JB中華飯店の自動修復
「ほほう、マジックミックスラケットにそんな効果があったとはな」
事の経緯を説明する俺っち。
「マジックミックスラケットって何っすか?」
「簡単に説明するとだな、おわん型の部分で魔力を増幅させる装置だな」
なるほど、それで呪いのぬいぐるみが巨大化したのか。
「しかし、よく店が壊れる男だな~JBは」
全くだ。俺っち達に関わってからのJBは不運が続いている。
「それもこれもレニーに関わったからか、ガハハハハ」
「えっ?俺っちっすか?何で俺っちが関係するっすか?」
今回の災いの種を撒いたのはスーザンじゃん。
ドラロンはスーザンとクワーマンが離れたところで呪いのぬいぐるみの
出荷作業をしているのを確認した上で、小声で言うのだった。
「お前さん、転生者だろ」
「そうっすけど、それが何か」
「転生者っていうのは、偶然転生してくるわけじゃあねぇんだよ。
何か理由があって転生してくるわけよ。
それゆえ、転生者ってのは、とかくトラブルに巻き込まれ易いのさ。
当然、近くにいるやつらもトラブルに巻き込まれやすくなる」
思い当たる節がある。15才になって吟遊詩人の修行の旅に出たことで
88に出会い、魔族の前でライブやったり、洞窟で死に掛けたりとトラブルてんこ盛りだ。
「まあ、お前さんが何の目的でこっちの世界に転生してきたかわからんがな。
わかる日が来るまで生き延びるしかねーな、ガハハハハ」
何の目的か・・・今までそんなことを考えたことがなかったな。
「まあ、魔族にこんなに関わっているヒューマンも珍しいからな。
特にメルトと関わってる以上、お前さんは必要以上に
危険な目に会うこと間違い無しだ、ガハハハハ」
「そうなんっすか・・・」
「おう!だからお前さんには特別に俺様が作った腕輪をくれてやったろう。
何度か命を救ってるはずだぜ、感謝しな、ガハハハハ」
「はい、それはもう感謝っす!」
本当にこの腕輪は優秀だし、何度も命を救ってもらっている。マジお守りだ。
「さてと、そろそろJBの店も復活した頃じゃねーかな」
「復活?」
JB中華飯店と書かれたドアが開き中からJBが現れる。
「ドラロンさんはいらっしゃるか?」
●
JB中華飯店、焼失10分後。
焼失したJB中華飯店の前で四つんばいになり、うな垂れているJB。
目から涙、鼻から鼻水が流れ出ている。
「なぜこんなことに・・・また店が無くなってしまった」
巨大化したピンクのモフモフにより半壊したJB中華飯店に最後のトドメを刺したのは
JBの(ファイア!)の大声に反応したサラ鍋の炎だった。
JBの右隣にしゃがみこみ、左手でJBの右肩に手を添えるタイガックス。
「JB・・・なんていうか・・・また手伝うから元気だせよ」
風貌に似合わず優しい男タイガックス。
「店は燃え尽きても私の中華料理への情熱は燃え尽きていない」
「そうさ、あんたは不死鳥、中華フェニックスさ!」
タイガックスに支えられながら立ち上がるJB。
JBは地面に突き刺さったサラ鍋を引っこ抜き、土汚れを払う。
涙を右手の袖でふき取りながら、キリっとした表情で
「店は無くなったが私にはこの伝説の調理器具のサラ鍋がある。
何度でも立ち上がってみせる!
中華フェニーーーーーック・・・」
「自動修復機能を起動します」
「ん? タイガックス、今何か言ったかい?」
「いや、俺は何も言ってないぜ」
「自動修復を開始します」
焼失したJB中華飯店の下に巨大な魔方陣が展開される。
燃えカスなどが光に包まれ蛍が飛ぶように霧散する。
「修復率10%」
コンピュータグラフィックのような枠組みが展開される。
建物の基礎から柱が生えてくる。そして壁が構成されていく。
「修復率85%」
元の姿に戻っていくJB中華飯店。
「修復率100%。修復を完了しました」
完全回復しているJB中華飯店。
驚きの表情のタイガックスとJB。
「おいおい、俺は今すげぇ奇跡を目の当たりにしてるぜ」
「こんなことが・・・私の店が元に戻った・・・
私には帰れる場所があるんだ、こんなにうれしいことはない」
タイガックスは違和感を感じていた。
「3階建てだったっけ?」
店のドアを開け中へ入ると更にびっくり。
まるで時間をさかのぼったかのように家具から何まで
焼失前の状態に戻っているのである。
JBは厨房のVIPと書かれたドアの前へ立ち
「チームドラロン」
と合言葉を言いドアを開ける。
「ドラロンさんはいらっしゃるか?」
「おっ、来たなJB。驚いただろ」
「はい、本当に何がなんだか。どうなってるのでしょう?」
「JBの中華飯店の再建の時に、建築を魔族の伝説の棟梁ビルディッグに頼んだのよ。
俺様の工房も武具の製作中に壁が壊れたり家が半壊したりすることが多々あってな。
毎度毎度、修理するのが大変だったのでビルディッグに頼んで
自動修復機能を付けてもらったのよ」
さすが異世界、なんでもあり、ご都合主義上等の魔法世界だ。
再建されたJB中華飯店の外壁が不思議な質感をしているな、
と感じていたが自動修復機能が備わっていたからなのか。
「自動修復機能があったとは驚きでした。そして感謝のしようがありません」
「食材とか大丈夫だったんっすか?」
「はい、食材は別の場所に保管しておりましたので問題ありません」
「じゃあ、早速で申し訳ないんだがチャーハン5人前頼む」
「了解しました。では店の厨房で作ってきますので少々お待ちを」
呪いのぬいぐるみの出荷作業を終えたスーザンとクワーマンが戻ってきた。
「あっ、JB、久しぶり~元気出だった~」
元はと言えばスーザンがドラロンの倉庫から勝手に持ち出した
マジックミックスラケットで巨大化させてしまった呪いのぬいぐるみが原因だったのに
何事も無かったかのように接するスーザン。
鉄メンタルというか自分は関係ないという肯定力はある意味見習うべきか。
「ドラロンさん、これお返しするわ」
マジックミックスラケットを差し出すスーザン。
「元の場所に戻しておいてくれ」
「りょーかーい。クワーマン、これ倉庫に戻しておいて」
「わかっただべ」
スーザン、お前が倉庫へ持っていかんのかーい!
そしてクワーマン、スーザンのテゴ、召使状態やないかーい!
マジックミックスラケットを見たJBが小刻みに震えている。
「こ、こ、これは中華おたまではないですかー!」
おっ、何だこのサラ鍋ゲットの時のような展開は。




