強襲のドグロック
「こんな大金・・・何か危険なことをやっているのではなくって、モモのすけ」
アニーの孤児院の食堂。アニーが困惑した表情でモモのすけを見ている。
スラム街の商業ギルドで相場の2倍の値段でメルティピッグの肉を売りつけることに
成功したモモのすけはベルリンゲンの銀行にアニー名義で全てを預金してきた。
預金通帳には純金貨300枚(3億円)の数字が記載されている。
預金通帳の金額を見たアニーはびっくりした表情である。
「大丈夫だよアニー」
「でもこんな大金・・・モモのすけ達は必要ないの?」
「俺たちゃ金に困ってないんでね」
この10年、冒険者として数々のクエストをこなしてきた。
冒険者ランクA級になったのは5年前。
危険なクエストの連続だったがその分報酬も桁外れ。
気がつけば日々の生活に困らないほど貯蓄が貯まっていた。
そこで最近は仕事の質にこだわってる。冒険者の間では金で動かないパーティ
ピーチグローリー4、通称ピチ4としてちょっと有名だったりするのである。
「ありがとう」
他の3人はいつものように庭で子供達の遊び相手をしている。
モンモンの伸び縮みする如意棒に興味津々な男の子。
4人の子供と相撲をとっているワンセブン。
女の子より背が低いと言われ憤慨しているマスコット状態のサゴッチッチ。
そんな平和なアニーの孤児院を少し離れた小高い丘から見ている人影が二人。
紙で出来た蜂を手に持ち
「これを使ったやつがあの場所にいるのだな」
身長2メートルくらい。オールバックの髪と蛇っぽい顔に小さい顎。
蛇がヒューマンに変化したが完全に擬態できていない。
どこか爬虫類っぽさを残している、そんな感じである。
服装は軽装で全身タイプの黒い競泳水着で包まれている。
常に水気を含んでいるのかツヤツヤしている。
「へい、モモのすけという侍です」
答えているのはモモのすけに相場の2倍で肉を売りつけられた
商業ギルドのギルマスである。
「情報提供、ご苦労だったな。これは報酬だ」
報酬が入っている袋をギルマスに渡す蛇っぽい大男。
「へへ、毎度あり~」
ギルマスは心の中で呟く。
「あのまま純金貨100枚で手をうっておけばよかったものを。
2倍の値段で買い取らせやがって。酷い目にあいやがれ!」
●
「今夜はここに泊まっていくのでしょう?」
「いや、まだ仕事の途中でね。ある女性を探すクエストが終わってないのさ」
「そう、残念ね。子供達もあなたの武勇伝を聞きたがっていたのだけど」
孤児院の北側からゆっくりと歩いてくる一人の大男。
孤児院の四方に設置してある式神の魔よけが警告音を発する。
「モンスターかキー?」
いち早く庭で子供達と遊んでいたモンモンが反応する。
「サゴチッチ!子供達を建物の中に誘導しろキー」
「わカッパ!」
「俺の鼻を警戒して風下から接近してきたのかワン?」
「いや、違うキー。それならもっと隠密に近づいてくるはずキー」
「ということは、あれは自信があるってことワン」
堂々と近づいてくる大男の殺気、オーラを感じとったモンモンとワンセブン。
冒険者としての勘が警告を発している。
「モンモン、あれはヤバイワン」
「ああ、わかってるキー。最初から全力で行くキー」
ワンセブンは2本の首輪を両腕に付け直す。
「金剛力」
ワンセブンの体が筋肉隆々へ変化する。
「ワンセブン、俺の奥義発動まで時間稼ぎを頼むキー」
「心得たワン」
大男へ向かってゆっくりと歩いて行くワンセブン。
臨兵闘者皆陣裂在前と印を結ぶモンモン。
「猿飛流忍術奥義 十八番 猿釈迦」
モンモンの背後に猿の顔をしたお釈迦様が浮かび上がる。
大男の前に立ちはだかるワンセブン。
