魔王親衛教会
とある人里離れた山奥の洞窟内。
人工的に作られたと思わしき大きなホール内には数個の大きな円筒の容器。
ピンクの液体、緑色の液体、黄色の液体と様々な色で満たされている。
それらの液体の中には様々なキメラが培養されている。
科学者と思わしき人物が助手達に指示を出している。
「もう少し出力を上げよ」
「これ以上出力を上げると死んでしまいます」
「構わん、やれ」
ピンクの液体の中で苦しそうにもがいているキメラ。
しばらくすると動かなくなってしまった。
「死んでしまいました」
「やり過ぎたか。まあ、よい。次の実験体を用意せよ」
「ドクター・スロット、実験はうまくいってるかい、ベイベェー」
「お前の方こそスペランカ洞窟の実験体の回収はどうなっておるのだ、ドグマ」
長く飛び出たリーゼント。サングラスにチリチリなもみ上げ。
ぴちめの白く派手な衣装。腕の下にはひも状のヒラヒラ。
エルビス・プレスリーを彷彿とさせるようないでたち。
魔槍士ドグマは平櫛でご自慢のリーゼントを整えながら
「洞窟が崩壊しちゃってたから回収は出来なかったぜ、ベイベェー」
「実験にはたくさんのキメラが必要なのだぞ、わかっておるのか」
「自然災害だから仕方がないぜ、ベイベェー。
そんなことより教祖様がお呼びだぜ、ベイベェー」
所長室と書かれた部屋。部屋にはドクター・スロットとドグマがいる。
魔法だろうか。空中に大型テレビのほどの大きさの画面が表示されている。
テレビ画面の中の人物は顔全体に白いマスクを被っており
狐の仮面を装着しているため素顔はわからない。
声も変換機を通したような低音の曇った感じである。
「ドクター・スロット、キメラから魔族を作り出す実験の進捗はどうなっている」
「魔族の肉体を作るところまでは成功しておりますが
魂の定着が上手くいっておりません。
自我が芽生えた時点で魂と依代が分離してしまう現象が発生しております」
「研究費はただではないのだぞ!
時間がかかればかかるほど金は減って行くのだぞ」
「は、心得ております」
「生贄を使ってみてはどうか」
「あれは魔族のように見せかけた人造魔族、いわゆるホムンクルスです。
しかも成功率が1万分の1と非常に低い。
沢山の生贄を要するためコストに見合いませぬ」
「東方の術で式神なる秘術を使うものがいるという。
探し出してそやつの秘術も取り入れてみよ」
「全ては魔王様のために」
「全ては魔王様のために、ベイベェー」
大型スクリーンは消え教祖様との通信は終わる。
平櫛でリーゼントを整えながらドグマは心の中でつぶやく。
(でもその前に嫁を迎えに行ってくるぜ、ベイベェー)