サスペンスの亜種、コンゲームについて
コンゲームものは、誤解を恐れずに言うならば「犯人側から描いたサスペンスミステリー」でしょうか。
いわゆる詐欺師が主人公とかの物語はコンゲームものになるんですが、これは主人公側がトリックを仕掛けて、誰かを騙すわけですね。で、サスペンスミステリーなのでそこまでミステリとしての厳密性は要求されない。フェアとか論理性は厳密じゃなくていいんですね。厳密でもいいけど。
ここで注意すべきは、これは多分必須ではないんですけど、「読者も騙す」要素が事実上全てのコンゲームものには含まれています。
つまり、
主人公が対象を騙そうと計画、準備→実行……これがどうなるか?
だけでも、一応コンゲームものとしては成立するはずなんです。対象を騙そうとトリックをしかけるし、それがうまく行くかでドキドキハラハラさせるんだし。
でも、実際にはほぼ全てのコンゲームものでは、主人公(とは限りませんけど)は読者も騙しています。
これは、コンゲームが大きなくくりではミステリに属しているため、本質的には読者をびっくりさせるタイプのエンターテイメントであることが原因じゃないですかねえ。だから、ラストで主人公でもそうでなくてもいいけど、それまで読者に対して隠蔽されていた大ネタを種明かししてびっくり、って奴です。
で、ここからが妙な話になってくるのですが、コンゲームものでは必ず読者に隠蔽されたネタがあるし、それを読者もある程度予測してくるので、それをいかに隠すか、という作業と、隠蔽されていないトリックを仕掛けていく、という作業を同時並行する必要があります。
冷静に考えてみれば当然のことで、
読者に隠蔽したままそのトリックの計画と下準備、そして実行→ラストで種明かし
だけだと、ラストの種明かしまで、一体主人公が何をしているのかが読者には訳が分からないし、そもそも技術的にどうやってそんな状態である程度面白い(つまり筋の通っていて吸引力のある)話を展開していくのかって話ですね。
そこで、よくあるコンゲームの図式としては、以下のようなものがあります。
①主人公があるトリックを計画、準備、仕掛ける。
②敵側の方が一枚上手。トリック失敗。
③実は本当のトリックは別にありました。読者に隠蔽されていたトリックで大逆転。
もの凄い単純化しましたが、コンゲームものは大体これです。構造的には①②①②①②③とか、①と②を数回繰り返すタイプもありますが、①②があって③がラストに来るという構造には違いがありません。
あるいは③の後に、
④敵側が更に一枚上手でした。
⑤更にその上の読者に隠蔽されたトリックを持っていて主人公逆転
⑥更に敵側がやっぱり一枚上手で……
以下、無限ループですが、これもやっぱり①②③の基本セットの亜種だということは理解してもらえると思います。
で、重要なのは、ミステリで推理するための材料のヒントとかを途中に盛り込むのと同様に、①②の間に③のための伏線を張る必要があるってことですね。前述しましたけどフェアが必須ではないので、これは③を事前に予測可能にするためのものというより、種明かしの後で「ああー、あれはこういう意味だったのか」という気持ちよさを読者に提供するためのものと割り切った方がいいように思います。
で、ここら辺の要素で読者をどこまでびっくりさせるのか、つまり③の意外性とか①②での伏線の張り方って、実は作品のタイプによって大きく変わってくるように思います。がっつり騙し合いをするタイプだと当然そこは厳密にやらなきゃいけないですけど、サスペンスものだと、①②の面白さで引っ張るタイプのものもあります。そのタイプだと、そこにアクセントとして③をつけるような感じになります。
で、がっつりコンゲームものであればあるほど、主人公描写に気を遣わなきゃいけなかったり、ワトソン役を主人公、というか視点人物にして実質的主人公を第三者視点で見るようにしなければいけないのは、ディティール編で述べたのと同じです。そのワトソンが読者と一緒に騙されるのが理想的ですな。




