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魔王様と勇者ちゃん。~少女二人の相違相愛~  作者: もぐ
第二章 離別編(仮)
46/121

【46】ぴょんぴょんしてゆく。





 にわかに信じがたいし、認めたくないが。


 どうも余は、記憶喪失というアレであるらしい。


 何でもいいから思い出せることはないか、と変に息んでみたが、

 びっくりするくらい手応えがない。


(……これは……非常に困ったのぅ……)


 途方に暮れておると、不意に横からガサガサと物音がした。

 草っ原をかき分けるような音。余はそちらに目を向ける。


「キュ……!?」


 そこには、一匹のウサモフが姿を見せておった。

 白く、耳の垂れた、ごく普通のウサモフじゃ。


 大きさからして、普通の成ウサモフのようじゃの……

 雌の成ウサモフだともっと大きくなるので、これは雄じゃな。


 こんな事は、覚えとるんだのぅ……

 いやこの子を見たから、ウサモフに関する情報を思い出したのか?


 ウサモフ……うーん、何か引っ掛かるような気がするが……

 だめじゃ、頭に霞が掛かっとる。


 そのウサモフは、なんだかとてもびっくりしておるようだった。

 目の前におる余も、姿はウサモフ。何をそんなに驚いて……


 と一瞬疑問だったが、そういや余、ちょっと変わったナリをしとるんか。

 自分らとは微妙に異なる個体を見て、警戒しとるんじゃろか。


 そう納得しかけた時、突然頭の中に声が響いた。


『あっ、あなたサマは、もしかして……』


 いきなり届いたそれに余も少しびっくり。

 こ、これは……ええと、そう念話じゃ。


 ていうかウサモフって、意思疎通できたんか……?

 なんにせよ念話という概念を思い出した余は、自分でも試みてみる。


『あー……てすてす……聞こえるかの』


『き、きこえます!! わぁ、すごいほんものだー』


 ほんもの?

 何やら、目を輝かせて感動しておる。

 なんのこっちゃ。


『まちがいないです、あなたサマは”モフ魔王”さまですね!!』


 …………


 ……はいー?


 もふ↑まおう↓?


『……ほぁ、なんじゃそれは』


『えっ!! ちがうのですかー!?』


『いや、違うというか……その、余ってば実は、なんというか……

 自分がどこの何者なのか、ぜんぜん記憶がないのじゃ』


『まぁたいへん!!』


 むよーん、と身体を伸ばして驚愕を表すウサモフ。


『おいたわしやー、それでしたらぜひ、われらのシティにおこしください!!

 あなたサマはきっとモフ魔王さまなのです、まちがいありません』


 し、してぃ……?

 なんか一匹ですっごい盛り上がっておるが。


 まぁ……ここに居っても途方に暮れるばかりじゃ。

 とりあえずそのシティとやらに招かれてみるかの……。


 余が了承すると、大いに喜ぶウサモフ。

 ぴょんぴょんと跳ねて先導してくれるその背中に付いてゆく。


『こちらです、モフ魔王さまー』


 余もそれに倣って、ぴょんぴょこ跳ねて進んでみる。

 おぉ案外いける、中々スピードも出るではないか。



 …………


 ……



 案内されたそこは、切り立った岩壁に空いた、洞窟?であった。

 導かれるまま中へと入ってゆくと……


 内部には、なかなかの大きさの空間が広がっておった。

 岩壁にいくつも空いた穴が陽光を取り入れ、中はそれなりに明るい。

 いくつか、さらに奥に続くらしい穴が空いているのが見える。


 空間内に、ざっと見えるだけで大小30匹くらいのウサモフがおった。

 皆が一斉に、余の方へ注目する。


『みんなーえらいことだよー、ついにモフ魔王さまがいらっしゃったー!!』


「キューーー!!?」


 キューキューと鳴きながら、跳ね回るウサモフたち。

 なぁにこれぇ……


『モフ魔王さまーー!!』

『でんせつはほんとうだったーー』

『おうつくしいーー』

『この御姿……神韻縹渺(しんいんひょうびょう)とはいみじくも言ったものです』

『とってもつよそうーー!!』

『モフ魔王さまばんざーい!!』


 やいのやいの。

 めちゃくちゃアッパーなテンションに余はついていけない。


『みんな、しずまれー。それではこれからモフ魔王さまを、

 われらの守護者さまにごしょうかいするー』


 ……は、守護者?

 どんどん展開するじゃん、なんじゃそれ。


『ではモフ魔王さま、こちらへおこしください。

 モフ魔王さまくらいすごい守護者さまに、ごしょうかいしますー』


 ぴょんぴょん。

 さも当たり前のように進めるでない……。


 仕方なく、余はその後をついてゆく。


 洞窟内に空いた穴のひとつをくぐり、そこに伸びる通路を進んでいく。

 見ると、左右の壁面には光を放つ魔晶が等間隔に設置されており、

 通路を明るく照らしておった。


(守護者とな……ウサモフなのかの?)


 意外と長い通路を進むと、今度はこれまた意外なものが現れる。

 石で出来た、なかなかに立派な両開きの扉であった。


『守護者さまー、あけてくださーい。

 おきゃくさまですーすごいかたですー』


 ウサモフが言うと、やたら重そうな音を立てながらゆっくりと

 奥へ扉が開いてゆく。


 あれは……?


(……にんげ……いや魔族、か)


 開いた扉から中に進むと、それまでとは全く様子の異なる空間が

 広がっておった。


 中はまるで、魔族や人間の貴族の部屋のように豪奢であった。

 美しい天蓋のついたベッドや上等そうな鏡台やチェスト、絢爛な調度品。

 異様とも言える光景じゃった。


 そして扉の正面に向かい合う形で、これまた立派な玉座が設えてあり、

 そこに一人の……魔族の男が腰掛けておった。


(……ただものでは、ないな)


 壮年という感じの相貌、三十路半ばと言った印象の紳士じゃ。

 派手ではないが作りの良い外套を羽織ったその姿は、

 得も知れぬ威容を放っておった。


「……へぇ、面白いお客様だね」


 やけに耳に残る玲瓏な声で男は言い、柔らかく微笑む。


「君、ありがとう。この子と二人で話がしたいな。

 悪いのだけど、席を外してもらえるかな?」


『はい、せきをはずしまーす』


 応えて、素直に扉の向こうへ跳ねていくウサモフ。

 そこに、余は一人……いや一匹残された。


「はじめまして、美しい……"お嬢さん”……でいいね?

 私の名はクロウ――」


 男は席をゆっくりと立つ。


「クロウ=フォビア=ヴェテスレス。お見知りおき願おうかな」


 男は名乗った。


 その名を聴いた時、なぜか微かに、心が震えた。






新章に入ったら一日1つずつ掲載にしようと考えてましたが、

しばらく変わらず2つずつあげて行きたいと思います。


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