ドグマ 対 風神子、雷神子
「つれないぜお二人さん、ベイベェー」
左側から風神子が突き、右側から雷神子が蹴りを同時に仕掛ける。
槍の上の方を持って逆さまになり避けるドグマ。逆さまから戻る際、大股を広げ
ポールダンスをしているような感じで槍の柄を軸にクルクルと回りながら
突きと蹴りを同時に跳ね返す。
風神子と雷神子はバックステップを踏み、ある程度距離を取ったと同時に
ドグマ目掛けて突っ込んでくる。
スターライトランスを真横にして風神子と雷神子の対角線上に配置するドグマ。
槍が邪魔をして攻撃が出来ず、またバックステップで距離を置く二人。
「なかなかやりますわね」
「動きを読まれてるな」
「二人共同じタイミングで攻撃してくるからわかりやすいぜ、ベイベェー」
●
ガンガンに連れられ工房に入ってくる俺っちとスーザン、そして彩姫と魔琴ちゃん。
「おっ、帰ってきたな」
「あれ?88は?」
「用事があるって言って帰ったぜ」
「では、わらわも帰るとするぞえ」
「ありがとう彩姫。そして魔琴ちゃん」
「グワシグワシ」
「ありがとう、あやや~」
「ガンガン、毒を盛らないか監視しながら彩姫達を玄関まで送ってやってくれ」
「かしこまりました、マスター」
「ところで風神子と雷神子はどうした?」
「彼女達は現在、ドグマと交戦中っす」
●
「今度はこっちから行くぜ、ベイベェー」
雷神子目掛けてスターライトランスを投げる、と同時に風神子へダッシュする。
スターライトランスを避け上空へ飛び上がる雷神子。風神子の腰に手を回すドグマ。
口から空気弾を噴出す風神子。
この空気弾は拳銃の弾くらいの威力があるが
ドグマはあっさりと右手の平で空気弾を跳ね除けた。
上空からドグマの頭目掛けて雷神子が踵落としを振り下ろす。
雷神子の踵がドグマの脳天を捉えた!・・・かに思えたが
ふくろうが頭を動かすようにグルリと頭を回転させ避けるドグマ。
体を風にしてドグマの手から逃げる風神子。
雷神子の攻撃を避けてスターライトランスを取りに行くドグマ。
雷神子の右横に風化から戻った風神子が実体化する。
「俺の踵落としは完璧なタイミングだったはずたが頭が変な角度で曲がりやがった」
「ガンガンの攻撃を避けたと聞いていましたが想像以上ですわね」
「ハニー達、新婚旅行はどこへ行くか決まったかい、ベイベェー」
風「行きませんわよ」雷「行かねーから」
●
スーザンと書かれたゴミ箱の中身を覗き込むスーザン。
「5体ぬいぐるみが入ってる。ありがとう、ドラロンさん」
「いいってことよって言うか、誘拐されたわりには元気だな」
「ふふ、それが私の取柄なの~」
「ちょっと気になることがあるんっすけど聞いていいっすか?」
「何だレニー」
「ドグマが持っているスターライトランス、
やっぱりすげぇ武器仕込んでるんっすか?」
「ああ、あれはな」
●
「もみ上げが気持ち悪いですわ」
「リーゼントが気持ち悪いんだよ」
「仕方ない、スターライトランスの真の力を開放しちゃうぜ、ベイベェー」
そう言うとドグマはその場でエルビス・プレスリーのように踊りだし
独特のステップを踏み始めた。
「スターライト、開放!」
辺りを暗闇が包む。目の前にはラスベガスにあるような
派手なネオン輝くステージが現れる。
黒服のオールバックでちょび髭の男性がマイクを持って
「レディース&ジェントルマン!
今宵はザ・ドグマショーへお越しいただき誠に
まーこーとーにあーりがとぅ~ございまーっしゅ!」
「何だありゃ~」
冷めた目をしている風神子と雷神子。
「それでは~イッツア・ショーーーーーーーーターーーーーーイム!」
ステージの上にキラキラに輝く台形の階段が出現する。
階段の両側にはサンバカーニバルのダンサーの衣装を着た
女性のうさぎ獣人がずらりと並んでいる。
ドラムロールが鳴り数個のスポットライトがステージ内を動き回る。
ドラムロールが終了と同時にスポットライトは階段上の登場口を照らし出す。
「マイディスティニ、これは決まっていたのさ」
登場口から現れたドグマは歌いながらゆっくりと階段を下りてくる。
「マイシンパシー、パズルのピースが埋まる瞬間ってやつさ」
左側を向きウィンクする。左側のうさぎ獣人達が全員ウィンクに反応して倒れ込む。
「燃え燃えキュンと言ってくれ」
右側を向きウィンクする。右側のうさぎ獣人達が全員ウィンクに反応して倒れ込む。
「今度の週末空いてるかい?」
階段を下りきりステージの前へ。
「二人の出会いはビッグバン」
逆さまになったスターライトランスがステージの中央前方からウィーンと
マイクスタンドのようにゆっくりと出現する。
「夜空に輝くあの星を君に捧げるマイハニー」
ロカビリーロックンロールのマイクスタンドパフォーマンスっていうのかな?
