たわわでけしからんものをぎゅうぎゅう押し付けてくる、ナイスバディなねぇちゃん"アマイ"は訳がわからないことを一方的に言って殺る気になりはじめた。




まてまてまて

違う、そうじゃなくて!


「…もごっ、もごごごもご」


「アマイ、放してあげなさい。」


「っち!ルゼに言われなくてもわかってるさね!」


「…おっふ、苦しかった。いや、だからね、これ、なに?」



そういってティアが指差したのは、昨日寝る前までは綺麗だった部屋の中。

昨日のお昼、頑張って掃除したはずなんだけど…。




「あ、いやぁそれは、ねぇ…」



ティアはアマイの胸に顔を埋めながら問い詰め、問い詰められたアマイは目をぐるぐると回しながら、あの…えっと、その…と、しどろもどろになっていた。…こいつ、なにか隠してるな。




「ねぇ、なに隠してるのアマイ」



じーっとみる、相手の、アマイの目を、じーっと見つめる。



「うぅ…うー…ごめんよティア!」




アマイは耐えきれなくなったのか、ティアに謝罪してすぐに、煙のように消えた。

なんでか、アマイは押しに弱いんだよなぁ…、別にもう怒ってないのに。

とりあえず、逃げてしまったものは仕方がない、他に聞くか。

そう思い、ぱっと目についたのが床でへばってる子供"アティモ"。

あれは、駄目だろ。なんかもう、瀕死だ。話は…できない、だって可哀想すぎる。ティアはそっと、側にあったタオルケットをアティモにかけた。



「ねぇ、ルゼ。どういう事なの?」


残りの一人である胡散臭そうな微笑みを浮かべる青年"ルゼ"に早く、私に、説明しろ。その念を込めて見上げると、先程までの微笑みが消えた。ルゼは困ったように眉毛を下げて、あーだとか、うーだとか言い始めた。



「あー…まぁ、要するにですね、荷造りってやつです。」


「に、荷造り…?」


いま、目の前の男はなんと言った?最近の生活には不適切で、不必要な言葉だ。なんで、今、この時期に荷造り?あれ、私なにかやらかしたっけ?他の皆もまだ問題は起こしてないはず…。



「あぁ、安心して下さい。今回は問題を起こした訳ではありませんよ。」


「じゃあ、なんで?」



なんだよ、問題起こした訳じゃないのか、びっくりしたじゃないか。だけど問題を起こした以外、他になにも理由が思い付かない。別にティアが常に問題を起こしている訳じゃない、ティア自身はたまーに、たまーに問題を起こすが大抵、他の馬鹿が面倒事を持ってきてしぶしぶと荷造りをすることになる。




「本当は、ぎりぎりに言うつもりだったんですが。実は一昨日の夜にこれが…」


ルゼが懐から出した一枚の封筒が目の前に出された。

…てかなにか、あれかこの手紙私宛なのに開けちゃうのか




「シュベラッツェ魔術学園からです。」


「しゅべらぁぇ…え?」


「シュベラッツェです。シュベラッツェ魔術学園。」



ふむ、シュベラッツェ魔術学園か…。久し振りに名前を聞いたから噛んでしまった。まぁ今の私には関係ないから興味ないけどね!



「全く関係ないよ!っていう顔をしているところ申し訳ないですが、それが関係なくはないみたいなんですよ。」



意味が分からない。ティアが手紙を開いてみると文字が浮かび上がってきた。

おぉ…、なんかthe魔法!って感じがする。こんなものが出回ってるなんて、近頃の魔術はやるなぁ。





―――ティア・サーレット様へ。

この度、シュベラッツェ魔術学園は貴女を教師(仮)として迎えることが決まりました。一週間後の入学式でお待ちしております。

P.S.これは国からの命令です。逆らえば――…。――――






「(仮)ってなにさ。」



「ティアの気になるところはそこでしたか。」



ルゼは呆れたというか、分かっていたような表情をした。

いや、だってさ、もう逆らえないことはこれ決定事項じゃんか。あからさまに逆らえば――…って首がぽーんって飛んでいくでしょ。やだもんそんなの。でも、一週間後か……ってことは



「時間ないじゃん。」



わぁ、全然驚かないや。なんだこれ、順序がよくわからなくなって全然驚きがない。てか、なんで私の居場所がわかったんだ。怖い。すごく、怖い。けど口には言わない。考えないようにしよう。だって怖いから。




「まぁ、その為の荷造りですからねぇ…。あ、ついでに言うと今、サティとキフェルがこの家の周りに結界を張っており、ルフェとレヴィアは引っ越しに必要な物を買い出しに行っています。」




皆が自分の知らないところで動いてるという現実は本当のことのようだった。くそぅ、泣きたくなる。




「まぁ、しょうがない。決定事項は諦めるしかない。しかしだ、ここからどう頑張っても学園までは四日はかかる。てことはだ…、もう時間がない。よし、やるぞ。」






何故、自分がシュベラッツェ魔術学園に行かなければならないのか等の理由は書いていなかったが、命令であるのなら仕方がないため、ティアとルゼはまた荷造りの作業を始めた―――








       "カチッ"     







どこかで時計の針が鳴った。



まるで長年動いていなかった時が動き始めたように。ゆっくり、ゆっくりと―――…。






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