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そっちの道を塞ぐ

 あの、「以前のものと謎・トリックを被らないようにする」ということについて、どうすべきかというか無意識に自分が使っている手法があったのを発見したので、それについて。


 それなりの数、ミステリを書いていると「あれ、またこのパターン?」とかがでてきちゃう可能性がありますね。謎・トリックが前のと似てるなあ、とか。


 さて、これを回避する方法はないように思います。書いてて「このパターン前に書いた気がする」と思うこと自体は回避できないし、またするべきではないと思うんですね。


 というのも、謎とかトリックって結構パターンは決まっていますけど、そんな中で色々なミステリが今も登場している中、斬新だったり新鮮だったりするのって、ちょっとだけパターンがずれていたりとか、ちょっと小道具が変わっていたりとか、ドラマ部分の色が違うとか、そういうちょっとした違いによるものだと思うんです。

 何が言いたいかというと、その謎・トリックが「被っている」「被っていない」というのは、パターン的な話でもなければ量的な話でもなく、そういった何らかの要素による判断ではなくて、話全体を見た時の感覚的なものなのではないか、少なくともその比重が大きいのではないか、ということです。

 つまり、明らかに無茶苦茶似ている場合以外は、思いつきやプロットのプロット時点で「半分くらい前に書いたのと似てるな。被ってる」とか「この謎からトリックの作り方のパターン、前も書いたな」と判断して止めてしまうのは諦めが良すぎるということです。

 結構詳しめのプロットを組むまでは、被っているかどうかの判断は保留にしておいた方がいいかもしれません。詳しめのプロットを組んで、全体を冷静に見た時に「ん? 似てるなあ」と思ってしまって初めて、その問題に対処すべきなんじゃないでしょうか。


 ほい、それでは、実際にきちんとしたプロット組んでみて「あれ、似てる……」と思ってしまった時にとることのできる対策というのは、大きく分けて以下の二つです。


①謎・トリック以外の部分を変える。

②謎・トリックを変える。


 ①についてですが、謎・トリックの部分が被っているように思えるのにそれ以外を変えて意味があるのかと思いきや、意外と何とかなることも多いです。

 というのも、前述したようにドラマ部分が変わっただけで「被っている」印象がなくなる可能性もありますし、小道具や見せる角度を変えたりとか、事件の起きる順番を変えたりとか、そういった方法でがらりと印象が変わるかもしれません。

 あるいは、謎・トリック自体は変えずにその構成を変えるというのも手です。もしメインの謎とサブの謎があるのなら(そしてメインの方の謎・トリックに既視感があるなら)、サブだった謎をメインに持ってくるようにして構成を変え、それに連動してドラマ、角度、小道具を変えていく……手間はかかりますがこれだってOKですね。

 謎・トリックが被っているように見えても、それ自体を変えることなく対策することは十分に可能かと思います。


 ①じゃあどうしょうもなさそうな場合や、謎・トリックとストーリー・世界観がセットになっているため(叙述モノにありがち)①をすると必然的に謎・トリックも変わる場合なんかは②をせざるを得ないですね。

 さて、じゃあ謎・トリックをどう変えるべきか。

 ここで、すらすらと面白い謎やトリックが湧き出るようなら苦労しません。そうでなくて、ようやく謎・トリックを絞り出したのにそれを変えなければならないという状況で、どうやったらいいのかということです。

 凡人と言う前提で言うと、ここでせっかく考えた謎・トリックを捨ててしまうというのは論外です。それをしてももっといいものが生まれるとは限らないわけですから。しかし、変えようにもどう変えていいのか、その方向性すら分からない。そんな時にお勧め、というか自分が使っているのは、タイトルにもなっている「そっちの道を塞ぐ」です。

 例を挙げます。


例1.密室殺人の謎。トリックは、犯人は遠隔操作で部屋の外から被害者を……あれ、前に書いたっけ?


 こうなってしまった場合、どうするか。謎は基本は変えません。ただし、状況的に「絶対に遠隔操作できない」ようにして、謎を追加してやるのです。

 噛ませ犬的な奴に遠隔操作の可能性を語らせて、探偵役にその意見を思い切りぶっ潰させてもOK!!

 とにかく、その選択肢を徹底的に潰してやるわけです。そして、そこからトリックを考えていきます。


 とはいえ、トリックを根本から変える必要はありません。例で言うならば、遠隔操作による殺害というトリック自体を変える必要はないのです(いいの思いついたら変えてももちろんいいですよ)。

 トリックに自信があってなるべく元のまま使いたいなら、「遠隔操作による殺害」は変えません。そしてそのトリックを可能にするために、もう一つ、「絶対に遠隔操作できない」状況で遠隔操作するためのトリックを無理にでも考えるのです。「遠隔操作できない」というのが犯人の誘導による思い込みだった、とか、事件の瞬間だけその状況が変わる設定があった、とかね。で、そうやると当然新しいサブの謎・トリックが生まれるわけですからそれを組み込んでストーリー、構成、見せる角度を調整して……つまり、自動的に①を行うわけです。


 で、面白いもんで、それをやっていると結局変えなかったはずのメインの謎・トリックに影響を与えちゃって、色々と変化して……ということで最終的にほとんど別物になることも珍しくありません。ここまでくれば、あんまり被っている印象はなくなるでしょう。


 まとめると、ここで提案しているのは、被っているように思える時に、その被っている方向への道、そっちの道を塞いでしまって強制的に別のルートを通らせるという方法です。自分がそっちを通らないように道を塞いでいく、というのは意外と使える気がします。そうやって追いつめないと、なかなか自分っていいアイデア出さないみたいですからね。

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