2-2人の関係
毎日更新2日目でございます!
楽しんでいただけたら幸いです«٩(*´ ꒳ `*)۶
「いいえ。付き合っていません」
僕と弥恵が親しいことがバレてしまい、現在問い詰められています。とはいえ今の僕の答えでみんな納得し──
「「「嘘つけ!!!」」」
「なんですと!?」
「あの中松さんが付き合ってもないやつに自分から話しかけるわけないだろ!」
弥恵は口数が少なく、基本的に他人と話しません。それこそ自分から話しかけることなんてほとんどありません。だから話しかける相手は恋人くらいしかいないだろう、というのが蓮也の主張ですね。
「とりあえずちゃんと説明するので聞いてください」
「よし、キリキリ吐け」
目の前でふんぞり返って椅子に座る蓮也の姿にイラッときたので課題は絶対に手伝わないことにしましょう。やっていない蓮也が悪いんです。
「まず僕と弥恵はいわゆる幼なじみです。昔から家が隣同士で、小さい頃から遊んでたので仲がいいですがそれだけです。僕にとって弥恵は家族みたいなもので、決して恋仲ではありません」
そう、弥恵とは家族ぐるみで仲良くしていますがそれだけです。むしろどちらがそういう感情を持っていたら今の状態を保てません。
「そしてお互いに用がない限り学校では話しかけない、と弥恵と約束してました。理由は今みたいになるのが嫌だったからですよ」
弥恵は身長が低く、基本無表情ですが幼い顔立ちをしていて可愛らしいです。贔屓目を含めてですが学年で上位の美少女だと思います。そんな弥恵と仲良くしている姿を見られたら色々と面倒なことが起こると分かっていたので接触を避けてました。
とはいえ今日のはそもそもお弁当を忘れた僕が悪いです。むしろ弥恵には感謝しないといけませんね。わざわざ僕の分を持ってきてくれたんですから。
「つまり一成は中松さんとは幼なじみだから仲はいいけど、恋人ではない」
「そうです」
「隠してたのは面倒事を避けるため」
「その通りです。なんなら弥恵に聞いてもらってもいいですよ」
そう言って弥恵の方を見たらあちらはあちらで人が集まってました。こっちが男子だらけなのに対してあっちは女子だらけです。相変わらずの無表情ですが若干嫌気がさしてますね。ほんと申し訳ないです。
「……よく分かった」
「分かってくれてよかったです」
「それで1つ質問だ。どうしてお前が家に忘れた弁当を中松さんが持ってきたんだ?」
先程まで安堵や納得の色が浮かんでいた男子達の目が一転、緊張を孕んだものに変わりました。無駄に今日の蓮也は鋭いですね……
「たぶん母が渡したんでしょう。同じ高校に通っているのは知っていますし」
「前に一成自身の口からお前の母さんは海外で仕事しているって聞いたぞ。そんな人が都合よく今日だけ帰ってきてたのか?」
チッ、騙されませんか。父は僕が幼い頃に亡くなっていて、母は今確かドイツで働いてたはずです。蓮也に話した記憶はありますがまさか覚えていたとは。その記憶力を勉強に活かして欲しいところですが。
「あとついでにお前の地元はこの高校からかなり遠いとも聞いた。つまり一成、お前は中松さんと同棲している、そういうことだろ!?」
「……カンのいいガキは嫌いですよ」
「こいつをひっ捕らえろ!!」
まだ他にも実は弥恵が弁当を作ってきてたとかもありえるのになんでピンポイントで当ててくるんですかね、コイツは。
そんなふうに現実逃避している間に体つきのいい村山くんに腕を捕まれ、背中に回されました。この姿は完全に処刑を待ってる罪人ですね。
「一成、弁明は?」
「理由は弥恵の名誉のために言えませんが、特別な事情があってのことです。お互いの両親も同意してます。そして先程も言ったように弥恵のことは家族みたいに感じているためやましいことは何もありません」
その後も「美少女と同棲とか羨ましいぞ!」とか「理由ってなんだよ!」とか中には「中松さんがどんな下着を履いてるのか教えてくれ!」などといったことを言われましたが全て知らぬ存ぜぬ、やましいことはないで答え続けました。お互い自分の部屋に私物は置いてあるうえ、洗濯物も下着などは自分の部屋でそれぞれ干しているので本当に知らないんですよね。というか知っていても教えませんよ。むしろクラスメイト達の前でそんなこと聞ける精神力に正直舌を巻きます。
結局僕の真摯な対応のおかげかそれとも部活が始まる時間になったからか、男子たちは解散し僕は無事釈放されました。何人かはすごい目でこちらを睨んでいましたが、肩を竦めるしかありません。こちらをやむを得ない事情があるんですから。
とりあえず今はお弁当を食べて帰りましょう。明日は実力テストがありますからね。




