裏切りのボイン
選挙の署名、宗教勧誘、絵の販売、自己啓発セミナー。
若い女性に来られると、断りにくいですよね。
おっぱいが大きいと、もっと断りにくいですよね。
だからまぁ、そういう人選なんだろうと思うんです。
さて……どうしたものか。
議員先生に、どう説明しよう。
「SNSアカウント、全部消されちゃいました。てへペロ」
でいいかな、もう。
地域密着のコミュニティで対抗馬の不利益情報、流せなくなっちゃった。
「うーーん。作り直すか?」
どうしよう。自己紹介文とか、何書いていたっけ。
パチモン疑惑も出るだろうし、ものすごく、めんどくさい。
SNSアカウントの作り直しに頭を痛めていると……
オパパパ♪オパパパ♪オパパ……
電話の着信音が鳴った。
「はい、もしもし……?」
「リンコフ君、こないだ作ってくれた後援者名簿のクラウドが使えない。昨日までログインできたのだが」
「クラウドも!?」
「 も? 」
「いや、昨日ね、私のSNS関係を全部抹消されて、てんやわんやしているんです」
「なん……だと」
「もう、SNSを使って、情報拡散する作戦はできないかもしれません。地域コミュニティーの管理人ではなくなりましたし、これから作り直して新参者で投稿しても、影響が薄いかと」
「くっ、どこから情報が漏れた。君のPCか?ウィルスか?」
「いやぁ~、PCのセキュリティ関係は全部チェックしたんですけどね、全く問題ないんですよ」
「なんといういうことだ」
「SNSの管理人じゃなくなってしまったし、私は用済みですかね」
「いや、それどころではない。ますます協力してもらわなければならない」
うわぁ……正直、めんどくせぇから逃走したい。
でも仕方ないか、のりかかった船だ。行くしか。
若い巨乳ちゃんもいるし。今行くぜ。
「ボインが私を、呼んでいる~♪」
と、まぁ、ピンチに駆けつけて、それを切り抜ける男というのは、それなりに格好よく映るものだと、下心満載で、選挙事務所に突入いたしましたところ。
いない、いないよ。どこにいったのボイン。
事務所内をキョロキョロ……
「大胸立派子さんは、来ていませんよ。残念でしたね」
チッ
「そうですか。じゃぁ、帰ります」
「まてぃ……状況整理を手伝え」
「へいへい、やりますよ」
気が付けば、打ち解けたもんだ。
クラウドデータにアップしてあった後援会名簿は、印刷されていたため、スキャナで取り込んでOCRをかけると、あら不思議。表計算ソフトの名簿データを9割以上回復させる作業を完了。アナログな人がいて助かったよほんと。
「……こういうのは、マジ優秀なのね、君」
「いや、最近の会社は、普通にやっていますよ。後は、最新データをいくらか入力しなおせば、名簿関係の現状回復は出来上がりです」
「「「すげぇ、魔法みたいだ」」」
……スマホで文字認識させて翻訳させているOCR技術と、何ら変わらないのだが。高度に進んだ科学技術は、魔法のように見えるらしい。
「ここまで現状回復ができたら、後は、動画と桃太郎の準備か」
「桃太郎?」
「旗とかチラシを持って歩きまわるアレだ」
「へ~、桃太郎っていうんですね」
「業界用語だから、知らないもの無理はない」
そりゃ、ネットで騒ぐのと、データ整理しか頼まれてないから、アナログな選挙のやり方なんて知らないんだよなぁ。
「そうだ、ウォーキングがてら、君も桃太郎しないかい?」
「え?どうしよっかな?正直、めんどくせぇ」
「……歩くと、揺れるんだよ。わかる?」
「参加します」
そんなこんなで、桃太郎に参加することになりました。
-------(桃太郎、当日)--------
いない……いないよ。ボインが。
歩く時の揺れを見に来たというのに。
なんという裏切り。議員先生……てめぇ。
そんな恨み言をブツブツ言いながら、なりゆきで桃太郎に強制参加させられた私の士気は低かった。
手を振ったり、握手したり、御辞儀したり、チラシ渡したり。
相手はお年寄りが多い。
あぁ……営業スマイル、スマイル。忘れるとこだった。
そうして社会人スキル「スマイリー凛古風」を発動して、やる気もなく歩いていると。
道路の向こう側からも、桃太郎している立候補者と支援者が歩いてくる。フトモモ派の性癖異心の会の人達だ。
確か、こういう時は……
「お互い、がんばりましょ~♪」
って、称え合うんだっけ?腹芸すごいよね。
だが、そうはならなかった。ガンを飛ばされ、メンチを切られ。
苛立つコチラの桃太郎メンバーが見つけたのは……
大胸立派子
「テメェ、裏切ったな。くそアマ。スパイかよ。名簿データ壊しやがって」
「はぁ?負けそうだからって言いがかり」
血気盛んな人達が、声を荒げる。クラウドにアクセスできなかった恨みつらみかな。私なんてID全部消されて、ネットから抹消されたんだけど。まぁ、選挙スパイの裏工作くらったんだから、仕方ないか。
あっけらかーんとしている私に比べて、他の人達は一触即発である。
選挙の前に、コブシで語ろうって話。「やめようよ」と、とめに入ろうとした。
が、私は混乱している。
「凛古風、手伝え、有段者だろ。ぶちのめせ」
が、私は混乱している。
「いてぇ、コラ、大人数で何しやがるんでぃ。凛古風、助太刀を。アァーーーーッ」
が、私は混乱している。
私の、目の前には、大胸立派子。
胸が……胸が、ペッタンコだと。断崖絶壁フラット・チェストだと。
「あはははは。リンコフちゃん、アレね。最新のシリコンパッドなのよ。やーい騙されてやんの。ノートPCのデキストデータに保存されていたIDとパスワードから、SNSとクラウド関係全部消されてくやしい?くやしいでしょ」
もう抹消されたIDのことなんて、どうでもよかったんだ。高度に進んだ科学技術は、魔法のように見えるらしい。あの胸は魔法なのか。なんということだ。
裏切りのボイン
くっ私は、おっぱいホームズには、なれ な かっ……た。
多大なる精神的ダメージを受けた私は、その場にうずくまった。
その昔、自宅サーバーも落とされたんですよねぇ。こういう時って、警察にどう説明したらいいのかわかりません。
まぁ、にちゃんねるを模倣して、遊び半分で作った自前BBSとか、大したことしていなかったし、作り直したらいいんだけど。
今、管理している会社のサーバーなら、ファイヤーウォールとかでアクセスIP全部残ってるんで、証拠提出もできますけど。
それと、クレジットカードは、全部保険で何とかなったりしますけど、ビットコインをオンラインで盗まれたら、警察もあんまり相手してくれないし、悲惨って噂ですね。
そして、「おっぱいホームズ」選ばれた眼力を持つものだけがなれるという前作。よかったら読んでくださいね~♪