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放課後になった。
その日の平聖学園高等部校門前には、同校中等部の制服を着た、長い黒髪のかわいい顔立ちの少女が立っていて、帰宅する生徒たちの関心を集めていた。その子から、やや離れて立つ、2人の大人の男女も美男美女で、そちらを凝視しながら、通り過ぎる生徒も多かった。
女の子は、門から出ようと通り過ぎる生徒一人ひとりの顔を、瞳を大きくして眺めていたが、やがて満面の笑みを浮かべ、一人の生徒に近づいた。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん、待ってたのよ。さあ、一緒に帰ろ」
声を掛けられた生徒は、
「おう、凛か。そっちは大丈夫だったか。いい友だちはできそうか」
と答えたが、その生徒は、小松倫だった。
「大丈夫だったよ。みんなと仲良くなれそうだよ」
その女の子・柴原凛が、そう答えると、2人の大人の男性の方が、倫に近づいて言った。
「あ、そうですね。それでは、私はそろそろ事務所に戻ろうと思うのですが」
倫は男に視線を向け、答えた。
「あ、桐生さん。今日は初登校ということで、同伴、ありがとうございました。もう後は、帰るだけですので、もう、大丈夫ですよ」
すると、
「ちょっと、小松君」
倫の背後から、話に割って入った人物がいた。夏井陽葵だった。
「あんた、放課後に話がある、って言ったのに、何、勝手に帰ってんのよ。私を無視するつもり」
すると続いて出て来たのが、足立塁だ。
「陽葵、やめろよ、小松に絡むのは。でも、小松、陽葵はあれから、ずっとお前を見ながら、何やらぶつぶつとしゃべってた。あれは、おそらく、お前の守護霊と話をしていたんだと思う。こんな熱心な陽葵は珍しい。だから話だけでも聞いてやってくれないか」
塁は、その言葉で陽葵を援護したつもりだったが、その時、陽葵は何故か、倫の妹の方を呆気にとられたような顔で見つめていた。
「あなた、小松倫君の妹さん、ですよね?いやあ、ビックリしました。兄妹揃って、超大物の前世の持ち主だなんて、奇跡のような出来事だわ」