必要なもの、不必要なもの
推理とミステリの違いについては、推理編の序盤で書いてますね。あんな感じです。
あれはあれでいいとして、本格とかいう言葉がありますけど、推理ものとして本格であればあるほど、あそこで書いていた定義に厳密になるイメージでとらえています。
ですので推理小説の要素が薄いミステリだとどんどんその定義から離れていきますし、さらに純粋なミステリでなく、ミステリ以外の要素が入ってくるような作品であれば、更にその定義から離れていきます。
というと、嘘になります。実際は、ホラーミステリであっても推理小説としても厳格なものは存在しますしね。
離れていく、というよりも、離れていってもOkになっていく、という表現の方が正確でしょうか。どんどん重心がずれていくから、より推理小説から離れていっても別に読者が違和感を感じない、というか。そんな感覚です。分かりますかね?
実際、純粋なミステリであって推理小説ではない、というパターンはあまりない気がします。○○ミステリのように、ミステリ以外の要素が入ってきて初めて推理小説から離れることが許されるのです。作者の印象としては。
純粋なミステリということは純粋に謎を突き詰めるのであって、そうなれば当然推理小説になっていかざるを得ないのでしょう。しかし、そうすると今度は純粋なミステリとは何ぞやという疑問が……これは突き詰めていくとヤバそうなのでいったん置いておきます。
ともかく、じゃあ、肝心のサスペンスミステリの方はどうかというと、そこそこ推理要素から離れてもいいと思います。
具体的に言うと、
①可能性を論理的に一つに絞れなくてもいい
推理小説だと真相が披露された後、「でも、それ以外の可能性もあるじゃん」という穴があるともやもやしてしまいます。
しかし、サスペンスミステリであれば、他に可能性があってもとりあえずの真相を提示しておいて、後付けでその真相を補強する証拠(多いものは犯人の自供パターン)を出すというのでもOKになりやすいです。
②真相が論理的には推理不可能でもいい
伏線とかから、ある程度「ひょっとしてこんな真相かな」と予想はできても、論理を持って推理することは不可能でも許されます。
この最たるものは叙述トリックです。作者から読者を騙すためのトリックであるので、これは作品内の論理を駆使しても解くことができません。一段階上の、いわばメタトリックです。その作品を読んでいるうちに「あれ、これ叙述トリックじゃないの?」と疑うことはできますが、それは大抵論理的に叙述トリックだと推理できるものというよりも感覚的なものですね。もちろん、論理的な叙述トリックというのも当然作成可能であることはここで言い添えておきます。
③推理のタイミングがなくてよい
ここで言う推理のタイミングとは、純粋な推理のみのパートのことです。これがなくてもいいというのは、警察もののサスペンスを想像してもらうと分かり易いと思います。推理するよりも捜査です。もちろん、推理をしながらではありますが、同時に捜査をして新しい証拠を手に入れたり話を展開させたりをしてますよね。今までの証拠から、何が推理できるのかを考えるようなパートはないはずです。そういう警察ものだと、終盤の終盤、解決する直前で新しい情報が出てくることも珍しくありません。
もっと簡単に言うと、「読者への挑戦」を挟むタイミングが存在しない、ということです。挟もうにも、挟むにふさわしい場所がないんですね。
さて、ないない尽くしで、これならサスペンスミステリって推理小説に比べて超作りやすいじゃん、となりますけど、当然その分、推理小説にはそこまで必要ないけれどサスペンスミステリには絶対必要な要素もあるはずです。
それを以下に挙げていきます。
①サスペンス要素
当たり前ですね。
ちょっと前に書いてた要素です。ハラハラドキドキを、謎に結びつける必要があります。分かり易いのは謎を解かないと被害拡大とか危険とかですね。警察ものだったら、謎を解くのと警察内の権力闘争が結びついているパターンもありますな。
②意外な真相
一番分かり易いのは事件に対する意外な犯人ですね。えっ、と読者を驚かせねばなりません。
これ、推理小説の要素が強ければ強いほど、実は必要ではない要素なんですよね。謎があって、どうやってその謎を解くのかって過程の方に重きを置いてるからです。
が、そっちの要素がないのなら、当然重きを置くのは結果です。謎が解かれた結果、つまり真相の方です。ということは、真相が余程魅力的ではないといけないんですな。
犯人じゃなくても動機とか、ともかく謎が解かれた結果が意外である必要があるかと思います。情緒に訴えたりとか、ドラマとして優れているとかで意外ではなくとも真相を魅力的にする方法はあるかもしれませんが、初心者・素人向きではない気がします。
③伏線、トリック
当たり前ですね。ミステリなんだから。ここはミステリ編で書いた通りです。
ただ、ここでのトリックについて、ちょっと注意です。サスペンスミステリの場合、ここのトリックは犯人からのものである必要はありませんし、もっと言えば事件で使われなくとも構いません。
前述した叙述トリックのように、読者を驚かすために作者が物語上で仕組んだものでも一向に構いません。。
つまり、②の意外な真相を、意外にするための仕組みだと思っていただければいいのです。
以上、サスペンスミステリに必要な要素でした。
当然、②と③が絡んでいるのはもちろん、そこに①も有機的に絡んでいくのが理想的です。
ただ、まずは②と③について考えていくことが必要でしょう。①は②と③に絡まずとも一応は成立しますが、②と③はセットだからです。
そこで、以降ではまず②と③について考察していきます。




