Loop.
───そして、俺は目を覚ました。
真後ろで、夕方を告げる鐘が鳴っている。
登るどころか侵入すら禁止されている時計塔の上に、俺は腰掛けていた。
どうやら眠ってしまっていたらしい。
身体を伸ばし、欠伸をする。
くしゃみも出た。
長い時間高いところにいたせいだろう。
体が冷えるのも当たり前だ。
遠くの山と雲との間に、太陽が沈んでいる。
山と雲、両方が紅く燃えるその様を、俺は立ち上がり、眺めた。
この時間帯の空が、雲を紅く、大地を、街を黄金に変えてしまう数分の世界が、俺は好きだ。
嗚呼神よ。願わくばこの世界を永遠に続けて欲しい。
心の中で祈ってみる。
しかし夕陽は山の奥へと隠れ、世界は徐々に漆黒に呑まれている。
俺の好きな世界は終わった。
残念だが、それが普通だ。
今日はもう帰るか。
そう思った瞬間、強風が吹いた。
まるで平均台のような縁に立っていた俺には、突風に抗うチャンスも術もなかった。
バランスを崩し、俺は落ちた。
六時を表す巨大な時計の針が視界に入る。
耳元で風を切る音が聞こえる。
どんどん地面が近付く。
目を瞑る。
落ちる。
落ちる。
落ちる───
───そして、俺は目を覚ました。
真後ろで、夕方を告げる鐘が鳴っている。




