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ミッキーと88の確執

魔王の間には88と恵比寿丸がいる。

カーテン越しにシルエットのミッキーが上から目線で

「魔王様に進捗を報告せよ、88」

「順調だよ。今日この後、魔蓄管の充蓄のためのイベントを行う予定だよ」

と言いながら一歩前に出る88。

「そ、そ、そそ、そそそその場で報告せよ!」

あわてまくるミッキーの額から冷汗が一筋流れる。

玉座に座っている腹話術人形がガタガタと震えている。

「うまく行けば今後はもっと早く魔蓄管に魔力を貯めることができると思うよ」

「わかった。下がってよい」

恵比寿丸と一緒に玉座の間を出ていく88。30秒後

「ぷはーっ!圧が凄い」

ミッキーは千年前のある出来事を思い出していた。あの忌まわしき恐怖の出来事を。

   ●

「ミニー、僕のお嫁さんになっておくれよ」

「バカね、魔族にはヒューマンのようなオスやメスは存在しないわ」

「でも、君といると僕はなんだか楽しいのだ」

ミニーとの出会いはよく覚えていない。気がついたら僕のそばにいたからだ。

僕ら魔族はどうやって生まれるのか、

どうして存在しているのかを知ることができない。

気がついたときには魔族で、そこに存在しているからだ。

魔族には生まれながらに強い者もいれば弱い者もいる。

僕とミニーはネズミのような大きな耳を持つ痩せこけた灰色の魔族だった。

僕の身長は155センチ、ミニーは140センチ。

どうみても後者、生まれながらの弱者だ。

だから強い魔族に出会わないよう、不道徳な冒険者達に出会わないよう

ひっそりとネズミのように暮らしていた。

僕にはなぜか生き物の魂を人形に移すことができる不思議な能力があった。

なぜ、そのような能力を持っているのか、やはりわからない。

ミニーといれば楽しい、今はそれだけでよかった。

「魔族に子供は生まれないのよ、わかってる?」

呆れ顔のミニーに僕は言うのだ。

「大丈夫だよミニー。この腹話術の人形に僕の能力で何か生き物の魂を移して

 僕達の子供として育てればいいよ」

腹話術の人形とは魔王が封印されている人形である。

それは何気ない晴れた一日だった。突然のミニーの悲鳴。

洞窟の外に出てみると見たこともない魔族がミニーの胸を剣で貫いていた。

「なぜ・・・なぜそんなことを」

「目障りだったから」

そう言うと魔族はどこかへ去っていった。

何もしていないのに。ただ目障りだったからというだけで。

「ああ、ミニー、どうして、どうしてこんなことに」

「ミッキー、こんなことならあなたのお嫁さんになってあげればよかった」

僕が今できることはなんだ!

そうだ、ミニーの魂をあの腹話術の人形に定着させることだ。

あの時、僕のこの能力はこの日のためにあったのかもしれないとすら思ったほどだ。

そして魔族としての力が増したときミニーを再生するのだ。

研究に研究を重ね、僕は人形使いとしての能力を覚醒させていった。

それはある日の晴れた一日だった。

「なぜ・・・なぜそんなことを」

「目障りだったから」

ミニーを殺した魔族を探し出し、強化した人形で殺してやった。

殺す寸前に人形へ魂を移し、元の肉体に戻してみたがダメだった。

どうやらこの能力は魂を人形へ移すことはできるが人形から元の肉体へ

移すことはできない一方通行であるようだ。

「ミニー、いつの日か必ず君の魂を復活させてやる」

研究を重ね人形使いとしての力が増していった僕は気がつけば魔王軍に入り

幹部となっていた。

そしてあの日の魔王様と88のぶつかり合いに巻き込まれた僕に

最大の悲劇が襲い掛かる。

「今、魔王を殺してしまっては退屈になってしまう。

 こんなところにいい人形があるじゃないか」

「やめてくれ、やめてください、お願いです」

「ん?別の魂が入っているね。邪魔だね」

腹話術の人形に手を突っ込みエネルギーのような物を取り出しポイっと捨てる88。

「ミニーいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」

「この人形に魔王の魂を定着させておこう」

僕は絶対に88のことを許さない。

例えこの身がどうなろうとも、魔王軍最弱とバカにされようとも

必ず88への復讐を成し遂げてみせる。

と、いい話になっているがこれは真実とは異なる。

ミッキーが自分の都合の良い話に改ざんしたからだ。

真実はこうだ。

ミッキーは気に入ったヒューマンやエルフの女性、自分より弱い魔族を罠に掛け

魂を人形に移していたぶるのが好きな下衆野郎だった。

「ほれほれここが痒いのか~」

ニヤニヤしながら人形に針を刺すミッキー。

ある日、ミッキーは最大の下手を打つ。88を罠に掛けたのだ。

88の美しさに見惚れてしまったミッキーはどうしても我慢できず

88を罠にかけようとした。

罠にかかった88は微動だにせず左手の白い手袋を外し

手の甲の8の字を見せながら

「8式展開」

8の字が白く光り輝く。88の足元に数字の8の字が展開される。

8の字がクロスした部分に88が立っている、

8の字の小さなワッカは88の後ろ。大きなワッカは88の前にある。

「8式点火」

ドッゴーン!という大きな音とともに爆炎がワッカから垂直に空高く噴出す。

88を中心に右回りで高速回転する2つの垂直の火柱。

「8式発射」

2つの垂直の火柱は中心から離れながら半径1キロほどを焼き尽くす。

命からがら逃げおおせたミッキーであったが、ことはこれだけでは収まらなかった。

これを見た魔王が88の力に恐怖したのだ。

88に配下に加わるよう命じるが88はこれを拒否。

これが引き金となり魔王軍と88は全面戦争へと発展するのである。

圧倒的な力で魔王に勝利した88は近くにたまたま落ちていたミッキーの

腹話術の人形を手に取り

「魔王がいなくなると退屈だから」

と言う理由で魔王の魂を人形に封印してしまう。

玉座の間で88が一歩前へ出て近づいたとき

腹話術の人形の中の魔王の魂は本能的に恐怖でガタガタと震えてしまったのだ。

「今に見ておれ88。お前を人形に閉じ込めて絶対にもてあそんでやるからな!」

懲りない下衆野郎のミッキー。

魔王との戦いで生き残ったミッキーに88がメルトの名を呼ぶことを

許さなかったのはこういう理由からであった。

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