9-お泊まりside男子②
今日は2話更新です!
これは2話目なので先に1話目の方を読んでからお読みください!
ついに一成と弥恵が同棲している理由が明らかに……!
「このケーキ美味しいですね」
「だろ? それに値段もそこまで高くないからいいんだよ」
夜ご飯を食べ終わったあと、蓮也の持ってきてくれたケーキを食べています。僕はショートケーキを貰ったんですが、甘すぎないので紅茶に合います。
「てか紅茶美味いな……俺、どちらかと言えばコーヒー派だったけどこれはマジで美味い」
「お褒めに預かり光栄です。おかわりはいかがですか?」
「もらうもらう!」
紅茶の淹れ方は父がまだ生きていた頃に聞いたものをなんとか思い出し、試行錯誤で再現したものなのでとても嬉しいです。記憶の中にある父の紅茶はもっと美味しかったのでまだまだという気持ちもありますが。
「ちなみにこのケーキってどこで売ってますか?」
「ん? お店の場所を口で言うの難しいからあとで位置情報共有するわ。中松さんにプレゼントか?」
「はい。弥恵も好きそうだと思って」
美味しいものは2人で共有したいですからね。今度はチョコケーキでも試してみましょう。モンブランはありますかね? 弥恵が大好きだからあるといいですね。
「……どうかしましたか?」
「いや、お前ら本当に付き合ってないんだよな?」
「そうだって言ったじゃないですか。そんなことも覚えてないんですか?」
「そう言われるの納得いかねぇ……」
グヌヌ、とでも言いたげな表情で蓮也がこっちを見てきますが意味が分かりません。付き合っていないといるのを信じてなかったんでしょうか。
その後他愛もない会話を続けていると時計の針が11を指していました。楽しい時間は早いですね。
「私はお風呂に入ってくるので待っていてください」
「あ、じゃあ一成の部屋見学しててもいいか?」
「いいですよ。散らかしたりはしないでくださいね」
「おう! ……ムフフな本はどこにあるんだろうなぁ?」
「何か言いましたか?」
「いや、なんでもない!」
蓮也が小声で何かブツブツと言っていていましたが、なんだったんでしょうか。部屋まで案内したあとお風呂に行こうとすると凄くいい笑顔で送り出されました。怪しいのでいつもより早く出ましょう。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「何やってるんですか……」
「え、ベッドの下の隙間にいかがわしい本がないかなって……一成!?」
「そんなことですか……」
風呂を短めに終わらせて部屋に戻るとそこにはスマホのライトを使って照らしながら必死にベッドの下を覗き込む蓮也の姿がありました。いかがわしい本と言いますがそもそも僕たちまだ17歳ですし、何より
「弥恵がいるのにそんな本持ってると思いますか?」
「確かになぁ。というか一成に他意はないって分かってるけどその言い方は誤解を生むぞ?」
「何故ですか?」
「あー、いや、なんでもない」
もしも私がそんな本を買っていて、それがバレたら弥恵と一緒に住むなんて出来なくなります。それに弥恵に嫌な思いをさせるかもしれないことをできるわけないじゃないですか。
「ちょっと退いて貰えますか? 布団を敷くので」
「悪い悪い。ベッドなのに布団もあるんだな」
「母が来た時のためのやつですよ。すみませんが布団の方で寝てください」
「おけおけ」
そう言って部屋の隅に置いておいた布団を敷きます。いつもは押し入れの中に閉まってありますが事前に出しておきました。
「じゃあ寝ますか。電気消しますね」
歯を磨いたあとそう言って部屋の電気を消すと辺りは月明かりもない闇の世界に。寝ようと思って目を閉じましたが蓮也に声をかけられました。
「なぁ、一成」
「どうかしましたか?」
「前は教えてくれなかったけどなんで同棲しているのか聞いてもいいか?」
「いいですよ」
「ダメか、そうだよ……いいのか!?」
蓮也が驚きからかガバッと布団から起き上がった気配がします。まぁ、前断られたことに簡単にいいって言われたら驚きますよね。
「はい。今回は事前に弥恵にも許可を取っておいたので。もちろん誰にも言わないという約束で、ですからね」
「約束する」
「では、話しましょう。僕と弥恵が一緒に暮らしている最大の理由にして唯一の理由。それは弥恵が一切の家事が出来ないからです」
「は?」
何故それだけで、と蓮也は言いたいんでしょう。しかし蓮也の想像している家事の出来なさと弥恵のそれは一線を画します。
「まず料理。弥恵の中に強火以外の火の強さは存在しません。また小さじも存在しません。全て大さじです。砂糖と塩を間違えますし、なんなら酢とみりんを間違えます。肉の生焼けも当たり前です」
「お、おう」
「次に洗濯。色が出るものを白の服と一緒に洗おうとします。手洗いのものを平気で洗濯機に入れようとします。洗剤と柔軟剤の入れる場所を間違えます。弥恵が下着を自分で洗えるようになるまでにどれだけ僕と弥恵のお母さんが苦労したと思いますか」
「あの、一成さん? ちょっとコワイですよ?」
あの日々は本当に辛かったですね。僕も男ですから弥恵の下着を見るわけにはいきません。だから僕は座学で知識を徹底的に叩き込みました。実践は全部弥恵のお母さん任せでしたが。
「そして掃除。変なものを吸い込んで掃除機を故障させます。片付けを始めれば何故か片付ける前よりも散らかります。トドメに本人にやる気もありません」
「は、はい」
「さて、こんな娘を一人暮らしさせられますか?」
「無理だな」
「しかし高校に行かせるには一人暮らしをさせるしかない。そこにちょうど家事が出来て学力が同じくらいの一緒に住んでいる同級生の男の子がいました。その子に頼るのはもう仕方ないでしょう!」
「その男の子が一成だったと」
「はい。これが僕と弥恵がひとつ屋根の下で暮らしている理由です」
ちょっと力が入ってしまいました。完全に蓮也はドン引きしてますしちょっと言い過ぎましたかね……誇張は一切ないんですが……
「それが本当なら納得だわ」
「一から十まで真実ですよ。誰にも言ってはいけませんからね」
「こんなの言っても誰も信じないわ……てか高校よりも前から一緒に暮らしていたんだな?」
「じゃあ次はその話をしましょうか」
こうして夜は更けていきました。友達を自分の家に招いてのお泊まりは初めてですがとても楽しかったです。
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