決戦
はい
「すごいな敵の場所まで一直線で草木が枯れてるぜ、ゴブレン」
「そうだな」
その枯れた草木の後には尖った石が埋められており、ほぼ沼の様を出していて、ここを通るのは一筋縄では行かなそうだ。
「こんなバリケードで奴の投擲を防げるんですかね」
「ボルドは俺の姿を見て必ず俺だけを狙って投げてくる、それに俺と一緒に死ぬのを決めたのはお前だろ?」
「、、、、お前は怖くないのかよ」
今まで真顔だった顔が一気に怒りで染まる。
その様子を見て少したじろぐ
「俺は、俺はたくさんの戦士を死に追いやってしまったクソ野郎だ。
それなのに何もせずにこのまま死ぬのが申し訳ないぐらいだ。」
「なら奴の首を取るまで死ねないな」
「分かってる」
ボルドは味方のゴブリンの頭を掴みゴブレンの放に目掛けて放ってくる。
スライムが到着するまでこの村が滅びなかったのは三日置きに同じ方向から攻めてくるのと必ずボルドがこのような攻撃をしてくる事にあった。
しかし今まで沢山の仲間の死や生きている人からの期待、恨み、後悔からくる負の感情から抜け出せ怒りの感情と共に勝ちを確信しているのには理由がある。
あのポイズンスライムの存在だ、この村から敵の村までを毒沼状態にするほどの力を持つスライムの存在が、ゴブレンのみならず他の村民にも大きな影響を与えていた。
村に残してきたのは子供達のみ、自分たちに期待を背負わせてきた子供達のために村民が一丸となって戦う。
もはや恐怖しているものは戦いの場にいる物にはいなかった。
そしてこの村の唯一の勝機を握っているスライム、彼は一つの可能性に賭けていた。
それはボルドさえ倒せばあとはどうにでもなるということ。
そう思う根拠はあの謎の赤いマナ
今まで見てきた生物の中にあのようなマナを纏っているものは一匹としていなかったということ。
それに攻撃方法に命を使ってもなお、周りの仲間たちに何もされていないこと
それにあの存在感。
スライムがこう思うのは決して酔狂なことではないが、
心の中にはこんな博打で情が湧いたものたちの命をも自分の判断でベットしているという事実がいつまで立っても頭から離れない。
恐怖しているのはただ一匹だった。
『なぁ、スミ』
「なんですかぁ?」
『奴は投擲を始めるときに硬直するそうだな』
「レンくんはいっつもそう言ってましたよぉ?あの隙に何とか攻撃を入れられないのかって」
ボルドは投擲をする際に遠くに飛ばすために必要な力を貯めるので、そこに数秒程度の隙が生まれる
『その隙に奴の首を俺が飛び掛かって締めて殺す。だから俺はここを離れて敵の近くに行くが、お前らはここで待機だ』
「わかりました!」
ゴブレンや慕っている戦士達2人は敵の正面に立って囮となる。
スミ達は敵の進路の真ん中あたりの横の茂みに隠れて敵が来た瞬間敵の足に槍を刺して退避させる。
そして俺はもっと奥の方に行っていつボルドが投擲を始めてもいいようにする。
時間が流れていく、次第に喉が渇き始めて日は一番上のところから少し落ち始めている。
目を閉じようとしたその時に敵は現れた。
異様な光景だった涎をダラダラ垂らしながらもはやスミ達と同じ種とは思えないような体躯の差がそこにあった。
さっきまでなかったはずの恐怖心が芽生え始めた。
「ねぇ」
肩にスミがカコに手を乗せる。
「どうしたのよ」
「大丈夫、皆んなきっと大丈夫だから」
カコは震えていた、汗が垂れ表情も凍っていたがその言葉をかけられてそれらは一切なくなった。
「ありがとう」
何も言わずにスミは微笑んだ。
『来たな』
その行進の最後尾にボルドがいた、やはり赤いマナを纏っており表情も他のものとは違う何かを放っている。