逆さまのスターライトランスを手に取り激しいステップを踏み始めると
倒れていたうさぎ獣人たちが立ち上がり一斉に階段から降りてくる。
階段は消え、サンバカーニバルの衣装はロカビリーのレディースの衣装に変わっている。
ドグマの後ろで踊り出すうさぎ獣人達。
ビル・ヘイリー&ヒズ・コメッツの
ロック・アラウンド・ザ・クロックのようなアップテンポな曲が流れている。
「あれは何かしら・・・雷神子」
「さあ・・・わかんねー・・・、風神子」
●
「あれはな、幻覚を見せるだけだ」
「幻覚を見せるだけ?」
「元々はチャーマネントなんとかっていう超リッチマンの
エルフの貴族からの依頼で作ったのよ。
自分の魅力を女性達へ最大限にして伝えたい、とかでよ。
スタンドマイクにしてくれと言われたんだが、俺様がサービスで槍にしたら、
槍はいらねーとか言いやがったんで売らなかったのよ」
サービスで槍にしたって・・・そやぁ槍はいらねーって言うだろ。
「で、どこで噂を聞きつけたかわなんねーんだけど
魔王親衛教会があの槍を買いたいっていうから格安の
純金貨500枚(5000万円)で売ってやったのさ。
本人の世界観というか願望というか。
スターライトを浴びてる素敵な自分を演出して見せるというか」
「本当に幻覚を相手に見せるだけ?
街や山を破壊するような兵器ちっくなものは?」
「実装してねーな」
「ドラロンにしては珍しいっすね」
「沢山作ったらあんな珍品も少しは混ざら~」
ドグマのスター気分な世界観って・・・見せられたら脳が破壊されそうだな。
●
「どうだいハニー達、俺ってかっこいいだろう、ベイベェー」
顔をピクピク引きつかせながら
「そろそろ殺しましょうか、雷神子」
やべぇ、風神子が切れかかってる。雷神子は考える。
(冷静に考えろ雷神子)
あいつは俺達姉妹の攻撃を何度もかわしている。
ここは二人の奥義で決着を図る。それでもだめなら姉様を呼ぶしかねぇ。
「奥義を放つわよ、雷神子。それでダメなら姉様を呼ぶわ」
「おっ、今同じことを考えてたぜ、風神子」
風神子と雷神子は空中へ散開する。
風神子は目を閉じ、OKサインの右手を下向きにして下、
OKサインの左手を上向きで上にして胸の前に構える。
わっかの部分の親指が触れている。右足を4の字に曲げ静かに開眼する。
雷神子は目を閉じ、OKサインの右手を上向きにして上、
OKサインの左手を下向きで下にして胸の前に構える。
わっかの部分の親指が触れている。左足を4の字に曲げ静かに開眼する。
「おいおい、まだショーの途中だぜ、ベイベェー」
風「奥義」雷「奥義」
風「神風」
雷「サンダーバード」
高速回転で回る風の中に稲妻がどんどん吸い込まれていく。
そして大きな鳥の形を形成したとき
風「飛べ」雷「飛べ」
大きな鳥、神風サンダーバードはバチバチバチガッチャマーンと
大きな音をたてながらとドグマ目掛けて飛んでいく。
ズギャアアアアアアアアアン!
ドグマに直撃する神風サンダーバード。
回転する風とプラズマが幻覚をかき消していく。
ドグマを中心に半径300メートルほどおわん状に地面が大きくえぐり取られている。
おわん状の地肌は黒こげになり、中心からは大きな煙が出ている。
煙が消え、中から現れたのは左腕の外側が白い羽毛、内側は青光りした蛇の鱗に変化した
ドグマと白い司祭の服にフードを被った小学3年生くらいの一人の女の子だった。
スターライトランスはドグマの前で垂直に地面に刺さっている。
「さすがはインガルド地方で鬼神と恐れられている阿修羅子だ。
半身でこの威力とはな」
風神子は冷徹な目をしながら
「なぜ、私達姉妹の秘密を知っているのかしら?」
「さあ、なぜでしょう」
雷神子がドグマの左腕の変化に気がつく。
「何だあのドグマの腕は・・・」
「我々の秘密をこれ以上知られるわけにはいかない、一旦引くぞ」
「でも嫁認定しちゃたから・・・」
少女がドグマを睨みつける。
「わ・・・わかったぜ、ベイベェー」
「ではごきげんよう。またお会いしましょう」
転移魔方陣が展開され、ドグマと少女は転移してしまった。
地面に降りてくる風神子と雷神子。
「もう少し暴れたかったですわ」
「ああ、しかしあのガキは一体何者だ? 俺達を知っているようだったぞ」
「魔王軍関係者か、あるいは私達と同じ地域出身者か」
「魔王親衛教会・・・魔王軍と何らかつながりがありそうだが・・・まっ、いいか」
「そうね、深く考えても今はわからないし」
「その通りだぜ。じゃ、帰るとすっか」
●
「ただいま戻りましたわ」
「たっだいまーっ!」
「おう、帰ってきたか風神子、雷神子」
