指揮権
うおおお
しばらく歩くと
『あれは、、』
果物がついていた後の茎がある。そしてそれより上にはまだ果実がついている。
『まるで人がとったかのようだな』
もしかしたらこの周辺にあの冒険者の活動拠点があるのかもしれない。注意深く観察する。
『足跡が、、でもこれは、、、』
4本しか指がない。でも二足歩行で歩いている、もしかしたら多少知識を持っているのかもしれない。
ズル、、
『あれ、、ぬるぬるした液体が』
よく見たら所々に同じようなシミがたくさんあるには見えた。そして、、
『死体が、、、ゴブリンって感じの、、マナは出ていないみたいだな。それにしても死体の感じが変だ、頭がぐっちゃぐちゃで体はバラバラ、そして身長がでかい個体のみがこんな感じになっている。』
30体ぐらいの死体小さいのと大きいの、同じ種類のものだろう。お互いが争ったのか、?
槍のようなものがあるがまるで石器時代のものだ。
しかし槍が作れると言うことは知能は少なくともあるみたいだ、もしかしたら人間の里への足掛かりになるのかもしれない。
そう遠くないところに村があった。茅葺の家が数十軒。中央に周りの家とひとまわり大きな家がある。
そして異変が少し。
『あのゴブリンが1人もいない。』
もしかしてあの戦いで滅んでしまったのだろうか。
だとしたら好都合でもある。ゆっくり調べてみよう。
「オイ」
静寂を割って羽織るものが出て来た。頭に赤いバンダナを巻いているさっき見た小さな種類のようだ。
スライムって意思疎通ができるのか?取り敢えず、、
『あーーー、えっとごめんな?大変な中勝手に入っちゃってすぐに出でいくから--。』
「!?」
反応は予想外だった。豆鉄砲を喰らったような顔をしている。
「お前喋れるのか、、?」
『あれ?普通のスライムって喋れないのか?』
「、、、、何をしにきたんだ、、。」
『少なくとも害は与えないぞ。』
そういうとそのゴブリンは考えるような顔をして
「ついてこいよ」
そういい中央のでかい家に案内された。
ギィィ
ボロボロの扉を開けて中の様子を見せる
そこには怪我をしたものや、痩せこけた老人や子供達がいた、、
怪我をしたものはまるで未来がないような顔をしており子供や老人はピクリとも動いていない。
『何を俺にさせたいんだ?』
「、、、お前の力を貸して欲しい。」
『そうか、、』
喋るスライムが珍しいのか何人かがこっちを見て来た。そのみてか他ものの中には子供達はいなかった。
「隣の村から奴らが攻めて来たんだ。このままじゃ俺たちは皆殺しだ。頼む。」
そういい頭を下げて来た。ただのスライム、それにさっき知り合ったばかりの俺に頼み込んできた。相当追い詰められているようだ、よく見ると手がプルプル震えている。
「、、頼む、、、」
掠れた声で懇願する
『もし嫌だと言ったら?』
「何も言わずに出ていってくれ」
『何かくれるものはあるか。』
そう言うと黙り込んでしまった、まあこの村に来てこいつにあった時点で俺の心は決まっている。
口を開こうとすると、、
「俺の全てをやる。」
さっきの掠れた声と違い力強く放った。
『全てだと?』
「文字通り俺の全てだ、命財産忠誠、何でもやる。俺みたいな屑でお前に命が釣り合うかどうかは分かりようがないが、、俺に払えるものはこれしかない、、頼む。」
『じゃあ、勝ったらお前が今一番大切にしているものを見せてくれ。』
そういうと頭を下げた。
「感謝する。」
『じゃあまずは現状を教えてくれないか、、て。』
涙を流している、声も途切れ途切れで体を動かそうとしない。
『お、おい、、』
「こっちに来な。」
別の怪我をして奥の方に座っているゴブリンが声をかけて来た。
『分かった。』
そのゴブリンは息をゆっくりと吸う。
「狂ってると思うか?あいつ。」
『え?』
思わぬ質問に困惑する。
「訳の分からないあってすぐの喋るポイズンスライムに自分の全てを捧げるから戦いに加勢をしてくれと言うんだ。おかしいとは思わないのか?」
『い、、いや』
「はは、、まぁいいあいつゴブレンって言うんだけどよ、、そいつ隣村のボス、、ボルドと昔からの仲、、幼馴染ってやつだったんだ。隣村のやつとは小競り合いは何回かすることはあったんだ、でも本当に小競り合いで互いに手を取って脅威に対抗する方が多かった。でも変わっちまったのはほんの数日前。」
息を整え話を続ける。
「前まで奴らは俺らと同じゴブリンだった。でも奴ら突然体が大きくなった。その中でもボルドの代わりかたはすごかった。体が奴らの周りのゴブリンよりひとまわりふたまわり大きくなってその辺の木を片手で掴んで俺ら兵士隊を薙ぎ払ってきたんだ。」
顔を俯かせる
「超怖かったぜ。大きな壁が全力で俺らを殺しにかかって来てるんだ。他の奴らも俺らが三人がかりでようやく1人倒せるぐらいだ。それで前任の兵士長も戦死してゴブレンのやつが新たに戦士長になった。でも戦況が変わるわけもなく俺らはなぶり殺しにされ続けた。あいつは優しいやつだからな。幼馴染があんなんになっちまって相当責任を感じてるし、友達もたくさん死なせた。体も心なしか小さくなってきてるもう限界なんだ。」
