推理小説のプロットの具体的な組み方
では、これまでの理屈を踏まえて、具体的な推理小説のプロットの組み方を書いていきます。
1.読者層を設定する
ライト向けかコア向けか、その中間に向けつつ新しい味付けで差別化するとか、できるだけ具体的に。理由はお分かりですね、これまで説明したように、読者層が非常に重要だからです。
2.基準を設定する
これは、設定した読者層から、その読者に謎を謎として提供できるか否か、そして暗黙のルールや納得できるラインを設定しておく、ということです。それらもろもろをここでは基準と言い表します。
この基準を元に、プロットを組んでいきます。
3.メインとなる謎とトリックを作る
この作り方はミステリのとこで説明したのと同じです。難易度が低いのは謎から考えるやり方です。あとは、トリックと謎を行きつ戻りつ。ずらすのも忘れずに。
ここで、注意。
推理ではなく、この謎やトリックの時点で設定した基準に不適格な可能性もあります。ライト向けなのにものすごいスケールの大きな謎だったり、トリックがメタ的だったり凝った叙述トリックだったり。
4.大まかなストーリーを決める
ここで、メインの謎が中心となったストーリーを最初から最後まで、かなり大まかでいいので決めておきます。起承転結ちゃんと。
これと次を順序逆にすると、ストーリーが非常に不自然になったり、あるいは破綻したりする可能性があります。
5.サブの謎を作る
メインのトリックから「ストーリーに沿って」派生するサブの謎を作っていきます。この謎は伏線でありヒントとなることも忘れずに。
6.サブのトリックとそこからの謎を作る
トリックが一つだと、少なくとも長編だときついのでサブのトリックも入れます。当然、ストーリーに沿う形で、そのトリックからの謎=伏線=ヒントも入れておきます。
7.調整
謎の焦点がずらしきっていなかったなら「ここでこういう展開にしてミスリード」とメモしたり、サブの謎やトリックの中に基準に不適合なものが混じっていないか探したり、あるいはトリックの組み合わせで出現する謎を入れたりします。
ヒントが足りないなら、謎ではない純粋なヒントを入れたりするのもここで入れましょう。
8.推理を作る
探偵役になって、読者にとってフェアかつ論理的に推理を行い、謎やヒントから真相に辿り着けるかどうかシミュレーションしてきましょう。
途中の道筋が消去法的だったり確定的だったりするので、そこに注意して、「挙げていない可能性」がないか、あるいは「補強が必要な弱い決めつけ」がないかを確認しましょう。
挙げていない可能性があったら、挙げる。それも難しかったら遡って展開を変えてその可能性があらかじめ出現しないようにする。「共犯がいればできるじゃん」となったら「絶対に共犯が存在しない展開にする」とか。
補強が必要な部分があったら、後の展開で補強するようにメモしたり、あるいは補強するヒントをさらに散りばめる。
そうして、基準にちゃんと適合する推理ができるようにしてください。
9.トライアンドエラー
ここからが過酷なところです。
実際に、これまでの大まかなストーリーや謎とトリック、メモを使って細かいプロットを組んでいきましょう。
細かく組んでいくと、いくつも矛盾が出てきたり、展開に無理があったり、話の流れ上ヒントが不自然だったりします。
全部直していきましょう。
こっちを直すと、こっちで致命的な矛盾が出てくる。こっちの展開を自然にすると、こっちでキャラの反応がおかしくなる。
日常茶飯事です。どこかを変えるたびに全体を見直しましょう。
時には大幅に展開を変えなくてはいけないことがあるかもしれません。歯を食いしばって作り直しましょう。
10.寝かす
忌々しい推理小説のことは忘れて、三日間くらいのんびりしましょう。
11.見直す
あれだけ必死で直したのに、改めて見直すと展開は不自然だわ、ところどころ穴があるわ、そもそも物語として面白くないわ、散々です。
泣きながら直しましょう。
当然、直して全体を見直したらまた別のとこがおかしくなっています。直しましょう。
トライアンドエラー再びです。
12.完成したことにする
さて、ここでまた寝かして見直したら、おそらく永遠に完成しません。
特に、実際に読者の基準に収まっているかどうか、つまり「簡単すぎないか」「納得できないんじゃないか」「アンフェアなんじゃないか」などについては、こっちが読者の基準を想定しているだけなので、実際のところどうなのかは分かりません。
見直すたび、自信が持てなくなります。
なので、もう完成したことにしちゃいましょう。これで読者は楽しんでくれるし、真相には納得してくれるし感心してくれる。そう信じましょう。
そう信じて、ついに次から実際の執筆に入ります。




