推理小説に小説テーマは必要か
推理小説にちゃんとした物語、テーマ、読者に与える感動は必要か?
とりあえずは不要、というのが結論です。
それを以下で説明していきます。
そもそも、小説とは何か? 単なる文章ではなく、物語です。
小説の書き方とかを読むと、時々テーマを先に決めておくべきとかうんたらかんたら書いてあったりします。
あるいは、もっと厳格なやつだと、小説である以上時代精神に対する批評が必要だ、というのもあったりします。
こう書くと「別に純文学でもないし、エンターテイメントならテーマなくていいだろ」「ライトノベルなんかにもそんな大層なものがあるわけ?」という疑問が生まれたりもします。
というか作者はずっとそう思っていました。
がしかし、最近は作者も考えが違っていて、「なるほどテーマって必要なもんだな」と思うようになってきました。
創作におけるテーマとは、つまり「作者が書きたいこと、読者に刻みたいこと」くらいの意味だと思います。そんなに大層な、高尚なものに限定する必要はないのです。
例えば「ヤクザとチンピラの血塗れの騙し合い殺し合いを書きたい」というものでも、それはテーマになりうるわけです。テーマっぽい言い回しにしようと思ったら、「何でもありの世界での人間同士の争いの醜さと恐ろしさ」がテーマです、とでも言い換えればいいんです。
そう考えると、テーマがあった小説の方がいい、というか面白いのは当然で「作者が書きたいことがある」ものと「特に作者の創作欲が関係しないもの」では、一体どちらが本質的に面白いのか、という話です。
エンターテイメント性とテーマというのは全然矛盾しません。
さて、ここでいったんまとめると、小説というのは文章で書かれた物語、ドラマであり、そして、そこにはテーマがあるべき、ということになりました。
逆に言うと、テーマのあるドラマが存在しない小説は本質的には小説とは言えない、少なくとも面白い小説ではない、となります。
テーマのあるドラマ、つまり作者が書きたい物語が存在しない小説、そんなものあり得ないだろう、と言いたくなるかもしれません。
実はあり得ます。それが、推理小説です。
何故なら、推理小説にとって中心はドラマでなく謎解きだからです。
この傾向は、謎解きへの比重が重くなれば重くなるほど、つまりミステリの中でも推理小説、それも本格であればあるほど、そうなってしまう可能性が高くなります。
事実、ミステリならともかく、推理小説を書くならば、ドラマよりも謎とトリックから組み立てた方が楽です。というか、作者がこの書き方内でそういう方法を推奨してましたね、楽だから。
ちなみに、ミステリはまだ世界でもそれなりの人気がありますが、推理小説ともなるとはっきりいって日本が現在においては異常発達している感があります。推理小説というジャンルは日本では瀕死、海外においては既に死亡、というのが正直な作者の印象です。
それは、つまり推理小説というジャンルが「広い層を対象としにくい」という前述した問題点に加えて、「推理小説は小説ではない」という考えがあったんではないでしょうか。
「この小説はつまり何が言いたいのか」「読者に何を感じて欲しいのか」これに答えのない推理小説が多い、というか推理小説はそういうタイプが多くならざるを得ない、からこそこういう状況になっているんではないでしょうか。
作者が書きたい、語りたい物語がない推理小説、つまり中で書かれている物語が「謎」「トリック」を成立させるための脇役でしかない推理小説は、小説というジャンルに入れるのは正確ではないと思います。
「文章を使った推理クイズ」というのが正確なところなんじゃないでしょうか。もちろん、これは貶しているわけではありません。
実際、別に推理クイズが小説より上か下か、などないと思いますし、ぶっちゃけあの偉大なる「シャーロックホームズ」だって、よく考えれば推理クイズ寄りです。
ここでは素人、初心者のミステリの書き方なので、とりあえず簡単な方をお勧めします。つまり、推理クイズです。
クイズではない推理「小説」を書くのは素人、初心者には結構荷が重いというか、作者も成功していません。これから書くのはそれに挑戦しようと思ってはいますが、どうかなあ。不安です。
ともかく、別に悪いことでも劣ったことでもないので、まず推理小説を書くならば、「文章を使った推理クイズ」としての推理小説を書くべきです。
逆に、ここで半端にテーマを絡めたりドラマを優先したりすると、ちぐはぐなものになったり、「これは推理小説である必要あるか?」というようなものになったりします。推理小説の肝は謎とトリックなので、まずはクイズとしてそれに集中した作品を書きましょう。
それが書けて、ある程度、謎やトリックを作成するのに慣れてください。
その上で、「ちゃんとした小説としての推理小説を書きたい」あるいは「どうしても推理小説として書きたいものがある」という人は、そこで始めて推理クイズではない推理小説を書きましょう。
「小説としての推理小説」の書き方については、次で作者の考えを書かせてもらいます。




