メルティピッグの肉販売
ドルチェ国の首都ベルリンゲンのとある商業ギルドの中。
「メルティピッグの肉を買ってくれるってところはここかい?」
モモのすけがギルドの受付のドワーフの男に話し掛ける。
「本物だろうな?」
「もちろん! で、どうなんだ? 買ってくれるのかくれないのか?」
「キロ純金貨100枚(一千万円)で買い取ろう」
「おいおい、相場はキロ純金貨500枚(5千万円)って聞いてるぜ」
「メルティピッグの肉絡みで殺人や強盗が増えたんでな。
国から高額で買い取らないようギルドにお達しがあったんだよ」
「もっと高値で買い取ってくれるとこはねーのかよ?」
「あることにはあるが・・・危険だぞ」
「構わん、教えてくれ」
中世のレンガ作りの建て物と細い路地。ガラの悪そうな住民達。
そう、ここはスラム街である。そして暗がりの中の妖しい商業ギルド。
モモのすけがカウンターの男性に話し掛ける。
「メルティピッグの肉3キロだ。いくらで買う?」
「キロ純金貨100枚だ」
「おいおい、ここは純金貨500枚で買い取ってると聞いてるぜ」
「どこからそんな噂を聞いたのか知らねーが純銀貨100枚だ」
「じゃあいいや。残念だが他をあたらせてもらうわ」
店を出て行くモモのすけをカウンターの奥の部屋から鋭い目で見送るギルマス。
「田舎者の世間知らずが。あのまま純金貨100枚で手をうっていればよいものを」
ギルマスの背後には強面の男どもが数名。
「後を付けろ。そして殺してでも肉を奪ってこい」
ベルリンゲンをブラ散歩の俺っち。
今気がついたのだが街の至る所に若くて綺麗な女性が描かれたポスターが飾ってある。
プリンセス ソフィアと書かれてある。
そうか、彼女がこの国の王女ソフィアだったのか。
俺っちの地元サラダワンではポスターすら飾られていなかった。
さすが首都だがそれにしてもポスターの掲示が多い。
果物売りの露店に立ち寄りリンゴを1個買いポスターの件を店主に聞いてみる。
「何だ兄ちゃん、知らねーのか。
1週間後にソフィア様の誕生祝賀祭が開催されるのよ」
「へえ~。何歳になるんっすか?」
「16才だよ。とても綺麗に成長なさったもんだ。お人形さんみてーだよ」
ここで少し俺っちが転生後に住んでいる国、ドルチェ国について話しておこう。
ドルチェ国は現在、獅子王リッキーことライオネス・リッキー国王が統治している。
その一人娘が王女のソフィア・リッキーである。
リッキー王は30年前に前国王の圧政からドルチェ国を解放した英雄である。
前国王は圧倒的な軍事力を盾に周辺諸国を威圧する
オソロシアン共和国へ亡命後、ドルチェ国奪還を謀ったが失敗。
その時にリッキー王が一撃で数千もの敵兵を返り討ちしたらしい。
これ以降オソロシアンおよび周辺諸国はドルチェ国に手を出すことがなくなった。
王の偉業と平和な統治の讃辞、その風貌と強さから
国民は畏怖と尊敬の念でリッキー王を獅子王と呼ぶようになったのだ。
「そんなに綺麗な人なら近くで見てみたいものっすね」
「無理無理、俺なんか米粒くらいの大きさくらいでしか見たことねーよ」
マリンちゃんとどっちか綺麗なのだろう?
綺麗さで言えば88が上かな?
