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小説としての推理小説を書くために

 はい、というわけで前の話からの流れで、「小説としての」推理小説の書き方について考えていきます。


 といっても、これに関しては作者もできていない、というか試行錯誤している途中なんで、その試行錯誤をそのまま書いていきます。


 まず、小説としての推理小説を書くのに難しいポイントとしては、ラストの方までキャラの真情とかを完全に明かすことができないというのがあります。犯人というか、謎に関わっている人間について詳しく明かしちゃうと謎が成立しませんよね。

 ドラマは当然ながらキャラの感情やらバックボーンやらと深く関係するはずですから、それを説明するのに制限がある、というのは結構難しいです。


 じゃあ、謎とは極力関係しないところでドラマを作るかというと「これ推理小説の意味がある?」という話になります。ドラマ部分と謎、トリックが完全に分離してしまうわけですね。


 逆に言うと、ミステリとしてドラマを作るなら、謎とドラマが何らかの形でリンクしていなければいけないわけです。


 さて、謎とは「過去におけるよく分かっていないこと」という定義でした、ミステリにおいては。

 ちゅーことは、そことドラマがリンクするように作るんだから、「よく分からないこと」の中にドラマに関わる部分があって、謎が解かれてその部分が明らかになることでドラマが展開していく、という流れになるわけですね。隠すべきところ隠しながらドラマを展開させていくというのは結構難しくて、腕がいる作業になると思います。


 面白い小説にはテーマが必要だとは前の回で言いました。つまり、ドラマには核となるテーマがあるはずです。そのテーマ、つまり一番言いたいこと、一番書きたいことはどこに位置するべきなのでしょうか?


 もちろん、テーマは最初からはっきり分かっている場合もあります。


 例1.病院内で殺人事件が。テーマは病院というシステム自体の闇。


 ありがちかつ抽象的な例ですが、これなんて病院内で殺人事件が起きて、結構初期の段階で病院のシステムにスポットを当てられていれば、大体テーマは気づきますよね。

 ただ、これは話が進むにつれて、つまり謎がだんだんと解かれていくにつれてより明確に、具体的に、詳細に浮き彫りになっていく構造であるべきでしょう。

 謎にテーマがリンクしてたら当然ですね。


 ただ、殺人事件の場合、一番核となる謎、「犯人は誰か」もテーマとリンクしているべきです。そことテーマが関係なかったら、殺人事件がおまけみたいになるんで。

 しかし、犯人が誰かとテーマがリンクすると言われても、そのリンクの形って何があるでしょうか? 作者には、犯人の「動機」がテーマに関係する、という形した思いつきません。実際、このタイプがほとんどなんじゃないかなあ。


 さて、これとは別に、終わってみるまで、つまり謎が解かれた後、真相が明らかになるまでテーマがいまいち分からないものもあります。圧倒的に数が少ないですが。

 個人的には「虚無への供物」なんかこのタイプじゃないでしょうか。

 で、この場合は、テーマを隠したままドラマが進行していって、最後の方でそのドラマのテーマがばーんと発表されるって感じです。

 あとから振り返ると、そのテーマが中心となった一つのドラマになってる、みたいな。


 ただどうなんだろ、この二つのタイプがどっちが優れてるとか劣っているかとかもないだろうし、そもそもどんなテーマかによってタイプが決まる気がします。

 例1で言えば、病院のシステムの闇をテーマにしておいて、最後の最後までそれを隠すのは不自然だしそもそも意味があるのって話ですしね。

 これはどっちのタイプの話を作ろうって決めるよりも、どんなテーマにするか決めて、そのテーマならこっちのタイプになるな、って決まる気がします。そんなに拘る必要はないかな。


 ともかく、犯人の動機をテーマに絡ませるなりして、ミステリの一番核となる謎が明かされる時に、テーマの一番深い部分も現れる、というのが一番分かり易い、そしてオーソドックスな作り方だと思います。

