スで区切るなウで区切れ
「来るな88(はちはち)・・・来ないでくれ・・・
やめろ、やめてくれええええ!」
たくさんの大小様々なぬいぐるみがある部屋。
ロッキンチェアに座って悪夢にうなされている人物がいる。
キリスト教の司祭が着る祭服のような白い衣装。
椅子の手すりに置いてある手は灰色でネズミのような手である。
上半身は影になっていてよくわからない。
コンコン、ドアをノックする音がする。
「入れ」
ドアを開けて入ってきたのは一人のゴブリン。
「ミッキー・マウス・トーン様、お茶の準備ができました」
「貴様、いつも言っているだろう、(ス)で区切るな(ウ)で区切れと」
「はい、ミッキー・マウス・トーン様」
椅子の手すりに置いてある手がグーになり小刻みに震えている。
「だから、(ス)で区切るな(ウ)で区切れ」
「はい、ミッキー・マウス・トーン様」
「貴~様~ぁ~わざと間違えておるだろう」
「そんなことはありません!ミッキー・マウス・トーン様」
ミッキーと呼ばれる男はロッキンチェアから立ち上がると、
壁の棚に飾ってあるたくさんのぬいぐるみの中から20センチくらいの
緑色の小鬼のぬいぐるみを左手に取った。
そして右手でゴブリンの頭を鷲づかみにした。
「贄となれ」
ゴブリンは掃除機に吸い込まれるように右手の中へ消えていく。
左手に持っていたぬいぐるみが手足をバタバタと動かし始めた。
「私の名前はミッキー・マウ・ストーンだ、この愚か者めが」
区切るところを間違えるとデ○ズニーとかいう組織の怖い人達に
すんげぇ怒られるかもしれないもんね。
進捗を報告せよ、と書かれたプラカードを小鬼のぬいぐるみに持たせると
床の上に置き
「ドラロンのところへ行け」
と告げた。ぬいぐるみはプラカードを持ちどこかへ歩いていく。
ふぅ~と深いため息をつきながらミッキーはロッキンチェアへ座る。
「何度召集しても全然来ねーんだよな~魔王軍の幹部達」
そしてゆっくりとロッキンチェアを揺らしながらぼやくのである。
「ほんと我がままなんだよな~」