やっぱ真央ちゃんにはかなわないよな~。
スーザンもまあまあ可愛いけど中身がな~。
スーザン今頃何してるかな。
数メートル先に商業ギルドがある。案外あそこにいたりして。
商業ギルド内。
「何で商業ギルドの登録ができないのよ!」
「売り物がちょっと~」
困り顔の商業ギルドの受付嬢。
「シスターが呪いのぬいぐるみを売っちゃいけないってう法律でもあるわけ?」
「法律があるわけではございませんが
当商業ギルドでの取扱い商品ではありませんので」
「じゃあ登録してくれるギルドは無いの?」
「あることにはありますが・・・危険ですよ」
「構わないわ、教えてちょうだい」
商業ギルドから出てくるスーザン。
「あっ、スーザン」
「あっ、レニー」
今度会う時はライブでとか言ってたけど腐れ縁なのか半日で再会してしまった。
「調度いいところにいたわね。あんたどうせ暇でしょ。ちょっと付き合いなさいよ」
石畳の狭い路地の暗がりにある場所。
メインストリートから離れた場所、そうここはスラム街。
「商業ギルドの登録がしたいのだけど」
「シスター、あんたが商業ギルドに登録だって?」
対応しているのは、先ほどモモのすけがメルティピッグの肉を
売りに来ていたカウンターの男である。
「で、取り扱う商品は?」
「ミッキー・マウ・ストーンの呪いのぬいぐるみよ」
「はーっはっは!シスターが呪いのぬいぐるみを売るだって?冗談はよしてくれ」
「はーっはっは!シスターが呪いのぬいぐるみを売るんですぅ!冗談じゃないですぅ」
カウンターの上にドーンとぬいぐるみを1体叩き置くスーザン。男の顔色が変わる。
「本気かい?」
「本気も本気よ」
「登録料金貨20枚(20万円)だ」
「ちょっと~何でそんなに高いのよ!普通登録料は純銀貨1枚(千円)程度でしょ!」
「商品が商品だからな。扱うギルドも少ない。
他所で登録を断られまくったからここへ来たんだろ?」
「うっ、なんでそれを」
「嫌ならいいんだぜ~。さあ、どうする?」
強面の男どもが数名男の後ろにやってきてプレッシャーを掛けてくる。
「こいつが払います!」
俺っちを指さすスーザン。またこのパターンかよ。
「払うわけねーだろ!」
「じゃあ交渉決裂だな」
「そうね、じゃあ帰るわ」
店を出ようとすると強面の男どもが俺っちとスーザンを取り囲む。
「手間掛けさせられた分の駄賃としてお前さんが持ってる
呪いのぬいぐるみを全部おいて帰んな」
「ここの商業ギルドじゃこういう強盗まがいなこともするのかしら?」
「シスターさんと違ってこっちは慈善事業やってるわけじゃねーんでね」
ちっくしょー、スーザンのやつ俺っちをこんな危ないことに巻き込みやがって。
「シスターの私に手を出すと神の天罰が下るわよ」
「生憎、俺たちゃ神なんてものを信じていないんでさ~」
俺っちは小声でスーザンにささやく。
「スーザン、転移するぞ」
右手にはめている赤い腕輪を外し左腕の緑の腕輪に重ねようとしたとき
ガチャっと店の入口のドアが開く。
「ただいま~ってな」
モモのすけが入ってくる。
「あれ?取り込み中だった?」
「あっ!あんたはスペランカ洞窟のときに会ったモモのすけ」
「おっ!お前さんは・・・風神子ちゃんの連れの吟遊詩人のジェームス」
「レニーだよ!」
「ごめん、俺って女の子の名前しか覚えられない不治の病なのよ」
男が驚いた表情をしている。
「お前、どうして・・・っち、しくじったか」
30分前。
スラム街の行き止まりの暗い路地裏。
20人ほどの男に取り囲まれているモモのすけ。
「その先は行き止まりだ。逃げられねーぞ。大人しく肉をよこしな」
モモのすけは顔を下向きにして左右に振りながらやれやれのポーズを取り
「馬鹿な奴らだ。ここに誘い込まれたとも知らずに。
モンモーン、ワンセブーン、あとサゴチッチー」
建物の上から如意棒が延びてきて一人の頭を直撃、その場に倒れる男。
地面に突き刺さった如意棒をつたってスルスル|~と降りてくるモンモン。
「まず一人キー」
如意棒は短くなってバトンくらいの長さになる。
「どすこーい」
右手にサゴチッチを抱えたワンセブンが男達の背後に飛び降りてくる。
「あとサゴチッチーって、おまけみたいに言うなカッパ!」
「だって水辺じゃないサゴチッチってただのゆるキャラじゃん」