 特に、この作り方だと、「これミステリじゃなくてよくない?」とも言われにくいですし。核となる謎とテーマが関連してますから。


 ただ、ここまではミステリ全般の話です。

 推理小説となると、ちょっと話が変わってくるんですよね。

 推理小説は、本当に推理クイズになりやすいジャンルです。

 なにせ「フェアかつ論理的に推理できる」ことが条件なわけなので、そもそもクイズっぽい。

 そして何よりも、「フェアかつ論理的に推理する」ことが核なので、謎そのものよりも、その謎を作り出しているトリックが本当にフェアに論理的に推理できるのか、が重視されます。

 要するに、トリックと、そのトリックを本当に読者が解けるかを中心に書いているのに、事件の動機がドラマのテーマと深く関わっていても、ちょっと外れている感があるんですね。動機にトリックが使われているなら別ですが。


 推理小説ではないミステリなら、トリックによって作り出された謎が中心なので、その謎にテーマをリンクさせるだけでよかった。

 しかし推理小説の場合、謎そのものよりもトリックと推理が中心なので、謎にテーマをリンクさせてもちょっとぎこちない。


 まとめるとこういうことです。


 ただ、正直なところ、推理小説でドラマ部分がぎこちない、というのはよくある話というか、だからドラマ部分にテーマがない推理クイズ的推理小説が多いんでしょう(プロの作品だってそうですよ)。

 というかテーマが作者の書きたいことなら、推理小説の場合はテーマがドラマじゃなくて単に「思いついた謎とトリック」というだけかもしれません。だから、ドラマにテーマがないので核の謎とトリックとくっつけるとぎこちない。

 だから、本当に、推理小説を無理に過度に小説的にする必要はないと思います。

 推理クイズ的推理小説ばっかりですし、そこにいくらでも傑作は溢れています。別に小説的にしないでいんじゃないでしょうか?


 それでもやりたい! で、ぎこちないのは嫌だ、という方。


 じゃあどうすればいいの、ということでは、素人、初心者のできる対策と言えば、ドラマの部分を謎やトリックに奉仕する脇役にするのではなく、もっと厚くして、そしてそのドラマのテーマを謎とリンクさせることで一体感が出るように演出する、というくらいでしょうか。


 書いたら結構当たり前のことですし、そもそもミステリ全般に当てはまることです。


 ただ、推理小説の場合はミステリ全般と比べて特別難しい。

 推理小説っていうのは読者にフェアかつ論理的に推理できるようにしなければいけないから、書かなければいけない情報量っていうのが結構多いんですよね。それを全部自然に書きつつ、推理って要素抜きでも面白い小説になるレベルにドラマを書く。

 いやほんと、これをする時にミステリと推理小説は天と地ほど差があると思って構わないでしょう。読者にフェアかつ論理的に推理可能って縛りがついただけで、ここまで物語を書くのが難しくなるのか、というのが作者の正直な感想です。


 ちなみに。

 素人、初心者にできる対策はこれぐらい、と言いましたが、そうじゃない人には別の方法があるんでしょうか?

 あるんです。本当に、書くようになって改めて感じる、とんでもない作品を先人達は作り出しています。とても素人、初心者にはまねできるとは思えない傑作。

 どうやってるのか?

 簡単に言うと、トリックとドラマのテーマをリンクさせているんです。

 謎じゃなくて、トリックの方ですよ? 普通、できますか?

 ちなみに、そういうタイプの作品は、作者の知る限り日本製です。まあ、推理小説というジャンル自体、前も言ったように日本が異常発達している(とは言っても瀕死)んで、当然と言えば当然ですが。


 参考までに、トリックと物語のテーマが関わっていると作者が思う、最近の有名なミステリ小説は「容疑者Xの献身」と「葉桜の季節に君を想うということ」です。

 他にもあったら是非教えてください。

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― 新着の感想 ―
[一言] トリックと物語のテーマに加えて動機が関わってくる作品には短編ですけど『戻り川心中』がありますね(推理小説と言っていいのかは微妙かもしれませんが)。あとは『名探偵に薔薇を』もそうかもしれません…
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