しばらくすると敵が進路の真ん中にたどり着く前に先頭からばたりばたりと倒れ始める。
その倒れた体の足は紫の色に変色し、その傷口からは赤い血と黄色の液体が流れている
その死体を足場にして行進のペースは一切落ちることなく進んでいく。
「くるよ、、」
何者かが聞き取れる限界の声量でそう言う、敵は真ん中に迫っている。スライムはボルドの真横に見つからないようにくっついている。
しばらくした後に、、
「ッ!!」
その声にならない声と同時に茂みから
槍が一匹の足に向かって飛び出す。
「ウゾォッ」
そういうと同時に槍が刺さる
倒れ込み全身に棘が刺さり、しばらく悶絶した後に声が聞こえなくなった、
それに続き次々と足に刺していく。
バタバタと敵が倒れ茂みから音がゴソゴソと騒がしくなる。
スライムはその様子を喜んで見て、ボルドは一度立ち止まり静かにその様子を眺めていた。
「キャーーー!!」
金切り声が聞こえる、その声の元にはルタの元に何匹ものの敵が集まっている。
槍がルタのすぐそばに落ちている。
ルタはガタガタ震えて動くことができない状態だ、涙が目から溢れ嗚咽している。
すると茂みから音がし、そこから沼地へと飛び出すものがいた。
カコだ。
周りの敵はそれに気付き過去の元へと走る、カコは槍を何本も手に取りルタの元へそれを投げる。
一本は当たるが数本は外してしまう。
「早く!!!」
カコがそう叫び、
「うっ、うわあああああああああああああああ」
ルタも叫び頭めがけ槍を刺しそれを抜きもう一本も刺す。
「うわあああああああああああああああ」
叫び続け何度もその近くにあった手に取った石を頭に打ちつけた。
何度も、何度も、何度も、何度も、
「早く、逃げるよ!」
カコの声で正気に戻る。
気がつく頃にはその頭の原型は失っていた、
敵のゴブリンはどんどん数を減らしていく。そしてついにボルドが動く。
手を振り上げた。それをして後ろに次々と集っていく。
そして五匹のゴブリンを並べてそこに留まらせる。
ボルドは体の向きを変え身を隠しているスライムの元へと大きな足音を立てながら近づく。
だがそこで立ち止まる。
『、、、少しでもこっちを見てみろ、その瞬間に首を絞めるぞ。』
当初の予定とは違うが、ここで争うことを心に決めたが、こっちを向く気は一切ないように見えた。
ブチッ
その音は木を一本引きちぎった音だった
ボルドは片腕で手の力だけで木を引きちぎる。
「、、、、」
正面に立つゴブレンの額から冷や汗が垂れる、今までの行動パターンと違うことをし、もしかしたら茂みにまだ隠れているもの達に被害が及ぶ可能性が有ったからだ。
『畜生、、』
彼もまた一切動くことが出来なかった、それは恐怖から来ているものだった。
死への恐怖や今自分が何も出来ていないことからくる恐怖様々なものが彼の上にのしかかっていた。
ビュオオ!!
勢いよく風を切る音、ボルドは持っている木を思い切り五匹のゴブリンの頭に打ちつけ頭と木を同化させるほど深くめり込ませた。
そして木の歯がある部分を振り払い機木の幹のみにした
『???何をしているんだ??』
困惑しているのも束の間、足を思い切り振り上げた。
そして、、、、、
ゴロロッ!!ゴロロロロロロ!!!!!!!!
ものすごい力で蹴った五匹のゴブリンを纏った木は転がり始めゴブレンの元に行く。
棘が肉に突き刺さるまくり緑の肌をどんどんゴツゴツの黒に染め上げていく。
ものの数秒で勢いを全く落とすことなくゴールに辿り着く。
「こんな壁じゃ、無理っ」
この先には子供達が避難している建物がある、そのことを理解しているためこの場から動けないでいた。
「はぁっっ!!!」
短くそして大きく息を吸う音が聞こえる。
そして、、、
バキッ!!!!!!!
