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クワーマン、飛ぶ

青い空に白い雲。キーンという音。緑色の何かが飛行している。

「シュコー、シュコー、ちょっと時間がかかってしまっただべ」

ドラロンの工房の2階のテラスにはJB中華飯店と書かれたドアが存在する。

クワーマンのクシャミとサラ鍋の炎の奇跡の出会いにより焼失してしまった

JB中華飯店の再建の際、大口の出資金を出したドラロンたっての希望により

現在、このドアとJB中華飯店の調理場が直通しているのである。

お金持ちが自家用ジェットや自家用ヘリコプターを使い

北海道や九州にラーメンだけを食べに行き、食べ終わったら

自家用ジェットか自家用ヘリコプターを使って帰る、みたいなものだろうか。

おかげでテイクアウトではなく出来立てホヤホヤの

チャーハンが食べれるようになった。

カフェテラスのようなドラロンの2階のテラスで

JBの激うまチャーハンを食べれるなんてなんと贅沢な。

「そういえばクワーマンの姿が見当たらないっすけど」

「クワーマンならホビットの村へ野菜を買い付けに行ってもらっている」

飛行機が飛んでいるようなキーンという空気を裂くような音が近づいてくる。

「おっ、帰ってきたみたいだな」

緑色の何かが2階のテラスに降りてくる。

飛行機の翼がついたランドセルみたいなものを背負っている。

ランドセルのフタ?カブセというらしい部分が地面と平行になっている。

カブセから左右に飛行機の翼が伸びており、

翼の中央には丸く平べったいタービンが付いてある。

このタービンが回転して吐き出す風を利用することでゆっくりと着陸できたようだ。

着陸すると二つの翼は伸ばしたアンテナを短くするようにカブセに収納された。

カブセはランドセル本体と重なり、カチャという音がする。

ランドセルに教科書やノートを入れカブセを閉じ錠前でカチャと固定という動きかな。

シュコー、シュコーという呼吸音を出しながら近づいてくる。

スターウォーズのダースベーダーの形状のヘルメット。

ガンダムのザクのような四角い口から管が左右に1本ずつ伸び

背中のランドセルとつながっている。

「シュコー、シュコー、ドラロンさん、野菜持って帰ってきただべ」

手にはカゴいっぱいの野菜を持っている。

「だべ? だべって、もしかして、クワーマンかよ!」

「シュコー、シュコー、そうだべ、レニー」

野菜の入ったカゴをガンガンに手渡すクワーマン。

「ご苦労様、クワーマン」

カゴを持ってテラスのドアを開け1階へ降りていくガンガン。

「ドラロンさんって、野菜好きなの?」

「好きってほどではないが食べるぜ。でもほとんどはJBの店に卸している」

ドラロン曰く、これはクワーマンのために用意した仕事らしい。

ホビットの村から野菜を買うことで彼らは現金収入を得る。

JBの店も産地直送の新鮮な野菜が手に入る。

そしてそれを仲介するクワーマンにも仲介料が入る。

いわゆるWIN-WINの関係ってやつだ。

こういう地域貢献というか物流の仕組みを考えるドラロンって本当に魔族なのか?

と思う時がある。

「で、何っすか、このクワーマンの格好は?」

「シュコー、シュコー、はっ、はっ・・・ハックション!」

ホビットの村では屋根を吹き飛ばし、JBの店では壁を壊した

ドラゴン級の肺活量から繰り出されるクシャミがクワーマンの口から発射される。

ザクのような四角い口の中のタービンがギュイイイイイイイインと勢いよく回転する。

ザクのような四角い口・・・言いにくいからザクくちが

白く光り何かのエネルギーに変換する。

変換されたエネルギーはザクくちの左右の管を通り

背中にあるランドセルに蓄積された。

「おお、ナイスタイミングなクシャミだ。

こいつはな、クワーマンの肺活量をエネルギーに変換するためのものよ。

クワーマン、今度は思いっきり息を吸い込んで吐き出してみてくれ」

「シュコー、シュコー、わかっただべ」

思いっきり息を吸い込み、息を吐き出すクワーマン。

ザクくちのタービンが音を立てて回り管を通って

エネルギーがランドセルに蓄積される。

「シュコー、シュコー、もう一回、村へ野菜を取りにいかねばならないだべ」

なんということでしょう~説明のための都合の良いタイミング。

テラスの離陸できそうな位置まで移動し

ザクくち口の上にある丸いボタンを押すクワーマン。

カチャっという音がして錠前が解除されるとカブセが地面と平行の辺りまで開かれる。

カブセに収納されていた翼がアンテナを伸ばすように出てくる。

翼の中央にある丸いタービンが高速に回りだす。

タービンから吐き出される風がクワーマンをゆっくりと上空へと運ぶ。

結構な高さまで上昇すると、ランドセル本体にある大きなタービンが

高速回転し始め前方へと動き出す。

動き出しながらカブセがランドセル本体に戻りカチャっとハマリ飛行体勢に入る。

そしてクワーマンは小型飛行機のように飛んでいった。

「すげぇ・・・どうなってんっすかあれ」

クワーマン、ドラロンのところで使える男になってきているじゃないか。

「楽しそう~。ドラロンさん、あたしにも作ってよ」

ん?飛んでいるクワーマンから煙のようなものが出ている。

あっ、パラシュートが出てきた。

「ガンガーン、ランドセルが故障したみたいだ。クワーマンを回収しに行ってくれ」

「かしこまりました、マスター」

「残念だがまだ試作段階でな。ああやって故障することがあんだよ」

それを見たスーザンは

「やっぱりまだいらなーい」

「DG3の魔力供給回路の改良をしているときに思いついたのよ。

 魔鉱石を使うと魔力が暴走したりと安定しないこともあってな。

 今のところクワーマンの肺活量を活かしてタービンを回す仕組みにしている。

 改良をかさねれば将来スーザンやレニーでも自由に空を飛べるようになるはずだ」

あれはこの世界の移動手段を大きく変える。ある意味、産業革命レベルだ。

「あれが作れるのなら自動車も作れるんじゃ・・・」

「ん?何だその自動車ってのは?レニー、詳しく教えろ」

この何気なく発した自動車の発言が

今後のDGシリーズに大きな影響を与え、更にサイボーグ馬に代わる

流通を大きく変える移動手段になるのであるが、その話はまたそのときにでも。

「ドラロン、スーザンの件で力になってくれてありがとう」

「俺は今回は何もしてねーが、何かあったらいつでも来い」

「さて、俺っち達も帰るか」

「ちょっと待ってレニー」

そういうとスーザンは45リットルのゴミ袋くらいの大きさの麻袋を持ってきた。

「新たしいのも仕入れたし、次の町で売りさばくわよ!」

あんな恐ろしい目にあったっていうのに立ち直りが早いね~。

まあ、それがスーザンの良い所なんだろうな。

   ●

JBは悩んでいた。

「これで何本目だろう」

先端が溶けてしまった中華おたまを見ながらため息をつくJB。

「サラ鍋の火力に耐える中華おたまはないのだろうか」

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