表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

スローライフはゆるさない

作者: 枝無つづく

 なろうラジオ大賞がまだ応募しているのを見つけたので、せっかくなので書いてみました。

 約一時間クオリティなので気軽にどうぞ。






 運命の女神の仕事は、人間の未来に苦難を刻むことだ。

 人間からは嫌われる仕事であるのはわかってる。あらゆる不幸、あらゆる受難、あらゆる理不尽は元を辿れば全部、運命のいたずらなのだから。


 けれどもよく考えてほしい。もしも、運命なんて概念が存在しない世界だったら。全ての人間が自分が生まれてから死ぬまでの全てを予想通りに体験して、何かに挑戦したとしても結果が読めてしまって新鮮な驚きもない。きっと無味乾燥な一生を退屈に消費するのだろう。


 そう、だから運命の女神は感謝されるべき存在であり、運命的に与えられた苦難は心して受け入れるべきなのだ(どこぞの勝手に死神を絞め殺した通りすがりのバカクレスとか言語道断である)。

 そう、だから……


「チート能力もらって異世界にいったから悠々自適にスローライフしたいとか言語道断ですよーだ! そんなやつにこそ面倒くさい試練の雨を降らしてやるわざまぁみろ!」


 スローライフはゆるさない。

 どんなチート能力だろうが知ったことか。その程度は二、三千年前にはゴロゴロいたわ。あらゆる英雄英傑を沈めてきた私たちの手腕をなめんじゃないわよ!


「ちょっと姉さん糸出し過ぎ! ちょっと落ち着いて!」

「そうよ姉さん、怒っても仕方ないでしょ?」

「だってだってえ!」


 運命の糸を紡いで、測って、ハサミで切る。

 私たち運命の女神は、昔からそうやって人間達の運命を決めてきた。他の神々にすら口出しできない特別な役割を担う神として、三姉妹で紀元前からやってきたのに……


「いくらなんでも人間増えすぎよ! こっちは古今東西『三柱』しかいないのよ! それなのに文句ばっか言って! そもそも『運命の女神の悪戯』って何よ! こっちは仕事だから真面目にやってんだけど! そうじゃなかったら……ぁぁあああ!」


「まーた始まったよ。この前の人口七十億がどうとかって話からだっけ」

「異世界転生ブームとかで面倒な仕事増えてからじゃない?」


 こっちは専門技術だから簡単に増員とかできないのに!

 私たちだって偶には仕事を忘れてゆっくりしたいのに!

 隠居してのんびりスローライフとかやりたいのに!


「こちとら人間がいるかぎり仕事がなくならないのよ! 少しくらいやつあたりしてもいいじゃないのよー!」


 今日も今日とて仕事は山積み。

 スローライフはゆるされない。

 







 『運命の女神』のモデルはギリシャ神話の『モイライ』という三姉妹の女神様です。

 北欧でも運命の女神は三人組なので、もしも全部の『運命の女神』が世界共有で三人しかいなかったら大変だろうなあと思って書いてみました。


 よく小説の地の文で黒幕みたいに名前を使われますが、真面目に仕事をしているだけで嫌われるとしたら大変ですよね……なんてね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 楽しかったです。ありがとう
2019/09/29 04:40 退会済み
管理
[良い点] まあ、人間味溢れた神様ですね。 八つ当たりもしたくなるよなぁこんな環境w [気になる点] 野分鏡花と花散里天女が受難ばっかなのってこいつのせいか? [一言] なんかこれまでの短編で一番日常…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