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第2話 ジューンの策

ウェスターン・リオン魔術高校。


ここには約500人の魔法使いの生徒が通い、魔法を学ぶ高校だった。


卒業した生徒たちは立派な魔術師になり、魔術研究者、王の護衛、軍の将官やら素晴らしい仕事を手に入れる可能性があった。


そしてそのウェスタ―ん・リオン魔術高校の生徒、ジューン・メルフィールドは元上位だったはずが今は485位。約一か月前、彼女は学校の問題児と定められ、最低ランクに落とされた。理由はすべて『転校してきた謎の生徒、斎藤卓也の仕業だ』っと、ジューンは明言する。


ジューンは彼を恨み、いつか仕返しをして彼を最低ランクに落とし、彼女が知った屈辱を味わわせたいっと思っていた。


クラスの皆から侮辱(ぶじょく)されたジューンはけして(・・・)泣いたり、弱音を吐かなかった。むしろ、平然とした顔を保ち、三階に向かって走って行った。


角を曲がり、三階の講義室の扉を開けたジューンはこっそりと中に入った。誰もいない講義室に一人で入っていくジューンは扉を閉め、奥にあった窓を開き、手に持っていたステッキで自分のブーツを叩いた。


ゆっくりと右足を窓の(わく)に乗せ、外に飛び出た。


するとブーツにかけた魔法が発動し、白い雲のような物質が足を囲んだ。


ジューンはバランスを取り、見事に空中を歩いた。


「(よし!)」


彼女の魔法は成功し、まるで空中に浮かぶ階段を下りながら二階の講義室の窓に近づいて行った。


運よく、先ほどの講義室の窓は開いていた。そして中を(のぞ)くと、ロン教授が次の生徒を呼び出す姿を目撃した。


「え――、では次はミスター斎藤。」


卓也の名を読んだ途端、皆は拍手し始めた。


「(・д・) チッ なんで卓也には拍手で、私には無礼な態度なんだ?」


ジューンは嫌な顔をして、心の中で卓也を呪い始めた。


「(でも今回は彼の思い道理に行かせないぞ!)」


そう言ったジューンはコートのポケットからネズミが三匹、ピョコっと頭を出した。


「(君たち、出番だよ!卓也の魔法をメチャクチャにしてきて!)」


ジューンはネズミたちを手に取り、窓の中に手を入れた。


チョロチョロと壁を下り、床を素早く走り、卓也の元までたどり着いた。


そして、彼の靴の上を上り、ズボンのすその中を通り、腰のあたりまでたどり着いた。


「(よし!よくやった!あとは彼が魔法を放つまで待っていればいいんだ。)」


しかし、ジューンの悪事は彼女の思い道理に行かなかった。むしろ、その逆だった。


「な……なんと!」


ロン教授は口を開けたまま、じっと卓也を見ていた。ほかの生徒たちも似たようなリアクションを取っていた。


卓也は素早く、魔方陣の中に文字を書き込み、1分50秒後に完成させた。


「水の聖霊よ!光の聖霊よ!俺の呪文に答えてくれ!」


その瞬間、噴水のように、上を向いた魔方陣が、水を一気に吐き出した。そして講義中の光が卓也の周りに集まり、水を一滴ずつはじけ(・・・)させた。一つ一つの水の粒をキラキラと輝かせ、まるで昼間に見える星のようだった。


そして終わりに講義室の端から端まで、大きな虹を作った。


「うわー!綺麗!」


「素敵!」


「すっげー!まじかよ?」


男子も女子も卓也を褒め始めた。


ロン教授は微笑み、うなずいた。


「ありがとうございます、ミスター斎藤。あなたは次々と素晴らしい魔法を見せてくれます。おかげで私の気分がすっきりしました。」


「いいえ、ロン教授。あなたの素晴らしい教え方が僕をここまで育ててくれたのです。」


そう言った卓也は皆の前でお辞儀をして、笑顔で席に戻っていった。


彼と比べてジューンは不満だった。


「(え?なんで?私のネズミがどうして彼の体を噛まなかったの?一体何が起きたの?)」


ジューンは混乱しながら焦ってしまった。


卓也はもう、講義室の前から下がり、自分の席に戻っていった。


そしてその途端、ジューンは目を大きくして見た。卓也は三匹のネズミを飼いならしたように彼らを手に抱え、頭をなでていた。


空中にいたジューンはあまりにもの驚きに、ポカーンと立つことしかできなかった。


「( ( ゜д゜)ポカーン )」


「――ジューン!」


彼女の気を取り戻したのは、誰かの声だった。ジューンは真下を見ると、髪が短くて茶色い少女が手を振っていた。


「――みえてるよ!」


下にいた少女はそう叫んだ。


「(見えてる?って何が?…………ハッ!Σ(゜□゜;))」


ジューンはダッシュで空中から降りてきた。


「メイ、ありがとう。けど、叫ばなくてもいいから。」


ジューンは顔を少し赤くして喋った。その女の子は笑った顔で、ジューンの注意を気にしなく、ジューンの頭をなで始めた。メイ・キャンプベルはちょっぴり天然だけど、とても明るくて、ジューンの唯一(ゆいいつ)の友達だった。


「まあ、誰も来なかったから大丈夫だよ。それより、何していたの?」


ジューンは不機嫌そうにため息をつき、メイに向かって喋った。


「アイツの発表を……見ていたの。」


「アイツ?ああ……斎藤卓也ね!!」


「う……うるさいよ、メイ。もっと静かに!」


「なーに?まさか、好きになったの?」


「んなわけないじゃん!ただ、彼の失敗を祈ってただけ。」


「ふぅ――ん。で、実際失敗したの?」


ジューンは頭を横に振った。


「むしろ大成功。」


「そう。彼、やっぱりすごいね。転校してきて、たった一か月だっけ?適当な田舎の村からやってきて、始めは魔法が全然使えなかった。けど、彼には才能があふれてて、一般生徒の魔法知識をすぐに突破。今は学校一位を目指してるんだよね?」


ジューンは黙りながら頭を縦に振った。


「さすがに、それじゃあ、ジューンは彼に勝てないかもね。天才と呼ばれてるんでしょ、彼?」

ジューンは拳をぎゅっと握った。


メイはジューンの下向きの顔を見て、両手でジューンの(ほお)を触った。そしてジューンの顔を押し上げ、メイと目を合わせた。


「で、まだ彼に復習したいの?もう、やめようよ。これ以上無茶なことをすると、今よりひどい状況に巻き込まれるよ。」


しかし、ジューンは視線をそらしてからメイに返事をした。


「ごめん。けど私は彼が来る前の日々をどうしても取り戻したいの。彼があの日、私のすべてを奪ってしまわなければ、皆からバカにされず、教授から見下されず、私の亡き母にも……あんなひどいことを言わなかった…………」


ジューンの体から力が去って行き、彼女は草の上に座ってしまった。


「もう私のことを放っておいて。次の授業あるのでしょ、メイ?」


「ううんんん……解った。放課後待ってるから、もうちょっと話そうね。約束だよ。」


「うん。覚えとくよ。」


メイはジューンに手を振り、反対側のビルに向かって走っていった。


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