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真の意味でフェアかつ論理的な推理は無意味

 タイトルの「真の意味」とは、これまで説明してきた推理小説における「フェア」や「論理的」という概念ではなく、一般的な意味で、ということです。


 さて、フェアかつ論理的な推理、それによって真相に辿り着くことができるものが推理小説です。

 で、フェアと論理的についてはぐだぐだと説明しました。


 おおざっぱにまとめると、「読者が無意識のうちに持っているルールを逸脱せず、なおかつ読者が納得できる筋道を辿る」推理こそが、フェアかつ論理的な推理でした。それによって真相に辿り着ければOKです。


 つまり、超読者に依存した概念なわけです。「フェアかつ論理的な推理」というやつは。


「そんなの子どもだましだろ。要するに、読者に認められればOKってだけじゃん。そんなの読者の層とか個々人によって違っちゃうし。それよりも、一分の隙もなく、がちがちな真の意味で論理的な推理で真相に辿り着く事件を作ればいいんじゃないの? 難しいだろうけど、それこそ本格だろ!」


 そんなことを言う人がいるかもしれません。

 そこまでいかなくとも、「フェア」はともかく「論理的」というのが読者に完全に依存しているというのに違和感を感じる人もいるんじゃないでしょうか。


 が、それは幻想です。

 なぜならば、真の意味で、つまり読者という概念に依存せずにフェアかつ論理的な推理によって辿り着ける真相などないからです。


 これが、前述していた「論理的な推理の筋道を突き詰めて考えればその先には何もない」の意味です。


 具体的に考えていきましょう。


 例1.巨視的トンネル効果による密室殺人


 これは前に出た例なので例自体の説明は省略します。


 この例は無茶苦茶です。巨視的トンネル効果だって言えば、壁を抜けるわけですからあらゆる密室殺人ができてしまいますね。


 が、問題は、これを「読者」という概念抜きに論理だけで否定できない点です。


 だって、確率はゼロじゃないんですから、その可能性はない、と言えないわけです。「可能性がゼロに近い選択肢は排除する」というルール、その読者に依存する暗黙のルールがなければ、これを除けないんです。

「この密室を破る方法はAしかない!」という推理は、実は論理のみで言うならば「いやいや、巨視的トンネル効果で壁抜けしたんじゃないの?」と反論されてしまうんですね。


 さらに言うなら、次のようにも言えます。


 例2.ある人物が犯人しか知りようのない発言をして、しかも証拠も出てきた。


 これだって、純粋に論理的に、「ある人物が偶然言い間違えた」「ある人物は超能力者で人の心が読めた」「証拠は偽造されたものだった」という可能性を排除できるでしょうか?


 そして極論、


 例3.不可解な殺人事件が起きた。犯人は神だった。


 ふざけんなー! と言いたいところですが、ここで「一般常識」だとか「読者」だとか、論理以外の概念を持ち出さない限り、「だって論理的に神が存在しないって証明されたのかよ」という話になってしまうのです。


 つまり、真の意味でフェアかつ論理的な推理の先には、絶対確実な真相などないのです。真の意味でフェアかつ論理的に推理するのならば、常に推理が間違っている可能性を内包します。真相に辿り着けないのです。せいぜいが、「多分、こうなんじゃない?」とか「常識的に考えてこうだと思う」という推測だけ。

 推理小説は、その推測を正解、真相だとして解決させているのです。


 だから、推理小説は、言い方を変えれば、「真の意味でフェアかつ論理的な推理で真相に辿り着くことができる」と「読者に思わせることができるように言いくるめることができる」小説なのです。


 ここらへんを突き詰めて考えると、結局推理小説やミステリの内包している欺瞞に向き合うこととなり、アンチミステリに踏み込んでしまいます。


 なので、普通の推理小説を書こうとするのなら、真正面から論理に踏み込むことなく、前述した「ミステリ、推理小説としてフェアかつ論理的な推理」に限って考えていくべきでしょう。

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