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村一番の美少女メリーダ

気持ち悪い。


私、メリーダはある気持ち悪い少年に付き纏われている。

村で買い物をすれば後ろに、水浴びをしようと池に行けば草むらで何やらゴソゴソ‥


もう限界だ!

今日こそアイツにガツンと言ってやる!


朝、庭の鶏が快活に叫びをあげる最中私は決意を固めていた。

身支度をして、今日は街に行く馬車に乗る日だが、アイツに付いてこられてはたまらない。12歳のこんな大切な時期をあんな気味の悪い奴に邪魔されてたまるか。


「メリーダ?着替えたー?」


一階からは母の声が響く。

馬車に積み込む荷物をバッグにひたすら詰め込みパンパンになったそれを片手に私はドキドキと不安に襲われながら、遂に足を進めた。


「ママ〜、お友達に挨拶してくる〜」


そう伝えると足早に私は駆け出した。






村の広場には既に沢山の友達が集まっていた。私が街に行く事を知った事で今生の別れでも無いのに無事を祈って皆集まってくれた。


「遅くなってごめん!」


私が駆け寄ると口々に「遅いぞ」「待ちくたびれた〜」など文句が飛び交うが、誰一人嫌な顔はしておらず、皆晴れやかな笑顔だった。


そんな皆に感化されて私もなんだか嬉しくなってきちゃう。





そこに水を差したのがアイツだ。

人に紛れてその気味悪い奴は、こちらを凝視していた。気持ち悪い、ブルリと私は身体を震わせた。

髪は切ってないのか長髪でボサボサ、いつも同じ服を着て異様な匂い、肌荒れしまくりのソイツは居た。


「皆、ありがとう集まってくれて。そしてね、一個聞いて欲しい事があるんだ」


皆は首を傾げ、私の言葉に耳を傾ける。私は笑みを浮かべて言い放った。


「そこの親ナシが私に付き纏って怖かったの。だから皆で説得してくれない?」


親ナシ

それはアイツが村で呼ばれてる名前

身寄りが無くいつも森でボロい古屋に住んでる、不潔な奴。


私の言葉を皮切りに皆は親ナシを見る。


親ナシは狼狽る。


一人が親ナシを押した。


それが始まりだった。激しくなる暴行は、殴る蹴るに代わり私は笑みを深くして笑った。


ざまあみろ。私はこの村のアイドル。

お前なんかが望んで良い存在じゃないんだぞ。





少し後

血塗れで古屋に帰ってったアイツ

少し可哀想だったが、まあ自業自得よね。これに懲りたら二度と付き纏わないで欲しいわ。


「メリーダ!」


透き通る声が響く、そこには村一番のイケメンスミスが居た。やっぱり私には最低限スミス位のイケメンじゃないと釣り合わない。


「もう!遅い!」

「はは、悪い悪い」


そう頭を下げるスミスを私はしょうがなく許してやった。すると、スミスは私の手を握り耳元で呟いた。


「林に行こ‥」


それは誘いだった。

村のカップルの秘密の場所。

私は好奇心から了承した。







深い林の中、手を繋いでいた私は心臓が破裂しそうな位緊張していた。

ああ、私は今日大人になるんだわ。


「おいおい遅いよスミス」

「まったぞ〜」


奥からは村の男の子達が続々と出てきた。私はスミスに説明を求める様にスミスを見ると

「ほら、約束通り連れてきたぞ。さっさと金くれよ」


スミスは今なんて言った?


「前の女は三日で壊れたからな〜‥今回は一週間は壊さねーぞ、払い損だからな。」

「じゃあ取り敢えず一日3回回して終わりにするか?」

「こいつムカつくから殴りてーわ」



え、うそうそうそうそ

私は助けを求める様にスミスに手を伸ばす。スカッ

手は空気を掴む。


え、え、


なんで、なんでよ。


「こいつは顔良いから銀貨5枚な」

「しょうがねーな」


スミスは男から銀貨を受け取ると走り去った。私は立ち尽くす。


がんっ!


私は頬に強い痛みを感じ倒れた。


「おいおい、いきなり殴るなよ」

「だってムカつく顔だから」


え、今私殴られた?



