表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/51

論理的=読者が納得する

 論理的に推理、ということについて考えていきます。

 ここでの論理的とは、推理小説における論理的であって、一般的なものとは違います。


 フェアについての説明でも言いましたが、結局のところミステリ、推理小説は読者が納得するか、面白いと思うかという問題です。

 なので、この論理的というのも、読者が見てその道筋が納得できるか、妥当だと思えるかという話でしかありえません。

 終わり。


 これでは流石に簡単すぎるので、詳しく説明するために、まずは推理の道筋について考えていきます。


 真相に辿り着く道筋は、大きく分けて二種類あります。「消去法的な道筋」と、「確定的な道筋」です。

 この二種類の道筋のどちらかによって、また論理的な推理の意味合いは変わってきます。


 消去法的な道筋とは、可能性を削って真相に辿り着く道筋です。

 確定的な道筋とは、事柄を確定していって真相に辿り着く道筋です。


 なんのこっちゃよく分かりませんから、例をあげます。

 話を簡単にするために、誰が犯人か、という問題だけに単純化します。


 例⒈手掛かりを調べていった結果、犯人がある人物以外ありえなくなった。


 これは消去法的な道筋です。


 例⒉手掛かりを調べていった結果、ある人物が犯人だと指し示していた。


 これは確定的な道筋です。


 消去法的な道筋に当てはまるのは、クローズドサークル系でしょうか。まず犯人がある程度絞られていて、その中から犯人ではない人間を削っていくわけです。


 確定的な道筋で言えば、典型的なのはダイイングメッセージでしょうか。メッセージが犯人を指し示してるわけです。犯人確定の証拠なんかがあるとこっちですね。


 ところで、次のような場合はどちらでしょうか?


 例⒊ある人物の一言が、犯人でない限り言わない一言だった。


 これで「その一言が証拠です、犯人はあなただ!」パターンはそこそこある気がしますね。


 これは確定的な道筋です。

 その一言で犯人を確定させているので。


 さて、ここで鋭い人なら、疑問が出てくるかもしれません。


「でもさー、これ、言い方によっては、その人物の犯人じゃない可能性を削っていく道筋とも言えるんじゃねえの? 消去法的な道筋とも言えるじゃん」



 その通りです。

 突き詰めて考えると、二つの道筋の本質は同じようなものになります。


 が、「突き詰めて考えないでください」!!!

 何故なら、推理小説においては、突き詰めて考えてしまえばその先には実は何もなく、辿り着くところは「アンチミステリ」となってしまうのです。

 この話はちょっと後にします。


 ともかく、ここでは真相に辿り着く道筋には、「表面的には」消去法的なものと確定的なものの二種類があると考えてください。


 そいでは、それぞれの道筋における論理的の意味合いについて考えていきます。


 消去法的な道筋において、論理的な推理であるための条件は、まずは可能性を削る理屈が読者を納得させられるものであること。つまり「AだからBはありえない」という理屈が、ちゃんと筋が通っているかどうかです。

 そして、注意すべきはこの次の条件。忘れがちなのですが、「ちゃんと全ての可能性が列挙されている」というものです。「AだからBはありえないね。Cもありえない。DもEもありえない」という理屈自体は筋が通っていても、「だからFだ」と真相を出した時に、「あれ、Gもありえるんじゃない?」と、実は作者が気づいておらず、それゆえ削られてもいない可能性があがってしまえば、それでおじゃんです。


 確定的な道筋においての論理的な推理である条件は、確定する際の理屈が妥当であること、これは消去法的な道筋の場合と一緒です。

 そしてもう一つ、「補強の存在」です。

 例えばダイイングメッセージならば、そのメッセージだけである人物を犯人だとするのは、一発ネタや推理クイズのようなものでなければ難しいでしょう。メッセージ自体が偽造されたものである可能性もあるし、ぶっちゃけ現実ではそれだけで裁判に持ち込んでも有罪にはならないです。

 つまり、真相が別にある可能性が消えたわけではないのです。

 よって、そこを補強する必要があります。一番簡単なのは、そのダイイングメッセージが犯人を確定していると突き付けて、犯人が自白してしまうパターンです。ただし、この場合ダイイングメッセージ自体が説得力を充分持っており、なおかつ話の流れから犯人が自白するのが不自然でないように演出することが不可欠です。

「それくらいで自白するか? まだごねれるだろ」と読者に思わせてしまったら負けということです。

 確定的な道筋の場合、それ単体で犯人だと明確に確信できるケースは少ないので(だったら、推理するまでもなく皆が気付きそうなものだし)何らかの形で補強する必要があるのです。



 短編じゃない限りは、大抵は謎は込み入っているし、推理も段階的に進みます。


 真相に辿り着く道筋が、


 消去法的➡︎消去法的➡︎確定的➡︎消去法的


 みたいになるのも珍しくないので、実際の話はここまで単純ではありませんが。


 まあ、途中の道筋がどっちのパターンかぼんやりと把握しておいて「想定外の可能性」とか「補強されていない決めつけ」みたいなものがないか注意してくださいってことです。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