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記憶ー小学三年生ー
小学三年生になり、友達に毛布がまだ家にあることを隠すようになった。
皆が持っていない=恥ずかしい事
と理解したのだ。
でも密かに家では布団の所に冷がいた。
友達が家遊びにくる時は、
布団をしまう際、一緒にしまった。
こうして私は“普通の子”として生活をしたのだ。
友達が昔から持っている物は大概ぬいぐるみで、
私のような人は居なかった。
私と冷を理解してくれる人も、誰一人居なかった。
理解されなくても、冷がいてくれればそれでいい。
何となくそう考えていた。
ある日、引っ越しをする事になった。
しかし、そこには父親の姿はなかった。
小さい私には、どういう事だか分からなかった。
大きくなってそれは離婚だと知ったが。
荷物を詰め、思い出の場を去るのはかなり悲しかった。
友達ともお別れしなくてはならない。
引っ越しの日、学校ではお別れ会を開いてもらい、色紙と花を貰った。
その後、荷物を乗せた引っ越し業者のトラックに乗り新しい家へ行く。
三年生と言っても、もう冬で四年生に近い。
そのタイミングで新しい学校の三年生になるのは少し複雑な気分だった。