謎 ルートget off
大学生、社会人になればなるほど遠ざかって行ってしまうことってたくさんあります。その要因は、世間体や精神の成長、それと固定観念とかでしょうか。
今回は謎々を題材に使わせていただいたのですが20歳超えて久々に謎々をしてみると結構面白かったです。皆さんも是非昔を振り返りつつ謎々やってみてください。
尚、本編でのなぞなぞの答えは後書きの方に書いておきますので答え合わせもしてみてください。
長く永遠に思える時間の中で孤独に耐え忍んだ。
たったの十八年だが彼にはとても長く永く感じたのだ。
実際、彼からしたらそうだろうと言わざる負えない。
生まれからずっと入退院を繰り返していて学校にもあまり通えていなかった。
一年のうち半分はベッドの上から病室の白い天井を眺めていた。残りの半分は安静にすることを条件に自宅療養していた。その時だって家の中は病室とあまり変わり映えのしない天井を眺めていることが多かった。
朝からすこぶる調子がいいと思えたときにだけ母に言って学校に連れて行ってもらうがそこに彼の居場所などはなく席に着くと周囲から奇異な視線を向けられる。
彼はずっと願っていた。
人並みの生活を送ること。
そんな願いが届いたのかはわからない。
神様はいつだって気まぐれなのだから……。
中学二年生の春、自分の病気を治せる医者が来日しているのだと教えてもらった。その医者なら万が一、億が一の可能性で治すことができるかもしれないと教えてもらった。
迷いはなかった。
「その人にお願いしたい。どうか教えてください」決意に満ちた瞳でそう言った。
医師はその医者の名前を教えてくれた。
「詳しくはわからないが何かの頭文字をとってSONと呼ばれているそうだよ」
何者かなんて彼にはどうだってよかった。人並みの生活ができるようになるのならば何にだってすがろう。それが悪魔だって構いはしない。
先生方の計らいで高校に入学することができた。
誰が何と言おうが高校生になれたのだ。
知らない人たちの中で新しいスタートを切ることができる。今の僕にとってはこれ以上にない程の喜びだ。
今までは居なかったけれど高校生になれば自然と彼女ができるはずだ……そうだよね?
部活動に打ち込むのも一興かもしれない。運動部ならばサッカー、バスケ、バレー、野球、テニス。
うーん、どれも捨てがたい魅力があるな。
文化部なら、園芸、パソコン、オカルト、いやここはやはり帰宅部という選択肢も……
そんな風に一人で勝手に考え込んでいると声をかけられた。
「あのーもう入学式終わってるんだけど。クラスの場所わかる?」
そう言われて辺りを見渡すと先ほどまでいた千人以上の今年の入学生たちの姿がなかった。慌てて立ち上がり教えてくれた先輩にお礼を言って急いでクラスに戻った。 クラスに近づくとにぎやかな声が聞こえてきて少しだけ安心した。
体育館から戻り自由時間を与えられているようで担任の姿は無かった。
来た時にはまだ張り出されていなかったがどうやら席の場所については黒板に張り出されていた。
クラスの人数は席の数が六列×六行なので36人の生徒がいるらしい。
僕の席は窓際の前から三番目の席だ。そこだけがぽっかりと空いていたので教室に入った時点で何となくあそこの席なんだろうと思っていた。
男女の配置はバラバラでたぶん名前順で並べられている。
席に着き机の上にある配布物に目を通そうとしたとき後ろの席の男子が声をかけてきた。
「あ、君さどこ行ってたの? 担任の先生君のこと探しに行っちゃたよ」
どうやら自由時間ではなく僕待ちの時間だったようだ。
「そうなんだ、ごめんね。考え事してて気づいたら皆いなくなっちゃってて」
片手でゴメンのポーズを作り苦笑いしながら謝った。
「ふーんそうなんだ。まあそのおかげでこうしておしゃべりタイムが手に入ったから俺はラッキーだったけどね」
そう言って笑った顔にはまだ中学生だった頃の幼さが残っていた。
「そういえばまだ君の名前聞いてないよね? 俺は与望久志君の名前は?」
「僕は悠増川よろしくね与望」
お互いの名前を知ったところで担任の先生が戻ってきて話は中断され席を立っていた生徒たちも自分の席に戻った。
翌日登校すると教室内がやけに騒がしい。
席に着くと与望が話しかけてきた。
「川机の中見てみろよ。面白いものが入ってるはずだぜ」
机の中を覗いて見ると封筒が一通入っていた。
「まさか与望の仕業じゃないだろうな?」
与望は溜め息をしてから言った。
「あいにく昨日知り合ったばかりの男にラブレターなんて出さないよ」
まあ確かにそうか。ラブレターかどうかはさておいてにしても……それに教室内が騒がしいのはどうやらこの封筒のせいみたいだし。
封筒自体は別段珍しいものではなくコンビニでも買えるようなものを使っているようだ。しかし市販のものと一点違う箇所がある。見たことのないロゴ? が押されていた。
