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第3話 卓也の秘密

放課後、最後の授業が終わり、ジューンは帰宅準備をしていた。


ステッキをカバンにしまうその時、誰かが彼女の手をつかんだ。


ジューンは上を向き、背の高い女子生徒が三人立っていた。彼女たちの顔を見ると、ろくでもないことを考えていたことをジューンは知っていた。後ろにいた二人はクスクス笑いながら、ジューンを見続け、ステッキをつかんだ一人がジューンの顔に近づいた。


彼女の名はアリス・マイヤー。背が高く、センスやスタイルがよくて男子の中で人気だった先輩だった。

しかし、彼女と彼女の友達はよく生徒に悪さをしてることを皆知っていた。教授たちに彼女たちの行動を報告した生徒もいたが、アリスの父が学校の副校長だったので、結果、何も変化はなかった。


その悪女が今、ジューンと会話を始めようとしていた。


「ねぇ、ジューン。ちょっと付き合ってくれない?」


「はい?私、女の子に興味ないんで。」


「はぁ?いや、そういう意味じゃなくて。手伝って欲しいことがあるの。」


「振られたからって、次は無理やり誘っても無駄ですよ。」


「だ・か・ら!!そういう意味じゃない!ジューン、あなたに掃除係を頼みたいの。」


「無理やり誘ってメイドごっこですか。アリス先輩、いつそんな趣味に目覚めたのですか?皆さんに言いふらしてもいいですか?」


ジューンは平然とした顔で返事をし続けた。


一か月前までアリスは全くジューンにかかわらなかった。なぜならその頃のジューンは学校のトップを狙えるほどの成績を持っていたからだ。しかし、斎藤卓也との事件以来、ジューンは最低クラス・ランクに落とされ、いじめ(・・・)のターゲットとなってしまった。


「うるさい!!」


マリアが机をたたいた。


「あなたね、いい加減にしなさい。私の命令に従わないとあなたの友達、メイの噂を言いふらしてやる。」


そう言ったマリアはジューンを黙らせ、掃除をする教室番号を教え、目の前から去った。


しょんぼりと一人で立っていたジューンは思った。


「(マリアの言うことを従いたくないけど……メイを巻き込むわけにはいかない!)」


そう思った彼女は指示された教室へ行き、カバンを一つの机の上に置き、掃除を始めることにした。


しかし、結果としてジューンはメイと会う約束を完全に忘れてしまった。


「(*´Д`) はぁぁ~~」


ジューンはため息をつき、床を一人で磨き始めた。


窓を全開にして机と椅子をすべて教室の前に移動させた。


すでに時間は五時。授業が終わってからもう一時間たっていた。


疲れ切ったジューンは椅子を窓のそばまで動かし、座りかけた。モップを壁に立たせ、真っ赤な夕日をじっと見ていた。


「(これもすべて斎藤卓也(アイツ)所為(せい)なんだ。)」


そう自分で思わせたジューンの目から一滴の涙がこぼれ、彼女の頬をスッとなぞった。


その涙は(あご)まで流れ落ち、最後には空気中を渡り、雨の(しずく)のように床に当たり、はじけた。


目を閉じたジューンは窓の外から小さい声で誰かが話していたことに気づいた。


「そうなんだよ。この世界では魔法があり、毎日が超~楽しくてさ、健太も来いよ。絶対喜ぶって。え?塾で出席取るから来れない?そんなこと言わないで、小さな旅行だと思ってこっちに来いよ。」


気になったジューンはちょっぴり窓の下を覗いてみた。後者の裏は立ち入り禁止されてたはず。


なのに、今、そこに人がいた。


しかし、おかしい。


その人物は一人だったはずなのに、誰かに喋っていた。


「(まさか、魔人と会話?え?まさか、裏切り者がこの学校に!やばい。先生方に知らせないと!……あれ?でも、あれなんだ?)」


ジューンの目は、その人物が耳元に持っていた変な黒い四角い装置にとまった。ジューンは気になり、もう少し頭を外に出してみた。その装置はよく見えなかったが、その人物は確かに斎藤卓也だった。今日見た彼と同じ服装を着てたため、ジューンは思わず彼の正体がつかめた。


「(なんでアイツがこんな場所に?放課後なのに家に帰らなかったの?そしてあのへんな装置は一体なに?)」


いろんな質問がジューンの頭の中から湧いてきて、とうとう気になりすぎて、調べに行くことを決めた。


ジューンは一階まで下りて、建物を出て、校舎の裏側を目指した。やっと卓也を見かけた場所へたどり着き、警戒しながら頭を壁の横に出してみた。彼はまだ同じ場所にとどまって先ほどの黒い装置を耳に当てたまま、喋り続けていた。


「(ここからもまだ見えない……)」


ジューンは好奇心に負け、リスクを取ることにした。彼女はまず、卓也の気を反対側に引き、そのすきに、近くの木の後ろに移動をしたかった。


「(よし、行くぞ!)」


彼女は魔方陣を空中に書き、さらに転送魔法をその上に書いた。


「そんでさ、健太。今日不思議なことが起こったんだ。発表の後、ネズミがどっかから現れて、僕の体を噛もうとしたんだ。」


卓也がそう言ったとたん、ジューンは一瞬止まった。


「でも、僕の完全自動防御魔法をオンにしていたから、噛まれずに済んだのさ。そんでもって、ちょいと催眠魔法でネズミたちの頭を探ってみたのさ。するとそのネズミたちはやはり誰かから操られてたことが解ったのさ。明日、生徒たちが全員戻ったら探知魔法を使い、犯人を見つけようと思うのさ。」


そう聞いた途端、ジューンは魔方陣を書くのを止めた。


「(え?完全自動防御魔法?催眠魔法?探知魔法?そんなの学校の教授たちにだって難しすぎるよ!)」


彼は嘘を呟いていたのか解らず、ジューンは怖がってしまった。


「(もし、そんな力を持っていたなら魔人より恐ろしいかも。仕返しどころじゃないよ、もう。これはまさに大事件だよ。)」


ジューンが考え込んでいる間に、卓也は耳元から黒い箱を外しポケットにしまった。すると彼はステッキなしで手を体の前に出し、何かの呪文を解き始めた。


彼の目の前に現れたのは紫色の長方形型の魔方陣。


周りの空気を軽く動かすほどの魔力を放ち、ジューンを再び驚かせた。卓也は自分の左右を確認してからその魔方陣の中に体を入れ、完全に姿を消してしまった。


それを目撃したジューンは壁の影から出てきて消えかけていく魔方陣のそばに行った。


「なによ、これ?紫色に輝く魔方陣なんて……さらに長方形型?…………ってことは、卓也は本当に自動防御魔法や探知魔法を使いこなせるっていうこと?」


ジューンの体は軽く震えていた。


なぜなら彼女は気づいてしまったから。彼に復習など不可能だったことを。


紫色の魔方陣は完全に消え、その場にいたのはジューンのみだった。


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