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第二話(2)

 俺は、後輩たちに囲まれるりこを横目に体育館にこっそり入って、二階の通路からコートを見下ろした。どうやら今日は、近隣中学校の女子バレー部が集まっての合同練習試合らしい。

 試合用のユニフォームを着た各校の選手たちが動き回っている。きゅ、きゅ、とシューズが床面をグリップする音や、彼女たちの掛け声が体育館の天井に響いていた。

 りこは三年でレギュラーだって言ってたし、せっかくだから活躍を見てから帰ろう。

 かわいい後輩女子たちも応援してやらないと、あくまで卒業生としてな。うん。

 ウォーミングアップを各チームが各コートで行い、そのまま対戦が始まる。

 試合はりこのチームが優勢に進めた。一セット取って二セット目を取られたが、三セット目を押さえて一戦目は勝利。

 スポーツの生観戦って楽しいな。勝ち試合ならなおさらだ。

 小休止を挟んで、対戦相手が入れ替わる。

 部員たちの雑談を耳にするに、次の相手は同格のチームらしい。最初の試合は格下だったのか。勝った喜びより、次に向かう集中のほうがまさっているようだ。

 二試合目、前評判通り最初は互角の試合運びだったが、徐々にりこたちがリードし始めた。

 思わず手に汗握ってしまう。

 男子バレー部の方からも、女子バレー部が好調と聞いて声援が沸いていた。

 男バレの野太い声が声援に混じり始めたので、部外者の俺も男子の声に紛れてついつい声を張った。

 何度目かのトスが上がる。

「りこ、いけえっ!」

 りこの身長では少し厳しい、と思った。しかし、素晴らしいばねで滞空する、綺麗に伸びたりこの身体が、強烈なスパイクを相手コートに叩き込んだ。

 俺はものすごくいい意味で期待を裏切られた。

「やたっ!」 「よっしゃ!」

 りこが叫んでガッツポーズ。俺もガッツポーズ。

 ん? 俺の声が聞こえたのか、りこがきょろきょろしてる。手を振ったが、りこは気づかなかったみたいだ。それとも、誰か別の男子を探していたわけでは……ないよな??

(まさか……な)

「葉月ぃー! いいぞー!」

 男子の何人かが、りこを名指して応援している。その中に、短髪のさわやかスポーツ少年みたいなのが一人いて目を引く。いかにもイケメンって感じじゃなくて男にも友達多そうなところがポイント高い。そいつの目線が、なんか特にりこに向いていて熱い。

(むう……)

 りこも、莉緒があれだけ美人だし、遺伝子的にはかわいいはずなんだ。男子が色めき立つのも仕方あるまい。俺は妙に沸き立つ感情をぐっとこらえた。

 あれ?俺ってもうちょっとイケメンでもよくないか? 遺伝子的に。

 スパイクが決まって、りこは一瞬だけ喜びのガッツポーズを見せたあと、ちらっと反対側の二階通路を見上げる。残念、俺がいるのはこっちだぞ……。りこの視線がなかなか合わない。

 どこかに兄の姿を探してくれてるのか、それともだれかほかに気になるやつでもいるのだろうか……。

 りこは、チームメイトのみんなとハイタッチして、すぐに気を取り直したように、次のレシーブ体勢にすっと戻った。頬には、小さな笑みが浮かんでいた。自身の油断なき笑みだ。りこの表情が自信にあふれていて、集中しているのがわかる。

 そして、チームみんなの気持ちが一つになった、俺の目にはそんな風に見えた。りこたちは頑張って、同格のチームを相手に二勝目を挙げた。

 各校二試合行って、昼休憩が挟まれる。ここまで来たら、最後まで見届けるしかない —— 部外者で応援は俺一人だけど。

 次の相手は、全国大会常連校。しかも、去年の全国大会ではベスト8に入ったばかりの強豪だっていう。

 りこたちがどこまで戦えるのか。 ちょっとワクワクしてきた。


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