14-動物園④
更新が遅くなってしまい申し訳ございません_| ̄|○
遅れた理由は作者のリアルの都合でした……ほんとごめんなさい……
「弥恵?」
トイレから帰ってきた僕が見たのは声を荒らげ、弥恵を無理やり連れていこうとしている男と連れて行かれないように抵抗する弥恵の姿でした。
「……フー」
ダメです。落ち着くのです、僕。歩くのは止めませんが考えるのも止めてはいけません。考えを止めてあの男から弥恵を取り戻せることはないでしょう。
相手は推定20代の男性。肩幅も広く腕も太いのでかなり力があるでしょう。つまり無理やり弥恵を助け出すのは不可能……じゃあ口で説得しますか。
周りの様子を確認。多くの人々が見ており、監視カメラもあります。それにあの走り去る影は恐らく……なら僕がするのは時間稼ぎですね。スマホを少し操作してから男に話しかけます。
「あの、すみません」
「あ゛あ゛ん!?」
声をかけた男が足を止め、目を吊り上げてこちらを見てきます。中々の迫力はありますが、昔父に怒られた時に比べたら全く怖くないですね。
弥恵が心配そうな表情をしています。大丈夫だと伝えるためにも微笑みを忘れないようにしましょう。
「彼女、僕の連れなんですよ。なのであなたが彼女をどうして連れていこうとしているのか聞いてもいいでしょうか?」
「あ? そんなの俺様とこれからお茶を飲みに行くからに決まってるだろ?」
弥恵は首を横に振っています。万が一を考えて聞きましたが無駄でしたね。いえ、時間稼ぎという意味ではよかったんですが。
「嫌がっているみたいなので弥恵のこと、返して貰えますか?」
「はぁ!? 俺様について行くんだろ!? なぁ!?」
「キャッ」
そう言って男は弥恵のことを強く引っ張り、その拍子に弥恵は転んでしまいます……アイツ……少しでも穏便に終わらせようと思ったのが間違いでしたね。
「あの、今の状況分かってますか?」
「あ゛ぁ゛!?」
「分かってるかって言ってんですよ。いいですか? あなたのしてることは立派な犯罪ですよ? そこら辺分かってるんですか?」
「な、何言ってんだおめぇ!?」
「知ってましたか? ナンパって違法な場合も多々あるんですよ。ちょっと行く手を塞ぐだけでも軽犯罪法違反なんです。それと比べてあなたが今してることはどうなんでしょうね」
「な、な」
目に見えて男が狼狽え始めます。もう一押しですね。手は絶対緩めません。
「少なくとも無理やり未成年を連れていこうとしている時点で誘拐ですか。いえ、終えていないから未遂ですね。それでも犯罪ですが」
「いや、俺様は」
「立証も簡単ですね。目撃者は多くいますしあそこに監視カメラもあります」
「な!?」
「弥恵、今です!」
男の後ろにある監視カメラを指さすと男の意識がそちらに向きます。その隙に握る力が緩んだ男の手を振り払い弥恵がこちらに逃げてきます。
「警備員さん、あそこ!」
「分かった! そこのお前、大人しくしろ!」
ちょうどその時警備員の方々が来てくれました。タイミングがいいと言いますか出来ればもっと早く来て欲しかったと言いますか……
「な、警備員!?」
「これだけ騒ぎを大きくすれば来るでしょう。自業自得です」
「……てめぇさえいなければ!!」
「かずくん!」
「フギャッ……」
痛ったいですね……油断しました。警備員さんの方に視線を向けてたおかげで気づきませんでした。反省ですね。あぁ、血の味がします。唇でも切れましたか。メガネもどこかに飛んでいってしまいました。見えない訳ではありませんが不便ですね。
起き上がると男は既に警備員さん達に取り押さえられてました……この後の行動は完全に私怨です。ただひたすら彼に恐怖を刻み込むために、この怒りを少しでも伝えるために父の教えを活かします。
『いいか、一成。相手に思いを伝える時はそれだけを思って相手の目を見るんだ。真っ直ぐな思いは相手に絶対届くからな』
「あはっ。暴行……いえ、傷害罪も追加ですね。せいぜいあとで後悔するといいですよ」
痛みを誤魔化すために笑います。僕の視線で相手の目を射抜きます。あなたのしたことを僕は絶対に許さない。
「あ……あ……」
男は体を揺らしたあと項垂れ、警備員の人達に連れていかれました。これでこの騒動は終わりですね。
「かずくん、大丈夫?」
「凄い痛いですね。でも、まぁ大丈夫です。弥恵の方は何も怪我とかしてないですか?」
「大丈夫。ちょっと服が汚れちゃっただけ。あとこれメガネ」
どうやらメガネは無事だった様子。弥恵に怪我がないことを喜んでいるとこちらに向かってくる2人の姿が。
「おう、一成。派手にやったな」
「大丈夫、大畑くん?」
「蓮也、茶化さないでくださいよ。あと僕は大丈夫ですよ、錦田さん。2人とも色々とありがとうございました」
蓮也は警備員さんを呼んできてくれて、錦田さんは一部始終を動画で撮ってくれました。おかげでかなり助かりましたね。
「お取り込み中に失礼するよ」
「警備員さん?」
「一応君たちにも同行してもらっていいかな? 君たちの口から今回の出来事の流れを聞きたいんだ」
「分かりました。あの、これ大畑くん、この男の子が助けに入る少し前から撮った動画です」
「あ、僕も声だけですが助けに入ったあとの会話を録音してあります。どれくらいちゃんと残ってるか分かりませんが」
助けに入る前にスマホを操作したのは録音をするためでした。ちゃんと使ったことはないので撮れたか不安ですけどね。
「ありがとう。後で確認させてもらう。それじゃあ申し訳ないがついてきてくれ」
さて、帰るのが少し遅くなってしまいますが、きっちり全て終わらせましょう。
動物園編はあと2話で終わる予定です。
今後も読んでくれると嬉しいです!((((ノ。・ω・。)ノ♡




