8-注文
2日ぶりになってすみませんでした!
8月上旬。蒸すような暑さの中、1人家から出ました。目指す先は鬼怒田さんのお店です。
「こんにちはー」
「いらっしゃい。おや、一成くん。久しぶりだね」
「あ、静江さん。お久しぶりです」
クーラーの聞いたお店の中、待っていたのは男装の麗人、鬼怒田静江さんでした。暑い日なのにスーツを着こなしている姿は相変わらずイケメンです。
「球技大会ではアドバイス、ありがとうございました」
「いやいや、僕は大したことしていないよ。優勝したのは君たちの力さ」
静江さんは普段他の仕事をしているのか、最後に会ったのは球技大会前です。一応鬼怒田さん経由でお礼は伝えてもらいましたが、やはり直接言える時に言うべきですよね。
「妻は奥で仕事中だけど、もう少しすれば来ると思うよ。それまで待っているかい?」
「そうですね、少し待たせてもらいます」
「ならとりあえずこれをどうぞ。外は暑かっただろう」
「ありがとうございます」
そう言って静江さんは冷たい麦茶を渡してくれます。家からここまでさほど遠くないとは言っても、炎天下の中歩いていたので冷えたお茶はとても美味しいです。
「そう言えば一成くんたちは実家の方に帰るのかい?」
「はい。僕の親は海外なので会えませんが、弥恵の両親に顔を見せに行くつもりです」
「そうかそうか。家族は大切にしないといけないからね」
お盆に合わせてですが、僕と弥恵は弥恵の実家に行きます。父のお墓にも行きたいですし、弥恵の元気な姿を見せる必要があるでしょう。僕自身かなり楽しみにしていますし。
「一成くんがお母さんとも会えるといいけれど、厳しそうだ」
「そうですね。やっぱり仕事が忙しいみたいで」
この前連絡した時も上司の愚痴が返ってきました。それに合わせて帰れるなら帰る、とも言っていましたが見てる分だと中々難しそうです。でも元気なことが分かればいいんです。
「やっとお仕事終わったわ〜。あら? 一成きゅんいらっしゃ〜い」
「お邪魔してます」
「それじゃあ僕は裏の方へ戻ろう。一成くん、ごゆっくり」
静江さんと雑談をしていたら奥から仕事を終えた鬼怒田さんが入ってきました。今日もゴスロリ服で見た目のインパクトが凄いです。しかも夏用なのか露出が増えていて、立派な筋肉が見えているので余計に感じますね。
「それで〜? 今日はどんな用事かしら〜?」
「今度4人で手巻き寿司パーティーをすることになりました。なのでその具材として使うための魚介類の仕入れをお願いします。予算はこれくらいで」
4人というのはもちろん僕と弥恵、蓮也に錦田さんです。今度勉強会のあと、夕飯としてみんなで食べることになりました。蓮也の要望は僕の手料理でしたが、たまにはこんなパーティー形式のものでもいいでしょう。
「大丈夫よ〜ん! 切り身でいいの〜?」
「はい、お願いします。種類はお任せするので」
「任されたわ〜ん。それと当日、家まで届ける〜?」
どうしましょうか。前もって受け取っておいてもいいですけど、やっぱり当日のお魚が1番いいですし。それにここから家まで真夏に運ぶのは不安がありますね。
「お願いします。時間は6時くらいで」
「は〜い! いいやつ届けるわ〜!!」