『ゴブレンは強いのか?』
「あぁ、この村が始まって以来の強さを誇っていたんだが、敵兵一匹殺すのにあいつでもやっとって感じだ。昔の自信あふれる様子も無くしちまったよ。」
そういうとあたりを見回し。
「長くなっちまったな。まあそういうことだ、くれぐれもあいつをこれ以上悲しませてくないからな、いい返事をしてやってくれ。」
『それに関しては大丈夫だ、、』
すると笑い出した。
「ははは!それは良かった、あんたはこの村には何にも縁がないからないつ逃げても恨みはしねえよ。」
『それは助かるな。』
逃げるつもりは毛頭ない、今まで何度も死地を乗り越えてやっと辿り着いたんだ。ちょっと感情移入しちゃって可哀想だからと言うものじゃない。これは俺のためでもある。
『よし、作戦会議をしようぜ、ゴブレン。』
少し驚いたような顔をした。
「あぁそうだな、村長達をよんでそこで行うよ。」
数人の老人と若い兵士を連れてやって来た。
「よし、まずは現状を確認しよう。」
『いや、ちょっと待て。』
「なんだ?」
ゴブレンがそういう、ゴブレン以外の物はとても驚いている様子だった。
『俺と一緒にみんな外に来てくれ。』
外の一番広い場所に集合させる。
『みておけよ、スゥゥゥゥ、、、、、、』
ぶわあああああああ
体を目一杯大きくさせた。さっきまで見上げていたゴブレン達が豆のように小さくなった。
『意外に体力使うな、、これ』
一気に体を小さくする。ゴブリン達の反応はさまざまさった。
「ここまでの力を持つポイズンスライムが味方してくれるとは。」
「こんな、、初めてだ、、」
「もしかしたら何とかなるかもしれない、、」
こんなもんでいいだろう。これで相手のこっちへの期待は相当高まったはずだ。
『すまないな、作戦会議の邪魔をして、俺も入れてもらえるか?ゴブレン。』
「あぁ、、予想以上だ、こんなにも、、俺の全てがこんなに価値のあるものになるとは到底思えないほどに、、」
『お前の全てなんていらねえよ。俺はただ居場所が欲しいだけだ。』
「そうか、、」
しばらくの反応を見て作戦会議に移る。
『質問だ、俺たちが優位なものは何か教えて欲しい。』
「何もない個人の戦力差も数も指揮官も士気も負けている。」
『、、?士気が負けてる、?そんなのどうやって知ってんだ?』
少し気まずそうに語る。
「奴らは少しおかしいんだ、怪我をしても、仲間が死んでも、致命傷を負おうとも全く怯まずに戦いを続けるんだ。そして極め付けには奴らは仲間の死体を食べてやがったんだ。想像を絶する光景だった、実際に何度も見てもいまだにそれが夢だと思うほどに。」
『そんな、、、、』
『次の攻める時期はいつかわかるか?』
「三日後だ、理由はわからないが今までもこの周期でやってきた。そして進路はいつも同じところから来る。」
『よし』
「、、?」
『勝つ道は一つしかない、三日しかなくても十分だ。これからは俺が指揮を取っていく、異論は、、』
「そんな馬鹿げた話があっていい訳ないだろう!!」
この村の長であろう物が声を荒げてそういう。
「訳の分からない突然きた謎のスライム風情にそんな大役を任せていい訳ないだろう!」
「そうだ!」
「何をいうかと思えば、、お前は向こうの村の物だな!?今すぐ殺して、、」
「俺は賛成だ。」
自身のこもった声で割り込む。さっきゴブレンの事情を話してきた奴だ。この場のさっきの喧騒は無くなった。
「ここまま同じ人物に指揮を任せて状況が劇的に良くなるとは思えない。」
「なんだと?」
「俺たちに選択の余地はない、このままこの村の運命をコイツに全てを賭けてみることにするよ。」
「奴らの異常さに煽られお前もおかしくなったか。」
「お前らが勝手に反対しても構わない俺はコイツについていくぜ、みんなはどうだ?」
どう問いかける。
「あれほどの力を持つスライム、そして知能も持っている。試してみる価値はあると思う。」
「そうだな」「やってみるしかない。」
「、、わかった、、どうなっても知らんぞ、、」
さっきまでの勢いを無くしてしまったようだ、渋々了承する。
「あとは、ゴブレン、お前が決めるんだ。」
「、、俺は、、たくさん仲間を殺してしまった、子供の頃からの友達も村の大人たちも、お世話になったおばちゃんも、俺が弱いせいで殺してしまった。俺はずっと、、ずっと、、誰かにこの役目を押し付けたかった、ここまで辛い役目だとは思っていなかった。前の戦士長は笑顔を作るのがうまかったけど俺はそうはいかなかった。」
『つまりはいいってことでいいな?』
「あぁ、、、俺の代わりに苦しんでくれるならいいだろう。」
『勝つから苦しむ予定はないな。』
「頼もしいな。」
安堵した顔でそう語ってくれた。
『これ以上この村を苦しい立ち位置にはさせない。』
おひさ