「何の用だワン」
「お前に用は無い。モモのすけとかいう侍に用がある。どけ」
「ここは孤児院だワン。ここから先は行かせんワン」
相撲の立会いの格好を取るワンセブン。そして勢いよく突進。
「どすこーい!」
大男にがっぷりよつのワンセブン。
しかし大男の前進は止まらない。ズルズルと押されるワンセブン。
「馬鹿な、金剛力状態の私が力負けしているワン」
モンモンの背後に現れたお釈迦様がモンモンと重なる。
シャカデース! という音が鳴る。
「邪魔だ」
大男は左腕を真上に上げ手刀でワンセブンの首を狩ろうとする。
「させねーキー」
髪の毛がお釈迦様のチリチリクルクルの螺髪になった
モンモンが大男の顔に右足で跳び蹴りを炸裂させる。
シャカデース! という音が鳴る。
よろめく大男。
「ワンセブン、離れろ!」
右腕を上、左腕を下にした天上天下唯我独尊のポーズを取るモンモン。
「くらえ!シャカカッター!キー」
上に向けている手を下に。下に向けて上に交差しながら
最初の構えと反対のポーズを取るモンモン。
シャカデース! という音が鳴る。
光輝く鋭い刃のエネルギーが大男目がけて放たれる。
大男の左手が大きく円形に変形しエネルギーの刃を弾き飛ばす。
「ば、馬鹿なキー・・・」
「残念だがその程度の術では私の体に傷を付けることは出来ぬ。
私はドラロン作のリフレクトシールドを体内に取り込んでいるからな」
建物の中で様子を見ていたサゴチッチ。
「おいおいマジカッパ。
モンモンとワンセブンが勝てない相手なんて初めて見るカッパ」
建物から飛び出てきたモモのすけは大男と対戦している
釈迦状態のモンモンと金剛力状態のワンセブンが苦戦している姿を見て
瞬時に状況を理解する。(ヤバイ、これは勝てない)
「私はモモのすけという男を探している」
大男の前に立つモモのすけ。
「モモのすけは俺だ」
大男は紙の蜂をモモのすけに見せ
「ベルリンゲンでこいつを使ったのはお前か?」
「ああ、そうだ。ギルマスに頼まれて仕返しにでも来たのか?」
「違う」
「じゃあ、俺に何の用だ」
「私は魔王親衛教会の五将星の一人、ドグロック。
我々はお前が使っている式神という術に興味がある。
大人しく付いてくるならば危害は加えないがそうでないならば、
建物の中の子供達も含めお前以外のこの場にいる全員を殺す」
「わかった。ついて行くことにしよう」
「ものわかりがよくて助かる。私は無益な殺生は好まぬ。
我々に協力すればすぐに解放してやる」
「皆、後のことは頼んだぜ」
転移魔法で消えるドグロックとモモのすけ。
サゴチッチは考えていた。
水辺だったらあんなやつ・・・いや、水辺の俺でも厳しいカッパ。
俺たちはこう見えても個々の能力はS級クラスだカッパ。
S級クラスは小都市くらいなら破壊できる
軍隊並の戦力を有することを意味するカッパ。
そのためS級クラスに認定されると
いずれかの国家へ所属することを強要されるカッパ。
強大な力を有するS級クラスを野放しにすることは国家間のパワーバランスを
壊す引き金になりかねないからカッパ。
俺たちピチ4がA級に留まっているのはS級クラスのこうしたしがらみが
嫌だったからカッパ。
そんな俺達が2人がかりで倒せないとは・・・あの大男、バケモノだカッパ。
「助太刀が必要だワン」
「助太刀っていってもキー」
建物から出てきたサゴチッチ。
「レニーってやつを探すカッパ」
「なぜにレニーを探すワン?」
「細い線だが風神子、雷神子なら何とかなるかもしれないカッパ」
「なるほどキー。助太刀を頼んでみる価値はあるキー」
「急いでベルリンゲンに戻ってレニーを探すワン」




