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ファミレスに入ると、大人と子ども、隣同士のテーブルに座ることになったが、最初に口を開いたのが、テーブルは異なるが、塁の横に座った、江戸川詩だった。
「へえ、凛ちゃんの前世が卑弥呼だなんて、面白いわね。確かに凛ちゃんには、予知能力があるし、醸し出す雰囲気も、卑弥呼って言えば、卑弥呼っぽいかも」
すると、続いて、対面で座る懍に、塁が話しかけた。
「すごいんだね、凛ちゃん、予知ができるなんて。今も何か、予知ができるのかな」
すると懍は、塁に向って、静かにつぶやいた。
「あの、もうすぐ、あなたに不幸が訪れるかも・・・」
塁は即座に反応した。
「何、何?僕に不幸?ホントかな」
すると、
「あ、すみません!」
ちょうどグラスの飲み物、おそらくビールを運んでいたウェイトスが、突如、バランスを崩して、塁に向ってビールをぶちまけたのだ。
「わー、おい、こんなのあるか?ズボンはビショビシだよ」
塁が叫ぶと、江戸川詩が塁に声をかけた。
「すみませんね。凛ちゃんの予知能力って、いつも数秒先なので、知っていても回避できないんですよね」
すると、そこで、ふいに大きな声をあげたのが、塁の監視員という、戸田大翔だ。
「あれ?君、柴原って言ったね。柴原って言うと、あの柴原達夫教授と、柴原葵さん、日本を代表する研究者と女性能力者のお嬢さん?・・・お二人が亡くなられて、もう半年になるが」
「戸田さん!」
戸田の言葉を、江戸川がさえぎった。
「あ、悪い悪い。嫌なことを言って。でも、その凛ちゃんと、そちらの小松倫君が、兄妹とは、どういうこと?」
再び、江戸川が答えた。
「まあ、いろいろあったんですよ。戸田さん、変な詮索はしないでください。それより、ここに来たのは、倫君の前世の件でしたよね。そちらの話をしましょうよ」
すると、それを受けて、夏井陽葵が話し始めた。
「それでは、小松倫君の前世を発表しましょう。実は彼の前世は、お釈迦様、仏陀なんですよ」
「仏陀!?」
陽葵の言葉に、全員が同じ言葉で、驚きを表現した。