36-休憩
弥恵を腕に引っ付けたまま、お化け屋敷から脱出しました。辺りを軽く見渡すと近くのベンチに座っている蓮也と錦田さんが。
「蓮也、錦田さんの様子は?」
「あー、大丈夫だぞ。だいぶ落ち着いたようだし」
「うん……先に行っちゃってごめんね?」
「気にしないでください。逆に無理させてしまって申し訳ないです」
「正直私も行くまでは大丈夫だと思ってたから……」
どうやら僕が思ったよりは錦田さんは大丈夫ですね。少し安心した後、蓮也の方に目を向けるとしっかり目が合います。
僕の視線の先には慰めているのか錦田さんの頭を優しく撫でる蓮也の姿が。
蓮也の視線の先には僕の腕を抱える弥恵の姿が。
(このことにはお互い触れないということで)
(もちろん)
一言も言葉を交わさず、目だけで通じ合った僕たちはしっかりと頷きます。いつもなら全力でいじるところですが状況が状況ですからね。ここはスルー一択でしょう。
「とりあえず何か飲み物でも買ってきましょうか。何か指定はありますか?」
「俺はコーラ!」
「私はお茶をお願いしてもいいかな?」
「わかりました。弥恵は」
「ついてく」
「ということなので行ってきますね」
弥恵を引き連れて近くの自販機へ。自分用も含めてお茶を2本と蓮也用のコーラ、そして弥恵の紅茶を買います。
「どうぞ」
「ん、ありがと」
「落ち着きましたか?」
「うん。もうお化け屋敷にはいかない……」
「あはは」
ピンポイントで弥恵の苦手なところでしたからね。音で驚かすのは定番と言えば定番ですが今まではそこまでのものは味わったことがなかったので油断していましたね。あとたいていのものなら驚かすタイミングが分かるから覚悟が決まっていたのもありますか。
「それで弥恵、落ち着いたならそろそろ話してもらえませんか? さすがに僕も恥ずかしいんですが……」
「もうちょっとだけ」
「でも片手じゃペットボトル3本持つのは厳しいんですよ」
「ならこうすればいい」
そう言って弥恵が僕の腕を放したあと、流れるようにもう一本のペットボトルを僕の手から奪い取りました。そしてそのまま両腕を僕の体に回して抱き着いてきます。
「どう?」
「どうって……これだと歩きにくいですよ」
「なら10秒だけ」
そういって僕の体に頭を押し付けてくる弥恵。恥ずかしいのは何も解決していないこととか言うことはいろいろある気がしましたが、弥恵の満足そうな顔を見ているとどうでもよくなりましたよ。
結局たっぷり30秒ほど弥恵に抱き着かれた後、蓮也たちの元へ戻るのでした。




