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フェアとは暗黙のルールを守っていること

「フェア」と「論理的」について考えていこうと思います。

 実は!

 この二つの要素も、明確に分かれているわけではなく、結構被っている概念なのですが(推理小説においてはね)それはさておき。


 フェアから。


 まあ、タイトルのところで説明してるんですが、要するにフェアとはルールを守ってるかどうかです。


 ルールって何? ないだろ、そんなの。

 という話になりますが、だからこそルールは暗黙なんですが。


 でも俺、そんなの意識してミステリとか推理小説読んだことないよ?

 という方、普通そうです。しかし、無意識のうちに実はルールを設定しているのです。


 例1.密室殺人が起きた。実は、犯人は巨視的トンネル効果と呼ばれる限りなくゼロに近い確率で起こりうる物質が物質を通り抜けるという効果によって、壁を抜けたのだ。


 これなんかどうでしょうか?

 キワモノとしてはありかもしれませんが、普通のミステリとしてこんなことがあったら「そりゃねえよ!」と多くの人が思うのではないでしょうか?

 つまり、「あまりにも可能性の低い現象や偶然は無視していい」という、暗黙のルールが実は存在していたのです。まあ、いくらなんでも極端な例だとは思いますが。


 あるいは次のようなのはどうでしょうか。


 例2.謎の連続殺人。犯人は悪霊だった。


 これも、普通のミステリだと思って読んでたらぶち切れですよね。悪霊出すなよって話です。


 しかし、上二つの例がOKになる場合があり得ます。


 つまり、暗黙のルールでそれがOKになっている場合です。どうやって暗黙のルールを変えるのか。それは、「世界観」を変えることで可能です。


 これは、ヒント=伏線とは似て非なるものです。


 例1ならば、それまでの話の展開の中に「確率論」だとか、「量子力学」を入れておくだとか、話のテーマ自体に「非常に確率の低い現象の解釈」というものを混ぜてもいいかもしれません。「神がサイコロを振るか否か」がテーマの一つであれば、結構いけそうな気がします。


 例2ならば、「霊がいない前提」ではなく「霊はいるの? いないの?」というぎりぎりの色合いの物語にしておいて、また話の端々で霊の存在を仄めかしたり不気味さを演出したりして、ホラーミステリとしての世界観にしておけば、何とかなる、かな?


 要するに、謎が解かれる前、つまり読者が推理可能なタイミングにおいて、読者がそれまでの話の流れから無意識のうちに「暗黙のルール」をくみ取っているわけです。

 謎の真相、あるいは謎が解かれる過程がその暗黙のルールを破っている場合、読者は「アンフェア」だと判断し、推理小説としてはマイナスとなってしまうわけです。


 ちなみに、この「暗黙のルール」のうち、推理小説のほとんどに共通する部分を明文化しようとした人がいました。

 それが、ノックスやヴァン・ダインです。

 ミステリを齧っていると時々聞く「ノックスの十戒」「ヴァン・ダインの二十則」とかがその明文化されたルールです。


 んが、これを守るべきかというと結構微妙な気がします。参考くらいにはしてもいいですが。


 さっきも言いましたが、作者がそこまでにどういう風に「世界観」を演出するかで「暗黙のルール」は変動しますし、更に言うならば基本的に「暗黙のルール」は読者側のものなので、


 ヴァン・ダインやらノックスやらがルールを書いた時代とは、今の読者の意識は違います!!!


 これ、重要です。

 後々話しますが、これはミステリや推理小説というジャンルの内包する病理にもつながっています。


 とにかく、そういうわけでヴァン・ダインやノックスについては参考程度にしておいて、むしろ個別に真相が暗黙のルールに違反していないか、違反しているとしたらどんなルールになるように物語全体のトーンを演出すればよいか、を考えていく方がいいと思います。


 だから、プロットを組む段階で初めから終わりまで書いておいて、世界観をどのレベルにすべきかを大体決めてから実際に執筆するべきでしょう。

 どう読んでも普通の都会の片隅で起きたハードボイルドな事件なのに、いざ真相となると国家的な陰謀が関わった大事件、というのはやっぱりフェアではないですからね。

 小さな事件から大事件という流れがよくないわけじゃないですよ。小さな事件から大事件に流れるまでに、ちゃんとスケールが大きくなっても不自然ではない世界観を演出できているか、という問題です。


 具体的な書き方を教えろや!

 と思われそうですが、実はこれは結構込み入った問題があるので、一通り「フェア」や「論理的」についての基本的な説明が終わってからでお願いします。

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