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呪いのぬいぐるみ狩り

マリンちゃんとのおしゃれなカフェでの出会いと別れの次の日の朝。

「ようやく起きたか、レニー」

起きると宿泊先のモーニングサービスでガトーショコラをおいしそうに食べている彩姫がいた。

空いているお皿はすでに20皿近くある。

「このチョコレートとかいうもので作られたケーキは美味じゃのう」

ベイクドチーズケーキの次はガトーショコラですか。

「特に用事ということもないのじゃが、最近会っておらぬゆえ

 ザンスーやお主が寂しがっておるのではないかと思うてな」

最近見かけないから忘れていたが多分毎朝これが続くのだろう。

出来ればザンスーの方にたかっていただきたいのですが。

彩姫はライブのギャラを全部俺っちにくれるから最終的には

大幅なプラスでお金は返ってくるのだけど。

「お腹いっぱいじゃ」

満足気な顔の彩姫。いつもならここで

「ではまた明日の朝来るぞえ」

とか言いながら転移魔法で帰っていくのだが

「今日は暇じゃから夕方までレニー達と過ごしてやってもよいぞえ」

「別にいいけど?珍しいな、何かあったの?」

「いや、別にな~・・・」

ん?何かいつもとは違う歯切れが悪い反応だが突っ込んで聞くと

毒殺されるかもしれないからやめておこう。

「一緒に過ごすなら和服ではなく洋服に着替えてくれよ、目立つからさ」

「了解したぞえ」

彩姫はくるっと右に一回りすると和服は洋服に切り替わった。

髪の毛の色も黒髪から金髪に。おお~正直言って可愛い。

有名子供服のモデルとしても問題ないレベル、毒殺魔だけど。

「よーし!呪いのぬいぐるみを売って売って売りまくってやるわよ!」

二日酔いから復活した元気いっぱいのスーザンと合流する俺っちと彩姫。

スラム街の怪しい商業ギルドの会員となり呪いのぬいぐるみを

この街で売ることが可能となったがどうやって売るのかな?

「あれ?レニー、隣にいる金髪の可愛い子、どうしたの?

 まさか・・・誘拐?レニーあんたって奴はいつかやるとは思っていたけど!

 このチンカスやろうが!」

「彩姫だよ、あーやーひーめ」

「よう、ザンスー、元気かえ」

「あやや?マジ、あややなの?金髪に洋服、やーん可愛い~」

ぎゅ~とあややを抱きしめムツゴロウ状態で触りまくるザンスー。

少しあややが嫌がっているようにも感じるが気のせいか?