そこでようやく封筒を開けてみることにした。後ろで与望がニヤニヤとしていたが無視した。
封筒を開けると一枚の紙が入っていてそこにはこう書かれていた。
Q1.交通事故が多い交差点ではまだ死人を出したことはなかった。しかしけが人は非常に多い。この町でそんなけが人が多い所とはどこでしょう。
今日の放課後答えを持って学校で待て。
???より
「???って誰だよ」
読み終えたタイミングで与望が言った。
「どうやらその挑戦状が一年生の全員に配られているようなんだけど、上級生のいたずらじゃないかなって思うんだよ君はどう思う。川」
「誰が何のためにしているかわからないけど僕はあんまりこういうのには関わりたくないかな。与望は随分とご執心のようだけど答えはもうわかったのかい」
「当然だとも。この名探偵にかかればこんな問題簡単だよ。だからさっそく放課後その場所に行ってみるつもりだよ」
あまりにも自信満々に言うので答えを聞いてみた。
「わからないのかい? 頭が固いなー川は。この町で交通事故の多い交差点と言ったら二か所しかないんだよ。その二か所っていうのは天川交差点と災死交差点のことさ。さらに問題文には死人が出てないと書いてある。どちらの交差点では死人が出ているのかはわからないが死が入っていない交差点を考えると天川交差点という答えが導き出されるのさ」
キメ顔でこちらに向かないでほしい。
今与望が述べた推理には一つ大きな無理があるように思う。天川交差点は学校から五十分ほど離れたところにあるのだ。わざわざこんな手紙を仕込んだ人物がそんな来るか来ないかもわからないような場所で待っているとは到底思えないのだが……。
与望がその答えに満足しているようならばそれでいいのかもしれない。
「どうだ川驚いたか? 俺昔からこういうの憧れてたんだ。早速帰りに行ってくるよ。明日の報告楽しみにしててくれ」
「あぁ。それは良いけどそれは放課後の話だろ? そろそろこの手紙捨てに行ってもいいかな?」
放課後、といってもまだ通常の授業は始まっていない。そのため学校は13時には解散となり与望はというと解散のあいさつとともに教室を飛び出していった。それに続いて何人かの男子生徒たちも教室から去っていった。
僕はといえば家に帰っても別段することはないので帰りにどこかへ寄って行こうか、学校を見て回るかで迷っていた。
なかなか一人で決断できないのは昔からだった。こんなことなら与望についていけばよかったかなと思っていると女子生徒が近づいてきた。
「ああ、ああ君このクラスだったんだね。私のこと覚えてる?」
誰だこの人。
「さては忘れちゃったのかな。入学式の時一人体育館にいおいて行かれてた時に……」
そこまで言われてようやく思い出した。昨日声をかけてくれた人だ。
「その顔は今ようやく思い出したんだね? 全く普通昨日の今日で忘れるかな。私だって覚えてたんだからね」
頬を膨らまして両腕を胸の前で組んで怒ったような態度をとりまたすぐに笑顔に戻る。
表情をころころと変えて面白い子だ。この子の顔は粘土でできてるんではないだろうか。
百済狛と名乗った彼女は二つ上の学年だという。
どうして一年生の教室なんかにいるのか聞いてみると。
「うーん。秘密かな?」
なぜ疑問形なんだ。僕に聞かれても困るのだが。
「今から行くところがあってね、そこに行く途中に見覚えのある顔が見えたから寄り道しただけだよ」
そういって彼女は教室の時計を見て大きな声を上げた。
「あーーーもうこんな時間じゃん。ごめんねまた会おう」
教室を小走りで出て行った……がまた戻ってきた。
「そうだ、君の名前教えてよ。なんかまた会うような気がするからさ」
名前を教えるとを先ほどよりも少し速度を上げて出て行った。
結局その日はまっすぐ帰宅して家でテレビゲームをして一日を終えた。
翌日、学校に行くと下駄箱に封筒が入っていた。
昨日机の中に入っていたものと同じロゴが押された封筒だ。
「おはようー」
封筒の中身を見ようとしたところで後ろから与望に肩をたたかれたのでとっさに封筒はポケットに突っ込んだ。
「おはよう。昨日はどうだった?」
そう聞くと急激にテンションを下げる与望。
「昨日な行ったんだけど誰も現れなかったんだよ……」
21時まで待ったのだという。それなのに封筒を入れたであろう人物は現れなかったのだという。他にもいた問題を解いた人たちは一時間もしないくらいであきらめて帰ってしまったが与望は自分の正解を信じて疑わなかったそうだ。その結果ただの待ちぼうけになってしまう辺りはバカ何だろうか。
そういえば先ほどの封筒のこと与望に話すべきだろうか。しかし今の彼に話したところで勝手に暴走するのは目に見えているしやはりここは昼休憩の時に一人で見よう。問題は場所だ。教室で見てれば与望に気づかれるだろうし、他の場所といっても昨日今日で学校のことは把握できてないし……と悩んでいるとクラスの男の子が廊下で君の事呼んでる人がいると呼びに来てくれた。
