意外な動機のパターン
意外な動機、こそがホワイダニットに他なりません。
事件そのものの動機か、それともあるひとつの事柄に対する動機か、はこの際置いておくとして(本質的には同じなので)
大きく分けて、動機が意外であるパターンは以下の二つになると思われます。
①動機自体はごく普通
②動機自体が異常
①について、動機自体はごく普通なら、どうやってそれを意外なものにするか?
それは、動機自体ではなく、その背景や前後関係を隠蔽することによって意外なものになります。
例1:連続殺人。全く無関係と思われた被害者には、実は二十年前の事件について関わりがあった。彼らは、復讐のために殺されたのだ。
これは事件そのものの動機についてですが、隠された事情が明らかになると、誰にも納得できる「復讐」という動機が分かるという形ですね。
あるいは、事件そのものではなく、あるひとつの事柄に対する動機については、以下のようなものが例として挙げることができます。
例2:犯人は事件現場から逃げる途中、何故かキッチンでシチューを作っていた→実は、犯行に使った凍った大きな肉を原型を無くしてしまうためだった。
まあ、ありがちな上にひどいトリックですが、これなんかも一応動機といえば動機です。ただ、こっちはどっちかというとハウダニットの「謎とトリック」や「伏線・ヒント」に属するんじゃないですかね。ですから、本来的な意味で言うとやっぱり例1かな。
ともかくここで言いたいのは、後から事情が分かれば「なるほどね、そりゃそうだ」と納得できるのが①のパターンということです。
そのための伏線としては、「ミッシングリング」を作っていくことが有効かと思います。
つまり、まず全体として事実関係を作っておいた後、重要な部分を隠していって、最初のうちに出てくるのがつながりのないバラバラの事実だけにするわけです(ここで出てくるバラバラの事実とか手がかりは、それがどう繋がるのか想像もできないような突拍子もないものの方が面白いと思います)
で、伏線・ヒントとしてその隠された事実同士の繋がり=ミッシングリングを徐々に浮かび上がらせる。欲を言えば、浮かび上がったミッシングリングもそのままではうまく繋がらず、それを更に「逆転」させるとようやく上手くはまる、みたいなのが理想ですかね。
例3:殺された被害者と関係者の繋がりが徐々に明らかになっていくが、うまく動機にならない。過去の事件の復讐としてはおかしい。実は、過去の事件の復讐をしたのは被害者の方で、返り討ちにあったのだ。
例えば、こんなのですね。
②のパターンは、動機自体が異常なパターン。
例4:意味不明な殺人事件。犯人は芸術家で、その場所に死体がないと気が済まなかったから殺した。
この場合、ぱっと考えても、以下の伏線が必要になるかと思います。
1.犯人の芸術家の偏執するところ
2.ある場所にあるべきものがあることが素晴らしいという美意識
3.類似する状況下でのコメント(例えば、犯人が料理を見て、「皿のこの部分に何か赤い物があった方がいいな」と言うとか)
4.芸術における、「物の配置」の重要性(学術書とか歴史からの引用だったらなおいいかもしれません)
こんな感じですか。
②のパターンでは、常人では理解できない動機をいかに読者に納得させるか、という話になってきます。そこで「狂人の論理」が必要になります。狂人も狂人なりの論理で動いているのだ、ってやつです。
つまり、その動機は全くもって理解できないが、しかし説明されれば「なるほど、そいつの中では筋は通ってるんだな」と読者に思ってもらえるのがベストだということです。
そのために必要な伏線は、「『犯人の中での論理』が垣間見れるもの」と「『その論理自体の妥当性』を保証するもの」が必要になるんじゃないでしょうか。
「『犯人の中での論理』が垣間見れるもの」は、上で言うと1.とか3.が当てはまります。つまり、犯人の中ではそうなんだな、ということが示されたり、推理すれば犯人の中にどんな論理があるのかが分かるようにしておく伏線です。
「『その論理自体の妥当性』を保証するもの」は、上で言うと2.と4.ですかね。つまり、「その論理はいくらなんでも過激だけと、全く理がないわけじゃない」ということを伏線で説明しておくわけです。「学術的とか歴史的には、一応ありな論理」を拡大解釈とか過激にしたものを「狂人の論理」とするのがこの伏線は張りやすい気がします。
まとめると
意外な動機は以下の2パターン
①動機は普通だけど事実関係が隠されている
②動機自体が異常
①は、ミッシングリングを作って、更にそれを捻ってから伏線にする。
②は「『犯人の中での論理』が垣間見れるもの」と「『その論理自体の妥当性』を保証するもの」が伏線に必要。