「ドグマはどうなったんっすか?やっつけちゃったんすか?」
「途中で邪魔が入ってよぉー逃げられちゃったぜ。
しかし、あのドグマとかいう変態野郎、ただ者じゃねーな」
「ええ、私達姉妹の攻撃を簡単にかわしてましたわ」
「ところでお前らスターライトランスで変な幻覚を見せられなかったか?」
ため息をつき嫌そうな顔の二人。
風神子、雷神子の様子から何か気持ち悪い幻覚を見せられたに違いない。
「たすけてくれてありがとう!」
風神子と雷神子に近寄りペコリと頭を下げるスーザン。
「無事でよかったですわ」
「ああ、ミッションコンプリートってな」
俺っちが初めて二人に近寄ったときは、殺す、とか言われてすげぇ睨まれたのだが
スーザンはあっさりと受け入れられている。
「それでは私達はこれで失礼するわ」
「じゃあな、スーザン、ドラロン・・・えっと~」
「レニーっす」
「ああ、レニー、じゃあな」
名前を忘れられていたのはちょっと悲しいけど、まあいいや。
「さて、スーザンも無事帰ってきたことだし、メシにしようや。
ガンガン、JBにチャーハン3つ頼んでくれ」
笑顔のスーザン。
「やったー!」
●
魔王親衛教会の所長室内。
モニターに写って狐面の教祖に報告しているドクター・スロット。
「早くせよ! 魔王様の寛大なお心がいつまで続くかわらぬのだぞ」
「はっ、心得ております」
「それから、この請求書は何だ?」
「何、と申しますと?」
「JB中華飯店 お食事代 純銀貨2枚と書かれてあるぞ!」
「そ・・・それは・・・多分、ドグマですな」
「活動費以外の請求は認めぬ! ドグマにきつく言っておけ!」
「はっ、申し訳ありません」
「教会の運営資金、研究費はただではないのだぞ!
ったく・・・誰が支払っておると思うのだ!」
「はっ、心得ております」
モニターが消え教祖様との通信は終わる。
「ふう・・・あのドケチ教祖が。もっと研究費をよこしやがれ。
それからちょくちょく連絡してきおってからに。
時間の無駄ということがわからんのか、あのアホ教祖めが」
コンコンとドアをノックする音。
「入りたまえ」
部屋に入ってきたのはドグマの戦いに割って入ったあの少女である。
「ドグマを連れ帰ってきました、ドクター・スロット」
「ドグレッタ、ご苦労だった」
ドグレッタの後ろからドグマが入ってくる。
「全く・・・お前の嫁探し癖にも困ったものだな」
「ごめんよパパ、ベイベェー」
「馬鹿者!研究所内ではドクター・スロットと呼べと言っているだろう!
しかし、偶然とはいえ風神子と雷神子と互角以上に戦えたのは素晴らしかったぞ」
「一部変身しておりましたので、私が止めに入りました」
「ごめんよママ、ベイベェー」
「ママって呼ぶなって言ってるだろうが!
今度言ったら、その気持ち悪いもみ上げ、むしり取るぞ!」
「あ~あ風神子ちゃん、雷神子ちゃん、嫁にしたかったぜ、ベイベェー」
あきれ顔のドグレッタが言う。
「ドグマ、あれがどういう生き物か知っているのか?」
「知らないよ、ママ、ベイベェー」
「だ・か・ら、ママって呼ぶな!」
ドグマの右のもみ上げをむしり取ろうとしているドグレッタ。
「あいたたたたたたた、やめて、やめてよ、ママ」
「ドグマ、あれはな」
「まあ良いドグレッタ。そのくらいにしておいてやれ。二人とも下がってよい」
「はっ、全ては魔王様のために」
右のもみ上げの部分を痛そうに摩りながら
「全ては魔王様のために、ベイベェー」
お辞儀をした後、所長室を出ていく二人。
「ドグレッタには悪いが阿修羅子とドグマの対決も確認しておきたかったな」
キメラから人工的に魔族を作り出す過程で偶発的に生まれたのがドグレッタだ。
そしてドグレッタをベースに研究を重ねた結果、
これまた偶発的に生まれたのがドグマだ。
その経緯からか私とドグレッタが一緒にいる時に限り幼児退行なのか
ドグマは私のことをパパと呼ぶ。
彼らはキメラにヒューマンとエルフの脳を移植した、
いわゆる知性を持つ人造キメラである。
何度も同じ組み合わせでキメラを作成したが成功したのは
あの2体とあと3体、合わせて5体のみ。
我々の研究の最終目標はキメラから強力な魔族の体を作成し、
その体に魔族の魂を定着させることである。
教祖様は魔族の魂の定着させるということを強く望んでおられるが
真の目的は隠したままだ。
魔族のミッキー・マウ・ストーンは
人形に魂を移すことはできるが
人形からから魂を別のものへ移すことは出来ない
と聞いている。
現状は行き詰っておりスランプ状態だ。
行き詰まりを打破する何かサンプルがあれば良いのだが。
「例えば魔族と人間の間に生まれた者とか・・・」




