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公募の準備

執事のグイードは、早速二人の殿下の結婚相手を公募する準備を始めていた。

公募だからといって、殿下たちに会わせるわけにはいかない

それに公募の情報が広がれば、平民から他国まで、あらゆる人から応募があるに違いない。

危険であるというだけではなく、どれだけくるかもわからないし、おそらくきりがない。

それに将来は王族と並び立つ者を選ぶのである。

ただ気に入ったからという理由で指名されて困るのは、この先も王族に仕える者の方なのだ。

そこで、能力を測ることを目的とした査定をして、人数を絞り混んでいく方向に持っていくのが適切であると考えた。

まず王族に求める能力を書き出し、それをどう見極めるのか考え、判断する方法を定めることにしたのである。

色々と書き出した結果、グイードは“知力”“体力”“人間性”この三つを軸にしようと決めた。


まずは知力。

頭の悪い者に公務は勤まらない。

通常業務はもちろんのこと、外交には多くの知識が必要である。

各国の習慣を学び、失礼のないよう配慮できなければならない。

そして、常に新しい情報を取り入れ、必要に応じた対応を求められることも多い。

理解力に乏しく適応力がない者、判断力に欠ける者は論外だ。

できれば見識のある者が理想である。


そして体力。

特別高い運動能力は要求しないが、病弱な者や公務をこなせない者では困る。

殿下たちの公務は立ちっぱなしや、長距離の徒歩などが要求されやすい。

顔見せのためにバルコニーに出るにしても長い階段を上る必要があるし、視察の際は話を聞きながら、案内人と歩き回ることも多いのだ。

それができず、常に欠席するような者はできれば弾きたい。


最後は人間性。

殿下たちの伴侶となる以上、社交の場に顔を出すことが多くなる。

見た目もよいに越したことはないが、やはり人柄というものは大切である。

上級の者は、見た目に惑わされることなく、人間性を見抜く力をもつ者が多い。

彼らに気に入られるのは難しくても、嫌悪されるようでは困る。

今後の外交にあたり、国の足を引っ張るようなことになりかねない。

そして、今後仕えなければならない我々臣下にとっても、よい人と巡り会いたいという希望がある。

良い人の元で働くことができれば、労働意欲を上げることができるに違いない。



三つの柱が決まったところで、次はそれらを確認するための流れを決めなければならない。

この中で一番人数を絞れ、候補者に不公平感を与えないのは知力で判断することだろう。

正誤のはっきりしているもの、目に見える結果として納得できるものであれば、落選の不満を減らすことができるはずだ。

これを最初に持ってきて、一定の人数まで減らしておけば後は選別が楽になる。

そして運ではなく実力を備えているかも見なくてはならないのだから、この試験は二段階で行ってもいいだろう。


そして人間性は、候補者をしばらく一緒に生活させていけば、見えてくるものが多いはずである。

執事として多くの人間と接してきた人間はグイードだけではなく、侍女などもいる。

彼らに行動を監視させて人柄について評価させるか、悪いものが目に付く場合に減点するという減点方式をとるのも一つである。

どちらにせよ多くの人間を少人数で見ることになり、彼らの目が行き届く範囲にも限度があるため、候補者の人数の絞り込みが必須だ。


後回しになっている体力の面は、彼らを長時間立たせておいたり、自然に長距離歩かせたりできれば計測できるものだ。

座ったり休んだりできない環境をこちらが作って、その中に彼らを置いて観察すれば充分だろう。



グイードは状況の整理が落ち着いたところで一息つくことにした。

休憩のため、温かいお茶を用意する。

頭を使いすぎたのか疲労感が強いので、お茶は香りが強いものを選び、その中に砂糖をたくさん入れることにした。

この後の業務に影響してはならない。

お茶を入れて一息ついてみると、一度整理した内容が再び頭の中に浮かんできた。

この判定はこうしよう、どうしたらより正確に判定できるだろう、など、自分が決めた内容であるにもかかわらず、改善案がどんどんと湧いてくる。

気が付けば座っているだけで、休んでいるはずが全く休んでいない状態となってしまっていた。


「何を悩んでいるんですか?」

「大丈夫ですか?」


グイードは珍しく声をかけられた。

いつもなら先に声をかけるところだが、考えることに集中していたため、彼らが近くに来ていることにすら気が付いていなかったのである。

そして、周囲に心配されるくらい難しい顔で真面目に考えていたらしい。


「ああ、すまない。少々厄介な案件を抱えてしまっていてね、今後のこの国の未来に関わる大事なことだから、そちらに意識を捕られてしまったんだ。申し訳ない」


仕事を疎かにすることはないものの、自分を見たものに心配をかけるのは執事として失格である。

そんなこと思いからつい謝罪の言葉が先に出た。

そして、彼らは心から心配してくれているが、今回の話は極秘で進める必要がある。

できるだけ、ぎりぎりまで、関係者にも詳細を伝えないつもりなのだ。

殿下との結婚の条件が関わっており、とてもデリケートな内容である。

いくら信頼できる部下であっても、相談することも話すこともできない。


彼は数日間、執務をこなしながら一人で真剣に悩んだ末、ついに公募概要を完成させたのだった。

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