11-お目覚め
目が覚めたら弥恵が右腕に抱きついて寝ていました。おかげで身動きが取れず、右腕に当たる何かの感触を意識しないように素数を数えたり、献立を考えたりして時間が経つのを待ちました。
「……ん……んん……」
体感時間としては30分以上経過した頃、弥恵がモゾモゾと動き出しました。なので顔を右に向けると、まだ寝ぼけているのかトロンとした目をしています。
「おはよう……なんでかずくんがいるの……?」
「おはようございます、弥恵。それはどちらかと言えば僕のセリフなんですが」
僕の言っている意味が分からなかったのか、弥恵が僕の顔を見つめてきます。僕の方も弥恵の目を見つめていると、次第に意識が覚醒してきたのか目の焦点が合い始めます。
「!!!?!?!?」
「危ない!」
状況を理解したのか弥恵が僕の右手を放し、飛び起きます。ただ慌てていた上に元々端っこの方で寝ていたため、弥恵はバランスを崩しベッドから落ちそうに。咄嗟に体を起こし、右手で腕を引き、左手を背中に合わして弥恵の体を引き寄せます。
僕の運動神経を考えると奇跡のような反応ですが、弥恵の危機だったからでしょうか。火事場の馬鹿力は実在するんだと思いつつ安堵の息を吐きます。
「大丈夫ですか?」
「う、うん。大丈夫だから、その……」
「あ、ごめんなさい」
弥恵を助けるためだったとはいえ僕が弥恵のことを抱き寄せている状態で。そのことを指摘された僕は慌てて、でもそっと弥恵の体から手を退けます。
「……」
「……」
僕たちの間に気まずい空気が流れます。流石の弥恵も恥ずかしかったのか顔が真っ赤です。今の出来事かそれとも一緒に寝ていたことかは分かりませんが。
一方で僕の頬も赤く染まっていると思います。なぜならほっぺが熱く、心臓の音の主張が激しいからです。
一緒に寝ることに比べたら今のハグなんてよくやっています。ただ、今回はその後の弥恵の様子がしおらしくて。いつもと違う様子にドキドキしてしまいました。
「そ、そう言えば弥恵はなんで僕のベッドに?」
「そ、それは……!」
この空気を何とかしようと思い、一緒に寝ていた理由を聞くと弥恵はさらに顔を赤くし、黙ってしまいます。なんて言うか、調子が狂いますね。
「僕の推測を話してもいいですか?」
「……うん」
「昨日の夜、僕が眠ったあと弥恵は目が覚めました。それでお茶を飲もうとリビングまで行ったんじゃないですか?」
「……うん」
「その後いつもなら戻って眠るだけですが、昨日の夜は雷雨でした。戻ろうとした時、ちょうど近くに雷が落ちてしまい、怖くなった弥恵は僕の元へ。そんなところだと思ったんですがどうでしょう?」
「……うん」
昨晩はかなり酷い雷雨でした。なのでいつもの如く弥恵を部屋で寝かしつけたんですが、起きてしまったようです。結果一緒のベッドへ潜り込むという女子としてどうなのかと思う行動に出たわけですが、責める訳にはいかないでしょう。
それにしても弥恵が借りてきた猫のように大人しいですね。元々それほど多くない口数がさらに減っていますし。今回のはそれだけ恥ずかしかったんでしょうか。
「まぁ、仕方ないですね。滅多にあることでも無いと分かっていますが、気をつけてください。一緒に暮らして長いですが、僕も一応男なので」
「……うん」
「それじゃあ僕は朝食を作ってくるので、弥恵は自分の部屋に戻って着替えてきてください」
「あ、待って」
部屋から出ようとベッドから立ち上がると、弥恵に呼び止められました。なんだろうと思い振り返ると、同じく立ち上がった弥恵が正面から抱きついてきて。
「……ありがと」
いつもの無表情とは反対に真っ赤な頬をした弥恵が、下からこちらの顔を覗き込んで言い放ちます。その一言を言い終わると同時にそそくさと部屋を出ていく弥恵を呆然と見送ったあと、1人で深呼吸を。
これは今日1日、まともに弥恵の顔を見れそうに無いですね。
前話に評価くださいと書いたところ、多くの方がしてくださいました。
おかげで総合評価が1,000ポイントを突破。しかも現実恋愛ジャンルの日間79位にランクインしました!
作者は死ぬほどテンションが上がりました!
本当にありがとうございます!!
今後ともよろしくお願いします!