「ゆるキャラって言うなカッパ!」
水分が抜けてサン○オキャラばりの可愛い状態でプンプン怒っている
サゴチッチだが可愛いゆるキャラにしか見えない。
「クッ!なめんな!こっちは倍以上の数がいるんだぞ」
「お前らごときチンピラ、モンモンごときで十分だ」
「モンモンごときって言うなキー!パーティー内で最弱みたいに聞こえるキー」
「やっちまえ!」
数分後、号令を掛けた男の尻から如意棒を引っこ抜くモンモン。男は失神している。
向こう側では調度最後の一人を
ワンセブンが相撲の張り手で倒し終わったところである。
「よし! じゃあ、俺はもう一度、あの店へ肉の交渉に行ってくるとするか」
●
「また会うとは奇遇だな、えっと・・・アントニオ」
「レニーだっつーの。あんた、わざと間違えてるだろ!」
「ところでそちらの可愛いシスターさんは?」
「スーザンですぅ~20(ハタチ)でーっす!」
モモのすけの2倍はあろうかという巨漢の男が
隙を突いて右ストレートでモモのすけに襲い掛かる。
モモのすけは右半身になって避けながら左手で男の右手首を持ち
男の足元目掛けて捻りながらクルリと回転させる。
一回転させられた男はそのままの勢いでドアの外へと吹っ飛んでいく。
地面に背中から落ちた男は痛みのあまりに失神してしまった。
「弱い、弱すぎますわ~」
カウンターの男はカウンターの下に隠してあったボウガンを
手探りで探すが見当たらない。
モモのすけの元へ身長50センチくらいの人型の白い物体がボウガンを持って歩いていく。
スーザンと俺っちを取り囲んでいた男たちがその場に崩れ落ちる。
首筋には白い紙で作られた蜂が針で何かを注入していた。
「心配すんな、痺れ薬さ」
「お前、いったい何者だ・・・」
スペランカ洞窟の時は風神子と雷神子が大暴れしたためわからなかったが、
この手際と巨漢の男を投げ飛ばした技、モモのすけは強い。
「さてと、再度、肉の買取価格についてだが、
キロ純金貨千枚(1億円)でお願いしやーっす!」
「2倍じゃねーか!汚ねーぞ!」
「襲っておいて、なーにが汚ねーぞ、だ」
モモのすけは顔を少しクイっと上げ、左手を前に出し人差し指で
こっち来い的にクイックイッっと動かしながら
「そこの奥の部屋で様子を伺ってやがる野郎はギルマスじゃねーのかい?
出てきやがれ」
ゆっくりと歩いてくる男。
「モモのすけ、話は終わったかキー」
「腹が空いたワン。さっさと終わらせるワン」
「海鮮料理食べに行こうカッパ」
ギルドに入ってきたメンバーを見たギルマスは驚愕する。
猿獣人、犬獣人、そしてわけのわからぬ緑色の何か。そして侍。
「お前たち・・・もしかしてピチ4(フォー)か」
「ご名答~」
少し前かがみになりカウンター越しにギルマスに一言うモモのすけ。
「あのまま純金貨500枚で手をうっておけばよかったな」
モモのすけの横へ行きギルマスに一言うスーザン。
「ちょっとあんた商業ギルドの登録、無料でやんなさいよ」
「そんな無料だなんて・・それにシスターには関係ないでしょう」
困った顔のギルマス。
「この人がだまっちゃいないわよ」
モモのすけを指差すスーザン。
少しびっくりした顔のモモのすけだったが
「そういう事! 頼んだぜ、ギルマスさんよ」
「ほら見なさい。神の天罰が下ったでしょ」
スカッとスーザン。
スラム街を抜けメインストリートへ出てきた俺っちとスーザン。
そしてピチ4の面々達。
「やったぁ!商業ギルドのメンバーになったわ!」
メンバーカードを見ながら喜ぶスーザン。
「ありがとう、モモのすけさん」
「いいってことよ。綺麗な女性のお願いを断ることはしないのが俺の信条さ」
マジ、スーザンって頼みごとするときのタイミングが上手いよな~。神がかってる。
「ところでモモのすけさん達って有名なパーティだったんっすね」
「まあな~。冒険者の中じゃ結構名が通ってるかな。照れるぜ」
「何、この生き物可愛い~」
スーザンがサゴチッチを抱え上げ高い高い状態にしている。
「よせ! 降ろすカッパ。水辺の俺は怖いんだからな!」
「やーん、怒った顔がマジ可愛い」
サゴチッチを胸でぎゅーっと抱きしめている。
「痛たた、何かあたってるカッパ!」
あたっているのはスーザンの豊満なバストでは?