ゴブレンが思い切り黒に染まった丸太に向かい思い切り足を踏みつける。
弾丸とも思えた勢いは一瞬のうちに止まる。
ミシミシ、、
「うぐぅ、、」
痛みで片目を瞑る。一つの棘が足を突き抜けていた。
この音は木が軋む音ではなく、足の骨が入れた音だ。
「うぐわぁぁぁぁぁ!!!!」
「ぐりゅううううわああ!」
どしどしどしどしどしどしどし
敵が全員一斉に叫び始め目をひん剥かせながら一心不乱にこの村まで駆けている。
「お、おいこれを俺ら2人で止めるなんて無理だ」
「槍を持たせろ」
「え?」
喉と手をだけを開く
「槍」
「お、おう」
槍をすぐにあ開いた手に添えると
グッ!!!バキッ!
手が閉まりあまりの力に持つ部分が少し割れる。
「ぅぅ、、うおおおおおあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
全部の体を槍を投げることだけに全てを注ぎ遠く離れたボルドの脳天に直撃する。
「うおああ、、」
ボルドは怯み数歩うしろに下がる
『ありがとう!!』
体を伸ばして首に目掛けて飛びかかり何重にも全身を首に巻いて首を絞めて殺すことだけを考える。
一方ゴブレンはもうクラクラの状態で立っているのが限界だった。
「ぶりゅうううううううう」
「えええあああああああ!!」
敵の進軍は止まらず、後数十秒でたどり着くようであった
「ゴブレンさんあとは僕たちで何とかしますで!休んで!!」
ゴブレンの顔はもう限界だとそのような表情を出している。
「まだ、、、あいつらが、、、、、、みて、、、、、、」
とうとう倒れる、
「ゴブレンさん!!」
ドサッ
何者かがそれを受け止めた
「私たちがぁ何とかしますのでぇ、、頑張ってぜくださいぃ」
眠くなるような声で喋りかける。
「ッ!!」
その声に返事をする時間はなかった。敵が目の間に来てる。
「おいどうする!!!」
「、、、、、」
焦った顔で1人が片手の指を噛みながら考える。
「やばいやばいやばい!!!!」
「これを思い切り蹴るぞ!!」
そういい指を刺した方向はボルドが蹴ってきた丸太だった。
何も返事をせず走って向かい2人が丸太の前に並ぶ、
「行くぞ!?いくぞ!?せーのっ」
バキッ!
「いてぇえええええ!!」
あまりの痛みに足を抑える、血がどくどくと流れていた。
「はっ」
目を開き丸太の様子をみる
ゴロゴロ、、
遅いが棘が刺さっており十分な効果があった。またしばらく時間を稼ぎ、茂みにいた者たちが丸腰で集まっているのを見た。
「バリケードの先端は敵に十分刺さる鋭さがある、勝手にバラして使え!!」
本来投擲に備えるためにあるものであったので正面には肉が刺さりやすいように槍が梯子状のバリケードの隙間から覗いていた。
急いでバラし構え敵に備える、さっきの丸太の攻撃で死んだのは元々先頭の部隊、後は万全な状態のものしか残っていない、
言うなれば今までの攻勢と同じぐらいの強さの敵が迫っているのと同義であり、つまり通常の戦士ではないものが戦っても敵にとってはただのカカシである。
「覚悟は、、、出来たな、、、、、」
バラした槍を装備したものがここに残り、あとは村の倉庫から武器の回収に向かう。
残った者はすでに覚悟はできていた。
一方ボルドとスライムは格闘を続けていた、首に強く巻きついたものを解こうと力一杯引き剥がそうとするが剥がれる気配が全くしないでいる
『うおおおおおおおおお!!このくそ!さっさと死にやがれ!!!!』
メリメリメリ、、、
首を絞める音が生々しく響くが、両者小耳には一切聞こえていない。
『こうなったら!!』
体の先端の皮膚を弱くし口の中に突っ込む
当然相手は反応し、体を噛み切る。
『よし!!』
体に先端から内容物が流れ込む、ポイズンショットは体に疲労を溜めるため打つことはせずにこのまま垂れ流すことにした。
ナカミガなくなれば意識は無くなるが、それまでには決着がつくだろう。
