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34-流れるプール

 波のプールでひとしきり遊んだ後、僕たちは流れるプールのほうに移動しました。泳げない僕は相変わらず浮き輪でプカプカと浮いているだけですが。


一成(かずなり)ー、楽しんでるか?」

「十分楽しんでますよ。それにしても早いですね」


 後ろから蓮也(れんや)が声をかけてきました。ついさっき「一周してくるぜー!」と人の間を縫って泳いでいったはずなのですが。そんなに小さい訳でもないでしょうに。


「大きいからこそ人の隙間があってある程度泳げるんだよ。というか俺だけじゃないし」

「負けた……」

「あ、弥恵(やえ)。おかえりなさい」


 蓮也の向く方に視線を向けると蓮也に続いて一周してきた弥恵の姿が。負けたのが不満なのかこちらに頭を突き出してきたので撫でてあげます。


「はぁ、2人とも速すぎるよ……」

睦美(むつみ)は私たちより水の抵抗が大きいから仕方ない」

「なんのこと!?」


 弥恵が満足した頃、錦田(にしきだ)さんが戻ってきました。2人が速いのもそうですが、僕のことを一人置いて行っていいのか悩んだため遅れて追いかけたのに差がほとんどないのは錦田さんも速いことを示しています。


「あーこうしてると夏って感じがするなー。一成、お茶」

「僕はお茶ではありません。というかプールの中に持ち込んでないですから自分で買ってくださいよ。それにはサンダルのあるとこまで戻らないといけませんが」

「そこまでする気分じゃないしいいや。あ、ここで一成のくせに使えねえなとか言ってみるべきだったか?」

「そんなこと言ったら今日の夜ご飯は蓮也だけ竹串ですね」

「ひでぇ! というか食べ物ですらないじゃねえか!」


 失礼なことを言った相応の罰だと思いますけどね。本当にそんなことしたら竹串をくわえて、夜ご飯を食べる僕たちのことをジッと見てきそうですが。


 それにしても蓮也じゃありませんが確かに夏って感じがしますね。刺すような日差しにうだるような暑さ。それとは対照的に冷たいプール。これは夏でしか味わえないことですから。


「蓮也がプールに行こうっていわなきゃ行かなかったですからね。誘ってくれてありがとうございます」

「なんだよいきなり。それより俺はここのチケット譲ってくれたっていう一成の知り合いに感謝してるよ。いけてせいぜい市民プールだと思ってたし」

「確かにそうですね。僕たちはバイトしている訳でもないからお金に余裕があるとは言えませんし。ここは高いですから」


 もらった日に調べましたが、某夢の国ほどでは無いにもののここも中々いい値段をしています。しかも遊園地の乗り放題付きともなればなおさらです。それをわざわざ準備して渡してくれた鬼怒田(きぬた)さんたちには本当に頭が上がらないですよ。


「あ、そうだ一成。ちょっと俺にも浮き輪貸してくれよ」

「いいですよ。僕専用ってわけじゃないですし」


 泳げないから僕が使っていましたが、ここなら足も余裕で届きますからね。貸してほしいというなら二つ返事で貸しますよ。


 僕が浮き輪からどいて渡すと蓮也は器用に浮き輪の上に座ります。水から体が出ているからか「あちー」とか言ってますが、顔は楽しそうに笑っています。


「かずくん、貸したの?」

「はい」

「「……」」


 ちょうどじゃれあってた弥恵と錦田さんが戻ってきました。そして状況を確認した後、弥恵がこちらに目線を送ってきます。たぶん今僕たちが考えていることは同じでしょう。


「「せーの!」」

「うおおおおおお。世界が回るーー」

「すごい息ぴったりだね……」


 蓮也を挟むように移動したあと、2人でタイミングを合わせて浮き輪を回します。蓮也も最初は驚いたものの、おもしろいのかケラケラと笑っています。だから次の瞬間、2人で思いっきり浮き輪ごとひっくり返してやりました。


「……ぷはぁ! かずな――」

「夜ご飯」

「……中松(なかまつ)さーん?」

「かずくんずるい!?」


 水の中から出てきた蓮也が恨めしそうにこちらを見てきましたが、人質……食質?で黙らせます。それに弥恵が文句を言っていますが知りません。


「ここは逃げるが勝ち」

「待てー!!」

「元気ですねー」

「ほんとにね。あ、私にも浮き輪貸してくれる?」

「いいですよ。もちろん何もしませんからね」

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