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サスペンスにおける「視点」の話

 サスペンスはフェアにこだわる必要が薄い代わりにスリリングにしなきゃいかんですね。


 で、スリリングにするっていうのは「どういうことか分からない」とか「どうなるか分からない」というのと関係があるんで、そういう意味では謎とリンクしておるわけです。


 サスペンスでの謎の作り方で典型的なものとして「視点」によるものがあります。

 誰の視点で語るか、を工夫して謎を作るんですね。


 パターン化すると、オーソドックスなのは以下の二つかなあ、と思います。



①がちゃがちゃ視点変更しまくって何が起きているのか分かりにくくする+伏線を張りまくる


 基本と言えば基本の使い方です。色んな人物からの視点でパズル状にストーリーを進めれば、当然何が起きているのか分かりにくくなりますし、ぶっちゃけて言えばその後で「こういう話でした」というのが分かれば、その中であった色々なできごとが意味を持つので全てが「伏線」(ここは一応かぎかっこ付きで「伏線」)になります。便利ですね。



②主人公視点にして、主人公の視野を狭くし、共感させることによってスリリングにする。


 全然何が起きているのか分からない、あるいはこれからどうなるか分からない主人公の視点にべったりとくっつけるわけです。特に、心情描写を濃い目にする。

 これをすると、主人公=読者感が強くなります。この上で主人公をドキドキハラハラさせると、それと一緒に読者もハラハラドキドキし易いんじゃないかってとこです。

 ホラーなんかではこの手法じゃないですかね。





 さて、ここで問題になるのは①の方です。

 そうやって話を訳が分からなくしておいて、後でネタばらしをして「つまりあのわけの分からなかった出来事やセリフは全部伏線でしたー」っていうのは、フェアじゃなくてもいいからって、あまりにも次元が低いんじゃないかってことがまずあります。


 別に悪いことじゃないとは思うんですよ。全然分からなかった話が徐々に分かってくるっていうのに興奮や面白さはあると思いますし。


 じゃあ、何が悪いのかっていうと、テクニックとして難易度が低すぎるということですね。いや、難易度高いものをすればいい小説かっていうと全然違いますけどね。


 というより、うまくいえないんですけど、この方法は最早テクニックですらない気がします。視点変えて切れ切れに話を進めていけばいいんですから。これで面白かったら、それはそもそもの話の内容が面白いのであって、テクニックの力ではないんじゃないかというか。


 あー、喩えで言うなら、甘くしたいからといって砂糖入れるのと一緒です。別にそれで甘くなったからといって料理がうまいわけじゃないですよね。甘くなるのは当然です。だから、テクニックとして大事なのは、砂糖をどのくらい入れるか、とか、全体的な味のバランスがどうなるのか、じゃないですか。だから砂糖入れて甘くするのはテクニックじゃないですよねってことです。砂糖を初めて発見した人じゃないんだから。





 長々言い訳しましたけど、①を工夫していった方がもっとよくなるよってだけの話です。

 どう工夫するのか。


 思いついたのは以下の二点です。





工夫1 伏線の工夫


 そもそも①の「伏線」が本当に伏線なのかって話です。訳が分からない情報が出てきて、それがいずれ謎が解けて訳が分かるようになると思っているなら、それは伏線と言えるのかという話ですね。だって読者が「これ伏線だろ絶対」と思ってるわけです。その時点でそれが伏線として機能しているのかは怪しいですよね。


 どんな伏線がいいのかというと、「意外な真相と伏線の微妙な関係」でも書きましたけど、読者が伏線だとは思わず、別の意味がある情報だと思う形がいいですね。たとえば単なるキャラクター説明上の描写だとか、ドラマの一部だと思っていたら……ってやつがいいです。


 「こういう意味だろう」と思っていたのが、ある事実が明らかになった後では、まるで別の意味になる。

 これこそが伏線でしょうね。


 伏線は基本ダブルミーニング、欲を出してトリプルミーニングとかになればもっといい。

 これが作者の乱暴な理解です。ですので、そういう伏線を増やすことによって工夫できると思います。



工夫2 分からなくする→隠蔽する


 視点をがちゃがちゃ変えて話を分からなくするのは当然ですね。それは別にいいです。

 それは、はっきりいって自然とそうなるんですよ。視点切り替えを何も考えずやってたって、ある程度話は分からなくなりますし、そこから更にぐちゃぐちゃにするのも簡単。

 そうではなくて、普通にやってたら絶対にバレてしまう「事実」を視点切り替えと描写のトリックを駆使して「隠蔽」することに力を注ぐわけです。


 分かり易いのは、例えばある人物の性別を隠蔽するわけです。「男」だと思ったら「女」でした。で、その人物が女だとしたら、話がまるっきり意味が変わってくる、みたいな。

 その際、最初に男だと思わせること自体は簡単だと思うんですよ。一人称を「僕」にしたりとか、髪型描写でショートカットなことを描写したりとか、名前が男っぽいとか。

 問題はその後、いかにその第一印象を継続させていくかで、男だとしたら不自然な描写を見せないようにして、逆に男だと誤解させる描写だけを重ねる。これを、後から読み返しても不自然じゃないように行う際に視点移動を駆使するのは結構効果的だと思います。





 ちなみに工夫2についは、これは結局「叙述トリック」の話になっていきます。サスペンスにおいては、ミステリ・推理小説における叙述トリックのような大前提からの大どんでん返しまでは必要とは思いませんが。


 サスペンスでは、スリリングに見せる=作者の演出が重要になってくるので、その意味で「語り方」で工夫をする叙述トリックと根本の部分で重なる部分が出てくるのだと思います。


 ともかく、そうやって工夫した①に、更に②を組み合わせる。

 これが初心者用の王道サスペンスの作り方なんじゃないでしょうか。何度も言いますが、あくまでも初心者用ですよ。その先は知りません。

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