謎の本質は「過去」と「読者」
ミステリが「謎が存在し、その謎が解かれる話」っていうのは分かった。
ところで「謎」って何? ここでの謎って一般的な意味の謎と同じ意味?
と、いう話になってしまいますね。嘘です、別になりません。作者が勝手に誘導しているだけです。
しかし、確かにミステリは「謎」とは切っても切れない関係にあります。ここで言う謎って、一体何物でしょうか?
謎とは、一言で言えば「よく分からないこと」です。それを解くのがミステリということでいいのか?
結論から言えばよくないです。
ミステリにおいては更に、謎は「過去」に属していることが求められます(あくまでも作者の解釈です)
例1.誰が殺したのか?
例2.どうやって逃げ出したのか?
例3.何故こんなことが起こったのか?
全て、過去についての謎です。文法的には現在に属する場合もありえますが、
例4.どうしてあの男は穴を掘り続けているのか?
これも、その理由は過去にあるため、本質的には過去に属する謎です。
逆に未来に属する謎は、ミステリ的ではないです、基本的には。
例5.彼はどうやってこのピンチを抜け出すのか?
例6.誰が最後まで勝ち残るのか?
ハラハラするかもしれませんが、ミステリではないですね。
おいおい適当言ってんじゃねーよ、倒叙ミステリとかどうなるんだよ。
というご意見が出るかもしれません。
倒叙ミステリとは、最初に犯人が事件を起こすところが書かれていて、その後で刑事なり探偵なりがその事件を捜査するやつです。
古畑とかコロンボです、要するに。
確かにこれは微妙なところですが、しかしやはり謎は過去に属していると判断します。
最初のうちは犯人が「行った」犯罪に何がミスがなかったか? が謎となるし、終盤、探偵役が事件の真相が分かった描写が出ると、探偵役はどうして「分かった」のか? が謎となります。
もちろん、倒叙ミステリや叙述ミステリの中には、謎が過去に属さないミステリも存在します。が、それは、はっきり言って結構な変化球です。基本、ミステリにおいて謎は過去に属していると考えた方がいいです。素人、初心者が変化球に手を出しちゃだめです。最初は基本を固めましょう。
さてさて、これで謎については終わり、ではなく少しだけ続きます。
謎とは「よく分からないこと」だと書きました。さて、この場合、「よく分からない」というのは、誰にとってでしょう?
答えは簡単、「読者」です。
決して探偵役やワトソン役など、物語の登場人物ではありません。
というか、叙述ミステリなんかでは、登場人物全員が分かっていて読者だけ「よく分からない」というタイプの謎すら珍しくありません。
主人公と読者の認識が一致していないのなんて日常茶飯事です。
ということで、この謎についての定義をミステリの定義に入れ込むと以下のようになります。
ミステリとは、「過去について読者に分からないことが存在し、それが解き明かされる話」
基本的なミステリは、この定義に則って書いていくことになります。