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魔王様と勇者ちゃん。~少女二人の相違相愛~  作者: もぐ
第二章 離別編(仮)
69/121

【69】闖入者、そして修羅場の相。





「フレイ…………ぅ、ぅぅう……ふぅ…ぅ……」


 堰を切ったように、

 フローリアは声にならん声を上げて、泣く。


 そして、首をいやいやするように振った。


「んだよ……分かってくれよ、もう……」


「……ちがう……うれしい…………でも、もう、ダメです……」


「何が、ダメってんだ。だめな事なんかないよ」


「だって……私、もう……法王も……法庁も、全部……」


「あ――あぁ……そ、それはよ……」


 フレイが上目で空を見て、しどろもどろになる。


 そうじゃった……そこ、忘れちゃいかん所じゃよな……

 二人も余も、ここにきて途方に暮れそうになるが――


 それは、不意に聞こえた。



「それは、心配いりませんぞ?」



 突然、聞き覚えのない声がすぐ近くから聴こえた。

 辺りを見回すが、誰もおらん。


「な、なんじゃ? 今たしかに声が……」


「あこれは失礼、ただいま参上致しますので、お待ちくだされ?」


 よいしょ、という声と共に、余とフローリア達とのちょうど間くらい、

 その何もない空間に長く黒い縦線が入る。


 そこからニュっ、と衣服の袖らしきものが生えてきたかと思ったら、

 その二つの袖……というか腕が縦線を横にぐいーっと割り開いた。


 真っ黒い裂け目が出来上がり、そこから人の顔が現れる。


「な、なぬぅ――?!」


 驚く余をよそに、ひょい、とその裂け目から一人の少女が飛び出てきた。

 ピンク色の髪と、大きな瞳のぐるぐるとした不思議な瞳孔が目を引く。

 ぶらりと下げた、圧倒的に丈が合っていない上着の袖の片方を額に

 持ってきて、そやつは妙なポーズを取った。


「あい!! 呼ばれてないけどニュニュニューん。

 うら若き乙女たちのSOSをキャッチして、馳せ参じましたぞ☆」


 …………


 ……なぁに、この子。


「……け、」


 け?

 なんじゃフレイ、毛?


「けっ――賢者、クロム様ぁ!!?」


 ほぁ?


 …………


 ……な、なんじゃて??


「賢者……ってなんじゃ?」


「アッハハ、けんじゃってなんじゃってナンボのもんじゃってね☆

 申し訳ない、お取り込み中いきなりお邪魔いたしちゃってさ!!」


 うそじゃろ……

 これ、賢者?


 賢者って、こんななん?


「いやぁー、ほんとはもうちょっと前から居たんだけどね?

 なんか迫真の山場っぽかったから、出しゃばれなくってさ☆

 いいっすなぁ、乙女たちの迸る愛!!愛!!たまんね!!」


 まる!!

 と頭上に〇印を腕で作って、またしても謎のポーズを取る不審者。


「どうして、賢者様がここに……それに、」


 フローリアも、呆気に取られておる。


「し、心配いらない、というのは……?」


「読んで字の如しですぞ。中央法庁、ぜんぜん無事ー☆

 なぜなら、小生が聖女殿の術法を邪魔しちゃいましたからな!!」


「えっ、まじかよ!? ――じゃねぇ、本当ですか!?」


「ほんとでーす。安心した? ね、安心した?」


 次々変なポーズを繰り出しながら賢者らしい少女が言う。

 絶妙にうざいのぅ。


 しかし、その言が本当なら、とりあえずは……


「そ、そうですか……でも……」


 フローリアが俯いて何か言おうとする。

 しかし、賢者の高い声がそれに割って入る。


「はーい、賢者ちゃんは賢いから先回りしちゃいますぞー☆

 あれでしょ聖女ちゃん?


『でもそれは結果論であってぇ、あのぉ、だからと言って私のしたことが

 無かったことにはならないですしぃ、許されはしないと思いますぅ』


 とか言っちゃうんでしょー? はい却下ー!!

 言ったって下さいよフレイちゃん、さっきみたいにイケメン全開で☆」


「う、うぇえ?! ……いや、まぁ確かに言うつもりだったけど」


「フレイ……でも、」


 まごまごするフローリアに、フレイがもう一度肩に手を添える。


「……まったく、一緒に背負(しょ)ってやるモンがもう一個増えたな?

 でもいいぜ、大いに悩めよ。その分オレが慰めてやっからよ」


「あばー☆ まじいけめんーー!!」


「……は、はずいんだけど」


 フレイが顔を赤くしておる。

 たしかに、調子狂うのぉこの賢者とかいうやつ……

 割とシリアスな場面じゃったよな?


「ってコトだから、ギャラリーの霊法士のみなさーん?

 皆さんも、ひとまず今回の件は見なかった事でオッケィ?」


「あ、いや、その――」


「ってワケにいかないかぁー!! 真面目にお勤めご苦労様ですぞ☆

 じゃあ一旦、小生が二人を拉致っておきますぞってことでね!!

 今後の事はお若い二人でゆっくりしっぽり、考えるがいいよ?」


 ひとりでひたすら喋り倒した後、賢者は霊術陣を展開する。


「あ、そうそう、そこの可愛らしい不思議なお嬢ちゃん?」


 ……


 ……え、余のこと?


「な、なんじゃ?」


「なんかお嬢ちゃん不思議なアトモスフィア……タダモノではありませんな?

 今度ゆっくりお話ししてみたかったり……ってのは置いといて、

 ちょっと修羅場の相が顔に出てるから、気を付けるとよいですぞ?」


「はぁ、修羅場?」


「以上!! ではお邪魔しましたっつってね~~☆」


 転送陣から光の柱が立ち上がり、一際大きな閃光が走る。

 次の瞬間には、賢者も聖女もフレイも、この場から消えていた。


 あ、嵐のような……ひとときであった。

 ていうか当たり前のように霊術で転移しおったな。


 しかし、修羅場……?

 それはもう、終わったのではないのか?


 余は首を傾げて、そこに立つキューちゃんに話し掛ける。


「なんぞよう分からんが……か、帰るかのキューちゃん――って」


 あ、あれ?


 キューちゃん、なんで姿を現しとるんじゃ?

 

 いつの間にか隠匿を解除しておるキューちゃんが、

 何やら空を見上げておる。


「……キューちゃん?」


「うそ……」


 ぽつり、と呟く。


 一体なんじゃ? と余も彼女の目線を追って、空を見上げる。


 太陽……


 ではなく、その横。


 黒い点のようなものが、遥か上空に見えた。


 目を凝らす必要はない。


 それが、なんなのか、

 誰なのか。


 余にもすぐに分かった。



「あれは……リリィ……?」


 余は呟いた。





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