自覚した途端激しい痛みが襲う

痛い痛い痛い


「うるせぇ!殺すぞ!」

「ちっ、静かになるまでボコるぞ」



助けて‥






ドスっ


「あ、あ、」




「だれだお前!ふざけん、やめ、」



「たすけ、たすけて!」



静かになった。

私は静かに瞳を開放する。


そこには斧を手に立ち尽くす親ナシと男達の死体だった。


親ナシがこちらを向く


「ひっ!来ないで‥」


後退り、犯される!親ナシに!


親ナシは私の顔を見ると


微笑んだ。



そして、私を通り過ぎて村に向かって歩いて行く。何だったんだ。


だが、運が良かった。

お陰で私は助かった。


安心して息を吐くと、奥に小汚い古屋があった。


あそこは確か親ナシの家よね。


私は、親ナシの家に何故か歩いていた。意味はわからない。でも、そこには何か大切な事がある気がした。



中に入ると藁のベッドと硬貨が数枚入った壺、そして何やら書かれてる紙の束


私は紙を手にした。


これは‥日記帳かな。

字を書けた事に驚いたが、それ以前に何となく内容が気になった。

正直私は、最初この日記には気持ちの悪い事が書かれてると思ってた。


読んでいく内に私は涙を流していた。





×月○日

メリーダって子が遊びに誘ってくれた。嬉しかった。蛇が出ると怖がってた、僕が追い払うとメリーダちゃんが「貴方は今日から私の騎士よ!命懸けで私を守りなさい!」





×月○日

何やら村の男の子達がメリーダちゃんを襲う計画をしていた。僕は必死に説得した。メリーダちゃんを襲わない代わりにお金を持ってこいって言われた。でも僕はそんなお金ない‥




×月○日

村長がお金をくれた。

部屋でお尻をいじめられたけど、こんなにいっぱいくれるなんて優しいな。



×月○日

今日も村長の家に行った帰り、また男の子達がメリーダちゃんを襲う計画をしていた。僕は説得した。



×月○日

メリーダちゃんが水浴びをしてる側で男の子達にいじめられた。村長と同じ事をしてた。メリーダちゃんには凄く怒られた‥悲しい‥






親ナシなあの異様な匂いは‥

私は走り出した。



親ナシ、いや!あの子は!



裸足で森を掛けて、村に着いた頃には私の足は血塗れで脇目も振らずあの子を探した。


いない、居ない!どこ!




「どこ行ってたんだメリーダ!探したぞ!」


声が聞こえた。

そこには父が居た。

私は叫んだ。


「あの子はどこ!?あの子は‥」


父は困惑した顔で私を見つめる。

そうよね、わからないよね


「親ナシよ‥あの子はどこ‥」


父は納得した顔になると、


「あの子ならついさっきスミス君の家に向かってったよ」



ああ、

あの子は‥


「ちょ、どこ行くんだメリーダ!」



私はなんて最低な人間なんだろう


ああ、ごめんなさいごめんなさい









「殺せ!」「焼き殺せ!」


「辞めて!その子は、その子は!」


あの後、スミスを殺したあの子は捕らえられ縛られて村の中央に座らされていた。


「まあ、待てお前ら」


村長が声を掛けると、一斉に静かになる。それを見計らい私は声を出す。


「その子は私の為に!」


途中で口を塞がれる。

父に手で塞がれた。


「まあ、この子も親ナシと蔑まれ悲しみと絶望の最中だった。どうだろう、ここは奴隷墜ちにするのは」


村の人々はおお‥と感心した声

奴隷墜ち

ある意味死刑より辛い処分だった。

これからの人生を弄ばれる事が確定するのだから。


「やめて‥ヤメテェ!」


私は叫んだ、喉が枯れるまで。



連れて行かれるあの子は振り返り私に微笑むと呟く。



「もう君を守れないや」


そう涙を見せると、村長に連れて行かれる。


そんな、嘘よ


こんなのあんまりよ


全部私のせい‥


そう私のせい


なら、私が償える方法がまだある







冒険者になる。











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