男としてうらやましいぜ、サゴチッチ。
「じゃあ、俺達は用事があるから。また会おうゴンザレス」
「レニーだよ!って、まあいいか。また会いましょうっす」
「ばいばーい、サゴチッチ~」
ワンセブンの右肩の上に乗っているサゴチッチの額には
サークルクロスの跡がクッキリついている。
「痛ててて。あの女、思いっきり抱きしめやガッパ」
手を振りながら去って行くピチ4。
ママーあの緑のお人形さん買ってぇ~と子供から言われているサゴチッチ。
「人形じゃねぇ!こっち見んカッパ!」
「まあまあサゴチッチ落ち着けって。お母さん、金貨40枚でどうでしょうか?」
「売るなカッパ!」
「モモのすけキー・・・」
「最低だワン」
スペランカ洞窟で出会ったときは女好きのチャラい野郎だと思ったけど
案外いい人なのかもしれないな、モモのすけって。
「ところでレニー、あんたが手に持ってる、その団扇はどうしたのよ?」
「ああ、買ったんだよ、純銀貨5枚で10枚」
「純銀貨5枚10枚って・・・金貨5枚! ばっかじゃないの」
「俺っちもそう思うけど仕方なかったのさ」
「その団扇に描かれている女の人は何なの?」
「デスパラダイス7というアイドルユニットの子で、マリンちゃん。
実は12才の時に分かれた幼馴染なんだよね~」
「ふ~ん、幼馴染・・・綺麗な子ね~」
ちょっとだけ見たことがない真顔のスーザン。
「で、アイドルユニットって何?」
歩きながらスーザンにアイドルユニットのこと、マリンちゃんとのことを話す。
そう言えばベルリンゲンに入ってから飯を食べてなかったな。
宿屋を探す前に飯でも食うか。
「スーザン、宿屋は?」
「まだよ。あんたは?」
「とりま飯をおごるよ。宿屋はそれから探そうぜ」
「あら、レニーにしては優しいじゃない」
「何言ってんだよ。ここまで来るのに散々金を払わせてたくせに。
シスターの私からお金を取る気!とか言っていつもたかるくせに」
「よーしっ!今夜はレニーのおごりだ。飲むぞーっ!」
「おごるのは飯だけだ! 酒は自分で払えよな!」
●
鉢巻にピンクの法被、手には魔力で光るペンライトを持った集団。
会場の外はグッズ販売の露店が多数。
数量限定で等身大抱き枕が
1個純金貨20枚(二百万円)で売られているが完売の札が。
ライブ会場は熱気でざわついている。
突然、暗くなるライブ会場。そして始まるデスパラのライブ。
ステージ裏ではイシカワが魔蓄管に貯まる魔力を見ながらニヤリと笑う。
「なるほど、これは良いですね。結構な速さで充蓄しています」
魔蓄管の魔力の蓄積条件は知性を持った生物の恐怖や悲しみなどの
マイナスの感情だけだと思い込んでいたがプラスの感情でも蓄魔されるのですね。
「デスパラの人数を増やし、観客動員数も増やしていく必要がありますね」
マリンの運命を大きく変えたデスパラダイス7は
この後、人数をどんどん増やしていきながら成長していく。
手下らしき魔族がイシカワの耳元に報告する。
「サラダワンに・・・楽曲を提供できる男が・・・
なるほど、そいつは使えそうですね」
観客席からマリンを凝視する小太り貴族のガロン。
「今、マリンたんと目が合った!」
頬を赤らめ嬉しそうにしている。
「マリンたんは僕だけのものだ。誰にも渡さない!」
握手会の会場。
「いつもありがとう」
ガロンに笑顔の対応のマリン。
「君のためなら何度でも会いにくるよ」
ぎゅーっと力を込めて握手するガロン。
「痛い」
「あっ、ごめん」
「はい、次の人へ代わってください」
マリンの背後にいるボディーガードの鎧を着た男から交代を促されるガロン。
列の最後尾へと並び直すガロン。
その様子を会場の隅から観察しているイシカワ。
人間の姿に変化させた手下を呼び
「あの小太り貴族、見張っておけ。マリンに何かするかもしれん」
さて、ここでデスパラダイス7のメンバーの紹介をしておこう。
1.ジャスミン 鬼族 リーダー
2.シャロン エルフ 副リーダー
3.ミャーコ 猫耳族
4.ラビタン 兎耳族
5.ドルーチャ ドワーフ
6.チャスレ ホビット
7.マリン ヒューマン
以上、デスデスデスデス、です7、フォっ!