くるっと俺っち振り向くスーザン。

「で、レニー、昨日調べてくれたのよね?」

「何を?」

「呪いのぬいぐるみの売り方」

「調べてない」

数秒間の沈黙が俺っちとスーザンの間に流れる。

「今日は何もすることがないのよね~」

「ベルリンゲンにも教会はあるはずだろ。シスターとしての仕事をすればいいじゃん」

「だってあたし、今休業中だもーん」

道行く人を捕まえて質問するスーザン。

「ねえねえ、この街にサイボーグ競馬場はありませんか?」

まずい!この流れは

サイボーグ競馬場でお金を失う。

俺っちに泣きついてくる。

俺っちのお金が加速度的に減っていく。

簡単に予想できる近未来。

「ドラロンの工房へぬいぐるみを狩りに行こうぜ」

狩った後はドラロンの工房の2階のテラスからつながっている

JB中華飯店の厨房へ合言葉チームドラロンを使って転移して、

一旦マダラスカルへ戻ることにしよう。

そして今度はスーザン抜きで旅行をいちからやり直そう。

しかし、この腕輪は本当に便利だ。転移先が限定されるがマジでこの腕輪は役に立つ。

スペランカ洞窟での落盤事故から生還できたのは緑の腕輪の防御壁のおかげだったし

小太り貴族のガロンの護衛騎士らに囲まれたときに脱出できたのも

赤い腕輪の転移魔法のおかげだった。

ある意味ドラロンが作ったものの中では一番利用価値が高いものなのではなかろうか。

赤い腕輪を緑の腕輪の上に重ねてドラロンの工房へ転移する俺っち達。

いつものように玄関のベルを鳴らす俺っち。

「いらっしゃい、レニー、スーザン」

いつものように出迎えてくれるガンガン。

「あら珍しいですわね、彩姫様」

「暇だったから一緒に来てやったぞえ」

「狩りに来ましたあー!クワーマンはいますか」

元気よく応えるスーザン。

「クワーマンはマスターといっしょにDG4の調整中ですよ」

工房の右側の角を曲がって軽快な電子音とともに

DG4を運転してやってくるドラロン。

「おっ、レニー、いいところに来たな。見てくれよ。二人乗りにしてみたんだよ~」

後ろにはシュコー、シュコーという例の呼吸音を出しヘルメットとランドセル姿の

クワーマンがチョコンと乗っている。

「あれは何?」

「DG4。モデルはパンダオンダグリズリーらしいよ」

「何であんなに可愛くなっちゃったの?」

「さあ」

「まあいいわ。クワーマン、狩りを手伝ってよ」

「シュコー、シュコー、わかっただべ」

DG4からピョンと飛び降りるクワーマン。

ランドセルが重いのかバランスを崩し背中からひっくり返る。

スーザンはクワーマンに手を貸し起こしながら

「あんた、狩りに邪魔だから、それ外しなさいよ」

「シュコー、シュコー、わかっただべ」

言われるがままに素直にランドセルを外すクワーマン。

「カブトもよ」

カブトを脱いでランドセルの上に置くと

「さあ、狩りの時間よ」

とクワーマンを従え呪いのぬいぐるみ狩りに行くスーザン。

「わらわもそれに乗ってみたいぞえ」

金髪で洋服姿の彩姫を見たドラロンは

「お前誰だ?」

「彩姫ぞえ」

くるっと右周りして元の黒髪と和服の戻る彩姫。

「ど、ど、毒殺姫じゃねーか!」

もう一度くるりと右周りして金髪と洋服に変わる彩姫。

「ひゃ~たまげたね~全くわかんなかったぜ」

クワーマンが乗っていた後ろの席にぴょんと乗り込む彩姫。

「では出発と参りましょうぞ」

「別にいいけどよ~、湖にやったみたいに毒を撒き散らすんじゃねーぞ!」

さてと、俺っちはどうしようかな。

2階のテラスで休憩させてもらうとするか。

   ●

「網を持ってくるのを忘れちゃった。何か代わりになるものはないかしら」

クワーマンがドラゴンスナイパーを吹いた時にできた工房裏の崖に出来た横穴。

現在は倉庫として使われている場所に入って網になりそうなものを物色するスーザン。

たくさんの剣や盾、防具が無造作に置かれてある。

「何だろうこれ?」

中華おたまみたいなものを2本発掘する。

「この丸いところでヒョイっとすくえばいい感じかも」

   ●

2階のテラスの柵に頬杖をついてスーザンとクワーマンが

呪いのぬいぐるみを狩っている姿を見ている俺っち。

平和な光景だ。狩っているのは呪いのぬいぐるみだけどね。

スーザンが手に持っている2本の中華おたまみたいなものは何だろう。

クワーマンが追い込んだ呪いのぬいぐるみを中華おたまで

ヒョイっと巧みに救い上げカゴの中に投げ込む。

「へぇ~上手いもんだ」

草原の上をDG4に乗って移動しているドラロンと彩姫。

休日を一緒に遊んでいるおじいちゃんと孫にしかみえない。

ん?DG4の右側の草むらが10メートル四方ほどいきなり茶色になり枯れた。

ドラロンがDG4から降りて彩姫に向かって怒っている。

「あ~彩姫のやつ毒を撒きやがったな」

彩姫に対して怒っている姿はおじいちゃんが孫を叱っているようにしかみえない。

1時間後、カゴを持たされたクワーマンとスーザンが2階のテラスに戻ってきた。

「最近は数が少なくなってきたわね」

そりゃ~そうだろ、あれだけ狩れば。無尽蔵ってわけじゃないだろう。

「3体しか狩れなかったわ」

「今後は資源の枯渇を考えて売れ筋だけに絞って狩った方がいいんじゃないの?」

「別の狩場も開拓しなくっちゃ」

15センチくらいの大きさで色はピンク、熊っぽい

呪いのぬいぐるみがカゴから脱走しようとしている。

「クワーマン、逃げ出そうとしている奴がいるわ!叩き落して」

「わかっただべ」

クワーマンが平手でカゴの中へ叩き落とそうとしたが

ヒョイとかわし脱走するピンクの呪いのぬいぐるみ。

「逃がすか!」

スーザンが右手の中華おたまを使い呪いのぬいぐるみをひょいっと掬い上げる。

左手の中華おたまで上から蓋をする。左手の中華おたまを少し左側に回した瞬間、

カチっという音がして中華おたまの丸い部分が接着され外れなくなる。

「あれ?外れない」

ウィーンという音がして、中華おたまのおわん部分が光始める。

「何、何?何が起こってるの?」

カチっという音がして中華おたまが外れると、中から一回り大きくなった

呪いのぬいぐるみが飛び出してきた。

30センチ、45センチと身長がどんどん大きくなっている。

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