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拓海は、主人公ではなかった

異世界に転生した次の瞬間、拓海を強烈な呼吸困難が襲った。

あまりにも強烈に胸を締め付ける感覚なので、その息苦しさは、ほとんど胸の痛みのように感じられた。


まだ冒険も始まっていないというのに、何が起こったのか。


拓海が全国トップクラスの頭脳を働かせ状況を分析しようとしたが、数秒で彼の意識は闇にのまれていった。


一般にあまり知られていないが、低濃度の酸素を吸うことは無呼吸状態よりも酷い結果を生む。なぜなら体内の酸素濃度は16%でありそれより低い酸素濃度の空気は酸素を体内から吸い出すからだ。無呼吸が「酸素0」なら、低酸素濃度の空気は「マイナスの酸素」として機能する。そのため数回低濃度酸素を吸っただけで、人は意識を失ってしまうのだ。


どれほど頭が良くても気絶してしまえば、何もできない。高橋拓海は、異世界に転生して5分後には死亡していた。


女神は別次元から高橋拓海の死体を観測し、ため息をついた。

日本でトップクラスに優秀な個体である彼ならどうにか生き延びるかも、と本気で期待していただけに落胆も大きい。


しかし高橋拓海は女神に1つのアイデアを与えてくれた。


水野瀬名をよく知る人物を異世界転生させ、探させるという方法。たしかに女神が自分で異世界を探索するより効率的だ。


もちろん誰を送りこもうが、水野瀬名のいる異世界は低酸素なのは、かわらない。だが、異世界転生時に自然発生する腕輪の魔法は、個人の守護霊を反映して、1人1人違う。


下手な鉄砲も数うちゃ当たる。酸素のない異世界で生き残る腕輪を持つ転生者も現れるかもしれない。


できるだけ多くの「瀬名の知り合い」を転生させようと考えた女神は、瀬名が餌をやっていた隣家の犬の存在を思い出した。

――あの犬は瀬名と長時間接していたじゃないか!


女神は、閃きがふってきたらすぐ行動にうつす性格をしていた。

アイデアの成功確率を検討するような慎重さはない。

だから異世界から引き返し、元の世界へ即座にUターンした。


そもそも、失敗して異世界で何もできず犬が死んだとしたら、また別の異世界転生者を探せばいいだけの話だ。


この犬の魂を取り出して異世界へ動かすことすら、万能な女神にとっては造作もない。


だが、そんな万能な女神をもってしても見抜くことはできなかった。一見何の変哲もないみすぼらしいこの犬が、異世界で女神の計算すら超えた暴走をすることを。



この異世界転生物語において、拓海は、主人公ではなかった。だが彼が残したアイデアを女神が採用したことで、この虐待されている犬が、英雄になっていく。


これは世界を壊す犬の物語だ。


お読み頂き、ありがとうございます。


この作品を『なかなかやるじゃん』『そこそこ続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や評価をして下さると、執筆のやる気が増強します。


人生初長編チャレンジなので更新遅いかもしれませんが、先の展開が全く読めない物語を目指して頑張っています。更新されたら、次のエピソードも是非、読んでみてね。

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