ガロンの末路
ベルリンゲンのファッションストリート。たくさんのブティックが立ち並ぶ。
高級そうな衣装が飾ってあるブティックからお店のロゴが入った
紙製の袋を手に持ち出てくるマリン。
「マリンたん、こんなところで会うなんて偶然だね」
マリンの目の前に偶然を装ったガロンが立っている。
「えっと・・・私はマリンではありません。失礼します」
通り過ぎようとするマリンの行く手を阻むガロン。
「何言ってるんだよ。僕ちんがマリンたんを間違えるわけないじゃないか」
「困るんですけど。ライブ会場の外でこういうことされると困るんです」
更に通り過ぎようとするマリンの腕を掴むガロン。
「痛い!放して」
「放さない!今日こそは僕ちんのお嫁さんになってもらうからね!」
マリンの周りをいつもの護衛の2人の騎士が取り囲む。
サイボーグ馬が牽引する馬車が横付けされる。
無理やりマリンを馬車に乗せる騎士達。
ガロンと2人の騎士、マリンを乗せた馬車はその場を離れていく。
「ちょっと待ってください。私をどこへ連れていくつもりなの?」
「心配しなくてもいいよ。このまま二人は教会で結婚式を挙げるのさ」
この様子を建物の上から監視している物体があった。ガーゴイルの彫刻である。
日中はこうやって彫刻として街中へ散らばっており、夜間は飛び回り
情報を収集しイシカワへ伝達しているのである。
教会へ到着する馬車。無理やり腕を引っ張りマリンを馬車の客車から
引っ張り出すガロン。
「やめてください!放してください!」
恐怖の表情のマリン。
「大丈夫、何も心配いらないよ。マリンたんは僕ちんが幸せにしてあげるから」
激しく抵抗するマリン。振り払った手がガロンの頬に当たる。
「痛いな~。高級貴族の僕ちんの顔を叩くとは無礼な」
突然冷たい表情になるガロン。
ガロンの顔を見たマリンは思うのである。
この表情・・・私を愛人にした、私を物扱いしたあの貴族の表情とそっくりだ。
「僕ちんは寛大な男だ。これくらは許してやる。おい、マリンたんを
教会の中へ連れていけ!」
客車から降りてきた二人の騎士がマリンの両腕を抱え教会の中へ入っていく。
「ったくぅ、手間を取らせよって。
いったいいくらお前につぎ込んでいると思っているのだ」
教会の中へ入っていくガロン。教会の祭壇には神父がスタンばっている。
神父の前には両脇を騎士に抱えられたマリンがいる。
ガロンは満足そうな顔をしながらマリンの右隣へやってくる。
「あなたは神を信じますか?」
お決まりの台詞を神父が言う。ガロンは
「信じます」
マリンの方へ顔を向ける神父。
「あなたは神を信じますか?」
「ちょっと待って!助けて、助けてえー!」
マリンの右手の薬指の指輪が光だす。
そして光の中からウルト○マンのように現れたのは
「マリンさん、ピンチのご様子ですね」
「イシカワさん!」
ゆっくりとガロンの前に降り立つイシカワ。
「困りましたねぇ~、こういうことをされては」
メガネの位置を整えながらガロンを睨みつけるイシカワ。
「お、お、お前は何者だ!」
「私はデスパラダイス7の創始者であり管理人の
オータム・イシカワと申します。魔族です」
「ま、ま、魔族ぅ。魔族のお前がデスパラの管理人だとぉ」
恐怖で声が震えているガロン。
イシカワの後ろには腰を抜かしてその場にへたり込んでいる神父。
手にはサークルクロスを握り締めている。
「お前たち、この魔族を討伐せよ!」
マリンの両脇を抱えている二人の騎士に命令を出すが様子がおかしい。
「無駄ですよ。そのお二人は私がすでに精神操作していますから」
二人の騎士はよだれを垂らし上を向き白めを剥いている。力がなくなった
騎士の腕から抜け出しイシカワの後ろへ隠れるマリン。
「こんなことをしてただで済むと思っているのか!」
四つんばいになって逃げようとしている神父の動きが止まる。
白めを剥いてよだれを垂らしている。
「僕ちんのパパはドルチェ国内でも伯爵の地位を持っている高級貴族だぞ!」
「私は力が弱い分、精神操作が得意でしてね」
「パパが黙っていないぞ!僕ちんは生まれた時からすでに高級貴族なのだ!
平民とは違うのだと、平民とは!」
「哀れな・・・親の地位が自分の地位、実力と勘違いしているのですね」
「マリンなど容姿が良いただの平民ではないか!
僕ちんが嫁にしてやるというだけでもありがたい事なのだぞ!」
「やれやれ・・・あなたは自分で努力をすることを学ぶべきですねぇ」
そう言うとイシカワはペットボトルのおまけに付いているくらいの大きさの
ガーゴイルのフィギュアが付いた画鋲みたいなものを取り出した。
「下積みという苦労をガーゴイルの姿になって体験しなさい。
あなたが本当に人の気持ちを理解できる素晴らしい人物になったとき
ヒューマンに戻ることを私が許可したしましょう。
それまでは私の下で働きなさい」
そう言うとイシカワは注射を刺すようにガーゴイルのフィギュアを
ガロンの左肩に突き刺した。みるみるうちにぽっちゃり体型のガーゴイルへと
変化するガロン。
「現時点をもってあなたはガロンではなく、ただのガーゴイルです。
アイドル好きなあなたならデスパラダイスにふさわしい可愛い女の子を
沢山探してきてくれることでしょう。期待してますよ」
その場から飛び去っていくガロン、もといぽっちゃり体型のガーゴイル。
ガロンがガーゴイルとなっていく様を近くで見ていたマリンは
イシカワを恐怖の表情で見ている。
指をパチンと鳴らし
「さて、マリンさんの記憶も操作しておかねばなりませんね」
白めを剥きよだれを垂らすマリン。
「マリンさんは今日の恐怖体験を記憶から消去と。
ガロンの存在を関係者から消去と」
転移魔法を展開し、マリンとイシカワだけ転移する。
精神操作が解けた二人の騎士、神父は我に帰る。二人の騎士のうち一人が
「ここはどこだ?」
四つんばいになっている神父を見たもう一人の騎士は
「何で神父は四つんばいになってるのだ?」
神父も困惑した表情で
「さあ~・・・わかりません」
●
転移魔法でドラロンのところから元の場所へ戻ってきた俺っち。
今日も色々ございましたっと。疲れたね。
「今日はもう宿屋へ帰って休むことにしよう」
転移魔法でライブ会場の管理者室へ転移したイシカワとマリン。
「あれ?イシカワさん、私・・・何か・・・」
「もうすぐライブの時間ですよ。準備してください」
「はい、イシカワさん。失礼します」
お辞儀をして管理人室から出ていくマリン。
「7人の女の子の管理は大変ですねぇ。
人数が増えてきたら私一人では対応しきれなくなってくるでしょう。
私の下に何名か管理人を育てておかねばならなりませんね」
コンコンとノックをする音がする。
「入りたまえ」
ドアを開けて入ってきたのは
「やあ、イシワカ。ちょっとお願いがあって来たのだよ」
驚き困惑するイシカワ。
「88様! どうしてここへ」