誰が呼んでるのか心当たりのないまま廊下に出た。
「お~は~よう」そんな風に百済狛は話を切り出す。
「朝の手紙は読んでくれた?」
一瞬何のことを言われているのかわからなかった。
「まだだよ。昼放課にでも読もうと思ってたところだよ」
そう言うと少し残念そうな顔をして窓の外の景色を見る百済。
「まだ中を見てないんだね。薄々感づいていると思うけど昨日一年生全員に配られた手紙は私たちがやったんだよ」
「君は答えわかってたんだよね?」
確かに彼女の言う通り僕は答えを知っている。しかし、昨日は結局のところ寄り道せずに帰宅することを選んだ。
「わかっていたかどうかなんて貴方に教える必要はないでしょ」
そんなことはないと彼女は言う。
「私は、いいや私たちは探してるんだよそのためには知る必要があるんだよ」
その言い方はまるで子供が悪いことをしたときに言い聞かせるようなそんな響きがあった。
彼女は続けて言う。
「昨日何人かの生徒は自力で正解してその場所に来たんだけど次のステージに合格できた人は一人もいなかった。君ならできるんじゃないかな」
「期限は今日の放課後までだよ。待ってるからね」
そう言って彼女は外に向けていた視線をこちらに向ける。
その時の彼女の表情は今まで見た中で一番作り物じみて見えた。
じゃあねーと言って去って行くときには粘土をこねくり回して作ったみたいな笑顔に戻っていた。
彼女が去って行くのをぼーっと見ていた。始業時間までまだ時間があることを確認してそのまま廊下で件の手紙を開いた。
手紙にはこう書かれていた。
Q, 出張で一週間ほど日本のホテルに滞在することになった女性がいた。
五日目に誰かが部屋をノックした。ルームサービスの人だと思った女性は誰かは確認せずに扉を開けた。するとそこには知らない外国人の男が立っていた。不審に思ったが女性はどうしましたか? とその男に聞くと男は片言の日本語で「すみません。自分の部屋と間違えてしまいました」そう言ってエレベーターのほうに去って行った。
女性は慌てて部屋に戻るとすぐに警察に電話した。それはなぜか?
放課後図書室にて答えを聞かせてほしい。
百済狛から悠増川へ
文面の中の彼女は会って話すときよりも冷たく感じた。
僕は時間を再度確認した。
「始業までは……五分ある」
一瞬だけこんな面倒そうなことには関わるなと聞こえた気がした。
しかし、それ以上に僕は彼女の冷たさの理由が知りたくなった。
始業のチャイムが鳴り教室に戻る。
答えは導かれた。
少しだけ笑みがこぼれた。
いや、少しではなかったかもしれない。後ろの席の与望に「そんなにニヤニヤして気持ち悪い」と言われるくらいには笑んでいた。
今日最後の授業は終わり言われた通り図書室へと向かう。
行く途中で本当に自分のその答えが正しいのか考えていた。目的地に着いた時じぶんの導き出した答えが正しいものだと思えた。
図書室には誰も来ておらず静寂を保っていた。
とりあえず空いている席に座って彼女を待つことにした。
20分くらいたったころ一人の女子生徒が来たがその人が百済狛出ないことを確認すると視線を外した。
しかし、図書室に来た女性は僕に用事があるようで僕が座っている席まで来ると「あなたが悠増さんですか?」と聞かれてとっさにそうですと言ってしまった。
「狛ちゃんから紹介されたんだけど話は聞いてるかな?」
全くそんな話は聞いていなかったので正直に僕がここにいる理由を話した。
すると彼女は「やっかいごとに巻き込んでゴメンね」と一言謝った。
そうして今回の件について彼女の口から真実が話された。
話をまとめると、彼女、坂口京子は二週間前からストーカーの被害にあっているのだという。そのことを百済狛に相談したのが三日前だったそうだ。そして百済狛はそれを解決できそうなものを謎の手紙によって探していた。なぜかその適任者に選ばれたのが僕だったというわけだ。
彼女は話し終えると周囲に他に誰もいないのを確認した後、僕の目を見て「お願いします。私怖くて、なんで私なのかなって。どうか助けてください」坂口京子の顔を改めてみると目の下にクマができていて顔も若干げんなりとしている。
ここに来た時点では想定していなかった事態になってきたがしかし、乗り掛かった舟とはこういうことを言うのだろう。
僕は迷わずこの船を降りた。
そして何も言わず図書室を後にした。
Q1,保健室 理由はけがをした人はどこに運ばれるのか、どこに行くのかを考えるとよくわかると思う。がおそらくは病院に行くだろう。今回の場合は学校という場所で病院に該当するところが答えだ。よって答えは保健室となる。
Q2,ノックをした男は空き巣犯だったから。 理由は外国では実際の空き巣犯がこのような方法で空き巣をしているのだとか。男が本当に自分の部屋と間違えたならノックなどしない。