ぼこぼこぼぼぼぼこぼこ
首の血管と空気を同時に遮断、それに加えて軌道に入る水は全て毒入り、ボルドの体力を一気に奪う。
目から血が流れ始め口の中から吐き出そうとするがその力は微々たるもので全く問題にはならない程度だった。
ぐおおおっ
赤いオーラが一気に増え喉から外そうとしていた護衛を覆った。
そうすると体の筋肉がなくなり右腕右胸に集まりそこだけがムキムキでそれ以外は細身で骨が見えているという以上なものとなった。
『やっぱ、、お前が村民に何かをしたんだな、、、』
そう確信したその時その腕はボルドに腹を殴る。
『うおおっ』
腹に溜まった水が押し上げられその圧で口から外れそうになる。
体を破いた選択を後悔する。
『絞める力はあっても、、押し返す力が、、、、、でない、、このままでは、、、、、』
あることに気づく、手の力が弱くなっているのに気づく。
そこで毒を入れるのをやめ口から出す。大量の毒水が喉を通り首がはち切れそうなまでに太くなる。
ダバア、、びちゃびちゃびちゃ
「ごびゅーーごびゅーーー」
息ができるようになる、それと同時に木に突進し巻きついているものに向かって一気に衝撃を与える。そして何度も何度も打ちつける。
『ぐぅっ、』
ギギギギ、、、
首の骨を折るために力を全力で込める。
「、、、」
今でも泣きそうな顔で槍を持ち戦場を見つめる者がいる、
そこはまるで地獄であった、悲鳴が聞こえ、血が吹き出して空を彩る。
そして今まで一緒に過ごしてきた友達、仲間、恋人が醜い鬼のような形相で死んでいる。
その戦場を見て、恐れ震えているのだ、、、
しかし
「いやあああああああ!!」
そう叫びに方向を見て、震えが止まった。それは自分の親が、皺が増え、体が骨が見え始め、そして大好きな人がそうなって死を受け入れられず、叫ぶ姿を見て覚悟を決めた。
「あぁ、あぁ、、、」
震えが止まった。
「うああああああああ!!!!!!」
敵に向かい走り槍を刺す。
が、敵に届く前に捕まれる。
「、、、、、、あはっ」
攻撃が頭上に振り上がる。
と同時に敵は固まった。
「、、、、あれ?」
そう思い目を敵の親玉の方に目をやると、倒れたものとそのそばで伸びている水のようなものがあった。
「あは、、あははっ!」
そこに倒れているのは敵と死んだ者達のみだった
その場が静寂に包まれ、勝ちを理解した者達からこう叫んだ。
「やったぞおおおおおお!!!!!!!」
「勝ったぞおおおおおお!!!」
歓喜の声が当たりを包む。
「おかあさぁん!!おかあさぁん!!」
「ああ、本当に良かった!ありがとうございます、、ありがとぉございます、、、」
「なんなんですぅ?これぇ?」
ゴブレンを担いでいたスミが建物から出てくる。
「あぁ!!」
それを見た二人組が指を指し駆け寄ってきて抱きつく、
「あんたどこにもいないからほんと死んだかと思ったよ馬鹿だから」
少し怒った顔で
「ひどいですよぉ?」
「あたし一回死にかけてカコに、、助けてもらって、、、」
バタン!!
扉を勢いよく開ける音が聞こえる
「スライムさんは、、?」
それを見たスミが
「いや、見てないですけどぉ、それよりそんな怪我でぇ、、」
そういうと何も言わずに向かう。
「ちょっとぉ、死んじゃいますってぇ」
一歩二歩、、、スライムの元に辿りつく。
その隣には以上な角度をの首を持った変わり果てたボルドと生きているか死んでいるかわからない状態のスライムがいた。
「ボルド、、、」
そういい頭に向かって
ドャ
石を叩きつけ頭を割った。
ゴブレンの目からは涙が流れていた、、
「スライムさん、、今治療室に向かいます、、」
担ぎ最後にボルドの方を向き
「昔から勝負してて、最後まで俺が勝ったな、、」
「いるのか、、?お前をそうした何かが、、、、、」
振り返ることなく沼地をまっすぐ進んでいった。
やっと終わりました